第69話 vsメタルスライム
北の大地にある要塞都市にて、遊郭を支配していた十戒を追って侵入した地下ダンジョン内は天井が高く新鮮な空気が流れていた。
草原地帯の中に大きな湖が広がっており、流れてくる風が水面を微かに揺らし、天井から落ちてくる光がキラキラと反射している。
遊郭で現れた十戒は、背が高くてひょろりとした気持ち悪い印象の男であったが、地下ダンジョンで現れた十戒は少年の姿に変わっていた。
ここのダンジョンマスターであり、少年の姿をした十戒は、飛燕のスキル『ミラー』を獲得するために、スキル『捕食』にて飛燕を丸呑みするために信じられないくらい口を大きく開けてきたが、その寸前で運命の弓で脳天を撃ち抜き、確実に死にいたらしめたはずだった。
仕留めた手応えはあり油断していたのだろう。
気が付いた時には、また別の少年の姿になって復活していた十戒に、飛燕を捕食されてしまっていた。
発動した『真眼』が、十戒は『転生』の効果にやり復活を果たしたものと教えてくれた。
転生とは、その名の通り生まれかわることであり、十戒の場合は、死んでしまったら子供の姿へ転生するようで、元々は人間だったのではないかと推測される。
『ダンジョンウォーク』にて逃走を図った十戒へ、スキル『転移』と『ロックオン』を発動させ、『BREAK_SHOOT』を撃ち込んだ。
『SKILL_VIRUS』の効果により、スキル『転生』の崩壊が始まった手応えが伝わってくる。
スキルは7日後に完全消滅するのだが、現時点をもって、これから発動させる『転生』の効果は不完全なものになったのだ。
後日、私を下僕にするために姿を現した時が、十戒の最後の時である。
十戒はまた勝手に姿を現してくるだろうし、先に59話で自身で発動した影の沼に落ちていき、ダンジョン内にいる四十九と月姫を探すことにしましょう。
私の加護を与えている四十九の位置は、何となくであるが感じている。
とりあえず、その方向へ向かう事にしましょう。
遊郭から突き落とした勇者と強斥候は、腑抜けた状態になっていた。
目的の一つである『強欲の壺』を上手く狩ることが出来なかったため、ダンジョン攻略の動機を失っていたからである。
そんな時である。
エンカウント率が低い『強欲の壺』よりも、更にエンカウント率の低い『メタルスライム』と遭遇した。
メタルスライムを倒した者は、S級スキルを100%獲得出来るという噂がある。
勇者と強斥候が、嬉しい悲鳴を上げながら腰の獲物を抜き、メタルスライムへ突撃を開始した。
「マジか。ここでメタルスライムをエンカウントするとは、さすが勇者だせ。神様。俺に人生最強の運を与えてくれて、感謝するぜ!」
「三華月様。強欲の壺のようにオーバーキルだけは絶対にしたいで下さいよ!」
強斥候は、64話で『強欲の壺』を消滅させた物干し竿を『メタルスライム』には使用するなと言っているのだろう。
私が参戦する話しになっているのが前提なのが気になるところだが。
私もメタルスライムについては初遭遇となるし、とりあえずといった感じで、世界の記憶『アーカイブ』にて、その情報を調べてみてみた。
――メタルスライム――
・クラス SSS
・HP5
・攻撃0
・防御∞
・速度∞
・回避∞
・ドロップ ???
・討伐回数 0
このツッコミどころ満載のステータスは何でしょう。
クラスSSSって聞いた事が無いし、S級の上はドラゴン級なはずだぞ。
回避無限って無理ゲーじゃん。
仮に攻撃が当たっても防御も無限だし。
そのメタルスライムは『瞬間移動』をしているように勇者と強斥候の攻撃を回避している。
このステータスを見てしまったら、そのメタルスライムに攻撃している者が馬鹿に見えてくるのだろうが、実際に勇者と強斥候は馬鹿だかなら。
それにしても、無駄なことを一生懸命にする姿は見ていて面白い。
ずぅっと、見ていられるものだな。
その勇者達がメタルスライムへの攻撃をしながら私へ参戦するように促してきた。
「フッ。俺様くらいの実力者になると、初撃をいれた瞬間に、相手の力量がどれくらいなものなのか、分かってしまうんだ!」
「つまりっす。僕等にはメタルスライムを倒す事は不可能なんすよ。」
「三華月。俺達の言葉が聞こえているんだろ。早く参戦してくれよ。」
「もう一度だけ注意をするっすけど、強欲の壺の時のように、オーバーキルしないで下さいよ。」
勇者と強斥候の攻撃が全くHITする気配がないにもかかわらず、何故か2人はドヤ顔なのが気になる。
それに、上から目線で命令してきているし。
地上世界に悪影響を与える度合いが高い魔物を討伐した場合、信仰心が上がりやすくなるため、クラスの高いS級相当の魔物を討伐すると相当の報酬を見込めるのだが、このSSS級のメタルスライムは攻撃力が無い。
それは、SSS級にも関わらず、悪影響が全くないということではなかろうか。
だが、実際には討伐してみないと分からない。
OKです。
メタルスライムを狩らせてもらいます。
防御が『無限』となっているため、火力もそれなりに上げてみましょう。
運命の弓をスナイパーモードで召喚します。
月の加護が届かないダンジョン内においても、全長3m以上ある白銀の弓を最大まで引き絞れば、その速度は音速10の速度を超えていく。
そして回避が『無限』となっている対策として、『マルチロックオン』を発動する。
勇者と強斥候の攻撃を危なげなく回避し続けているメタルスライムの体に、『ロックオン』されたことを示す魔法陣が刻まれた。
案外と簡単に討伐出来るかもしれないな。
一瞬、メタルスライムと視線が合った気がした。
『ロックオン』をされている事を認識しているにもかかわらず、動揺した様子が見受けられない。
距離15m、発射速度マッハ10、着弾時間0.004秒。
これを回避できるのかしら。
背筋を伸ばし、前後に開いた両足にバランスよく体重を乗せながら、ギリギリと弓を引き絞っていく。
同時に、限界の更に上の出力を出すために信仰心で全身を最大まで強化していた。
狙い撃たせてもらいます。
――――――――――SHOOT
矢が正確にメタルスライムを撃ち抜いたように見えたが、手応えがない。
信じられないことに、着弾時間である0.004秒で走る運命の矢が、回避されてしまった。
『ザワザワザワザワ』と寒気のような感覚がはしり、相当ヤバイ魔物であると肌で感じる。
メタルスライムからは余裕が感じられ、逃走するような意志が伝わってこない。
次は全力で行きます。
再度『マルチロックオン』と、スキル『転移』を発動する。
メタルスライムに刻まれた『ロックオン』した魔法陣と、『転移』の魔法陣が重なり、運命の矢の先端に同様の魔法陣が浮かんできた。
この一撃を回避されてしまったら、月の加護が届かないダンジョン内でメタルスライムを討伐することは不可能だ。
それでは、着弾時間0秒で狙い撃ちます。
――――――――――SHOOT
結論からいうと着弾時間0秒で発射した矢を回避されてしまった。
つまり、このメタルスライムのボディは、地上世界には存在しないと言われている『絶対回避』の効果が付与された『アダマンタイト』で出来ているということのようだ。
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