第4話

 お芝居を観終わった後に、いつも行くのは食事がてらにカラオケ。

「あのヒト、どこかで見たことあるなぁって思ったら、そうだったんだね…」

「うん。最近、売れちゃったからこういう舞台には出ないと思ったのに…、って、聞いてる?」

「うん…」

 私の食事は、アルコールですけど、ね。

「今、目の前にあるアルコールにしか興味ない顔ですねぇ?」

「そうとも言う…」

 いやぁ、おいしい…。

 頷きながら、横目で萩乃はぎのを見た。

「そうとしか言わないよっ」

 萩乃も笑ってて、いつも通りのやりとりに何故かほっとした…。

「さてと、歌おうか…」

 歌うのは何かがあって、それに対して何とも言えない気持ちになって、心が荒んでしまった時に歌うことが多い。今日はそういう日だと言うことで…。

 いつもながら、本当にくだらないことで白熱している。最中。

「限界突破っ!!!!」

 ストレス解消にとキー高めに歌い、もう声がカスカスしてきた頃に、

春木はるき、やめよう…」

 萩乃が止めに入ったので、止めようかと思ったけど、今日は喉なんか潰してしまえ。くらいの自棄な気持ちが上回った…。

「……やだ」

 ん?

 気持ち良く歌ってた私に、抱きついて来た。

「春木の声、好きだから…」

 やめて。と私の背中に囁いた。

「うん。この一曲だけ…」

 歌わせてね?と言って、最後まで歌い切った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る