第414話 挟撃への反攻
『打ち消されないスキルをバラまいて数を減らす!』
目前に迫った魔物たち。人型のゴブリンやオークはイツメンだが、それに交じって獣型、蟲型の魔物が見える。反応から
いちいち相手にしていたら、MPはともかく体力が続かない。
「
山なりに封魔弾を投擲。どこに落ちても大体何かに当たる。
「刹那に轟く白き光炎。石火に轟く黒き熱風。祖は始まりたる焔なり。礎は満ち満ちたる大気なり。原初に在りし偉大なるモノよ。焦熱を司りし
駆けあがって来る魔物たちの中心が閃光に染まる。
轟く音はあまりの大きさに認識することが出来ない。打ち付ける風圧に身体が浮く。
『……伝説級魔術か?』
『……ただの上級魔術ですよ』
ブースト込みINT2千越えの全力魔術はシャレに成らない。今の一撃で昇って来るための道と一緒に先頭の一団が綺麗に吹き飛んでいた。殿下たちが耳を抑えてうずくまっているのが見える。
『もう何発か打てば雑魚は片付くな』
『詠唱が長いので、
『ならば仕掛けよう。待つのは好みでないからな』
『守るより攻める方が易い、でしたっけ?』
『貴殿らはどうする?』
『好きに暴れますよ。そういう契約ですしね』
何とかしてボガードを討伐したいが……決め手に欠けるな。
複数人で戦おうとすると、ボガードはやりづらい。的が小さく、威力の高いスキルは味方を巻き込みやすい。必然的に範囲の狭いスキルで戦うことになるが……。
『コゴロウ、ボガードに勝てると思う?』
『……一人では難しいであるな。某の
『音速斬りからの血華斬?』
『すべての斬撃に音速斬りを乗せているのであるが、それでも一発も当たっては居らぬ。縮地と同時に発生する斬撃も防御されたのである。むろん、防御しているからには当たればダメージに成るのであろうし、避けられるわけでは無いのだろうが……』
生半可な攻撃では通らないか。
うちのメンバーの中では、コゴロウが最も技量が高い。そのコゴロウが防御を抜けないとなると、防御を貫ける上級スキルが必要だが、そっちは発動までのラグで対処されるな。
4次職のゴールドスタイン卿も発動に発声を擁しているように、無詠唱で上級スキルを使う術は今のところ持ち合わせていない。
高威力のスキルは範囲が広く、連携しようとしても近接職を巻き込む。しかし遠距離からでは防がれるか避けられる……人型人サイズ故の厄介さだな。
『先に行くぞ』
こっちが考えをまとめている間に、卿は斧を構えて魔物の群れに突撃していく。
とりあえず、目先の群れと
『温存しつつ大乱戦。OK?』
俺の問いかけに3人がうなづく。
たった4人ぷらす1名で、何匹いるか分からない魔物の群れに立ち向かうのに怯まぬ頼れる仲間たちだ。
『背中は任せてください』
『んじゃ、あたしは隣を任せてもらおうかな。タリア姉さんも居ないし』
『むっ……』
微妙に含みを持たせたやり取りはやめてくれんかね?
『では某が先陣を。すべて倒してしまっても構わぬのであろう?』
『構わないですけどそう言う話では無いんじゃないですかね』
ため息と同時に、前方て魔物の集団が吹き飛ぶのが見えた。ゴールドスタイン卿が接敵したらしい。
だけど自由に動かれたら殿下たちを包囲されてしまう可能性が高い。一団を引き付けるためには、
『行くよ!』
後ろは任せて地面をける。それより早くコゴロウが飛びしている。
短い自由落下の後、着地。迫りくる前衛の後ろに、弓を引きしぼる一団が見えた。盾では足が止まるな。
「
降り注ぐ矢が、風に打ち据えられてあらぬ方向へと散っていく。
巻き起こった烈風に乗って、コゴロウが先陣を斬る。
突撃してくるオークを振るわれる棍棒ごと切り捨て、とびかかって来るなんちゃら
「「
アーニャと声が被る。二人で放った
どの地域でも魔物が軍勢を組むと、その編成は変わらないな。アインスの時よりは強い魔物が多いが、ウォールやクーロンの戦いと雑魚の強さは大差無い。
「剛剣一閃・横一文字!」
コゴロウの放った斬撃が、まとめて十数体の魔物を斬り飛ばした。
タイミングが上手い。
……レベル以外の面も含めて、俺達は順調に強くなっている。雑兵なら問題は無い。
魔物たちは俺達を取り囲むように展開していく。
同時に
『こっちに来るのはゴブリン、オーク、コボルトに……オーガ?みたいだぜ。それぞれ数体、強そうな部下を引き連れてる』
『遠距離攻撃は利かなそうであるな。むっ!?』
『砲撃来ます!』
即座に集結するとバーバラさんと二人で2枚づつ、4重に展開した
魔力視を得てから、攻撃魔術に対する対応精度が格段に上がったな。乱戦状態であっても魔力の流れで攻撃が見えるし、防ぐべきか、打ち消すべきかの判断もつく。
「
バーバラさんの対魔魔術で、発動間際の上級魔術が打ち消された。
対抗呪文を使えるのが彼女だけ--魔拳士が50に達した後、サポートのために20レベルまで対魔の魔導師を取った--なのが不安要素ではあるが、如月があるおかげで対処できる。
殿下のスキルのおかげで、戦場が手に取るようにわかるのも大きい。これなら遠距離からの高火力魔術・スキルにも十分対応できる。
そして敵も対処されることを理解しているのだろう。
『強いのが来る!』
『一人一匹であるか?』
『持久戦をしてる余裕は無いです!連携して一気に押し切りますよ』
俺達の背後には殿下たちが居る。
タブーツ氏を筆頭に2次職の護衛がついて居るが、人数が少ない。飽和攻撃に長時間耐えるのは難しいし、体力的な問題も出る。しかしスキルの範囲を維持するため、大きく逃げるわけにも行かない。
ゴールドスタイン卿が一人で突っ込んだ理由の半分は、殿下たちから少しでも魔物を引き離す為だ。
『あたしが引き寄せる!
アーニャのスキルを受けて、地面がこちらに向けて波打つ。
本来は行く手を阻んだり、意図しない方向に足を取らせる罠スキル。それをこちらに向けて放つことで、多くの魔物たちは成すすべなく引き寄せられる。
その先に居るのはコゴロウだった。
「おあつらえ向きである!某が秘剣、見よ!疾風・桜花風刃乱舞!」
群がる魔物を、一刀のもとに斬り捨てる。それと同時に巻き起こった不可視の刃が、その背後にいた魔物たちを斬り刻む。
本来は前衛によって阻まれるはずの飛翔斬が、敵の背後に発生してその奥を切り刻んだ。
一呼吸の内に最大16発、疾風斬り、桜華斬、飛翔斬。3つの初級スキルを組み合わせた
「グォォォォッ!!!」
敵の将と思しき魔物が雄たけびを上げる。
『ちっ、やっぱデカいのは避けるか』
『でも今ので取り巻きの
魔力量から敵の将はデルバイ・ダンジョンの陸竜より強い推定5万Gクラス。
『某、MPが心もとないので少し下がるのである』
『ちょっ、でかいの来ますよ!』
『ポーション飲むまで10秒待たれよ』
『オーガです!』
バーバラさんの叫びと同時、コゴロウが縮地で姿を消したその場所に、身の丈3メートル近い鬼が飛び込んできたのだった。
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□守るより攻めるが易い
魔物との戦いにおいては個の能力が一定より高くなると、どんな状況でも攻めたほうがトータルでは有利に働く事が多く、そこから生まれた力のある者は防衛よりも攻撃の方が得意という事を現した慣用句。
□疾風・桜花風刃乱舞
疾風斬り、桜華斬、飛翔斬。3つの初級スキルを組み合わせた
発動が視認できない味方前衛の影から、疾風斬りの速度で飛翔斬が飛来する後衛初見殺しの範囲連続攻撃。
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アーニャの冒険~鍛冶の国の盗賊娘~
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