第392話 不正行為
コゴロウのステータスに生えた
ジェネ―ルさん、バノッサさんには無く、また
効果は俺の異能と同じく、1日の成長上限の突破と減衰を無くすことだろうか。こればかりは俺では判断が付かない。
「判断が付かないなら、神様に訊いてみればいいってわけで聞きに来たのですが」
『気安い』
『異界の加護は、貴方の異能の影響下にある者に与えられた臨時的表示。推測は概ね正しい。貴方と一緒にいた時間が長いほど影響を受ける』
「効果も推測通りですか?」
『一日の成長上限の突破と減衰を無くす効果もある。正しく努力をした場合にのみ効果を発揮することも同じ』
「……なんで感染したんですか?」
『これは感染とは違う。貴方たちの使う異能とは、世界の改変。自らを中心に世界を回す能力。貴方の体内にしか影響を与えていなかった世界の改変が、成長につれ外に溢れ出した。今は貴方を中心に小さな範囲に収まっている。どこまで広がるかは未知数』
「なら、俺から離れれば影響は消える?」
『おそらくは』
タリアが南大陸に向かえばしばらく離れることになる。その間にどれだけ影響を受けるか調べてもらうか。
『最も影響を受けたのは貴方の有している太刀や鎧の付喪神たち。それに、同志たちの魔力操作・制御の熟練も異能の影響を受けていると考えられる』
付喪神。たしか、睦月と如月はなぜ付喪神化したか分からないってムネヨシさんが言っていたな。
魔力操作は……確かに、アーニャの
「……俺たちの成長は、全部異能のおかげって事ですか?」
『そんな事は無い。……いいえ、正しく言うなら、貴方はそれを良しとしない』
「俺が?」
『異能を行使しているのは貴方。鍵となっているのは研鑽。貴方が十分な研鑽を積んでいると感じる相手でなければ効果は無く、その効果は貴方が背中を押し続けるのと変わらない』
「……?」
『一人で研鑽を積んでいても、貴方が付きっ切り二人三脚でずっと訓練した程度の能力向上が見込めると思えばいい』
「俺がずっと一緒に?」
……集合知を持っている俺が?
「……だいぶチートでは?」
『貴方の異能は、すなわち異界。この世界に置いてはまさしく
「なんでお宅の創造神様はこんな能力をくれたんですかね?」
『我らが神の与えた物にはあらず』
「……は?」
『貴方が創造神と考える存在と我々の間には明確な隔絶があり、我らは創造神の居る領域にはたどり着けていない。しかし情報の伝達は行われている。創造神からの回答は否。はじめに回答した通りそれは“貴方が持ち込んだ”もの。だから全様は分からず、我々にできるのはシステムを併せる事くらい』
……マジで詳細不明だったのか。
報連相の不足化、たんに思わせぶりな“隠し事”かと思っていたけど……俺が持ち込んだ?
……地球にはもともと“異能”が存在していて、俺がそれを有していた?
………………。
…………。
……まさかね。
ちょっと故郷の
『他に何か問いかけは?』
「……ちょっと混乱して居そうなので、今日はこれ位で」
『それでは、検討を祈る』
あちら側との回線が切れるのを感じる。
とりあえず悪い物でもないって事で、今は良しとしておこう。
「ワタル、終わったの?」
一緒に来ていたタリアから声がかかる。
なんだかわかった?という問いかけには、「謎は深まった」と答えておいた。よくわからないモノをよくわからないまま説明する気にはなれない。
わかったこともあるからそれで良しとして、目先の仕事を片付けよう。
………………。
…………。
……。
「せいっ!」
わちゃわちゃと湧いた
ここはデルバイダンジョンの5階層ボス部屋。このダンジョンで最も能力の高い陸竜が居を構える石室である。
3次職も10レベルを超えると、6階層の魔物たちではレベルの上りが悪くなってきた。なので推定で
『手数が足りてなさそうだが大丈夫か?』
『問題ありません』
こちらを見守ってくれているバノッサさんに念話を返す。
陸竜は高速移動で駆け回っているが、スキルを使って攻撃範囲を広げれば捕らえられないほどではない。
『ブレスが来るぞ。火炎だ!なんか平気っぽい!』
『弥生!熱波が来る』
『は~い、任せて!』
『お姉ちゃん、私たちも』
『せや、うちらに任せとき!』
プリニウス戦以降、急速に自我を成長させた付喪神たちが反応し、勝手に体が動く。
陸竜が口を大きく広げ、喉の奥に光が灯る。次の瞬間、吐き出されたガスを炎へ変え、強烈なブレスがこちらを襲った。
「っ!」
思わずスキルで避けそうになるのを、理性でねじ伏せてその場にとどまると、高速の炎で視界が光に覆われる。
……しかしその炎は俺を焼かない。
交差して掲げた睦月、如月がそれぞれ熱と魔力を切り裂いて威力を弱め、弥生が張った防壁が熱風も障壁もすべてを受け止める。
陸竜が十数秒に及ぶ渾身のブレスが吐き終えても、俺は焦げ目の一つも付かずその場に立っていた。
……こわっ!HPは減って無いけどこわっ!
『耐性上げずにあのブレスを無傷か。さすがに化物と呼ばれるな』
バノッサさんが感心したのか呆れたのか分からないコメントをくれる。
『上げてますよ。うちの子たちがですけどね』
『はい!』
『せやで!』
『お姉ちゃん、弥生ちゃん、応えても聞こえてないよ』
まだ能力が足らないのか、うちの付喪神たちは俺以外と念話が出来ない。俺への念話は聞こえるらしい。
……なぜか人格が女性よりに育ったようなので、このまま会話できないほうが平和かもしれない。
ブレスの直撃を受けても平然としている俺を見て、陸竜が唖然としたように動きを止める。
魔物には俺が何もせず受けきったように見えたのだろう。付喪神たちが行使する技は魔術刻印と同質だ。魔力視より高い魔素知覚能力が無ければ観測が難しい。
『このまま仕留める!』
それを悠長に待っているほど相手もノロマではなく、影の向こうへ顔を出した時には高速移動を発動させて動き出していた。
最も近い後ろ足を狙って刃を振るってもそのままでは届かない。
『あまいで!』
睦月が
付喪神たちは自分に掛けられたスキルや魔術を糧として、それを再構成し再現する。
「グォォォォッ!」
裂けたと思った攻撃を受けて、陸竜は叫びをあげた。
バランスを崩しながらも尻尾による薙ぎ払い。強力な一撃ではあるが予想の範疇。ダメージを受けた分遅い。飛び上がると同時に如月を突き立て、陸竜の背中を蹴る。
「
凍れる砲弾が前足の一部を吹き飛ばし、陸竜の身体は凍り付いて大地に釘付けになる。
既に二足にダメージを受けた陸竜は満身創痍。無防備に背中をさらしている。
『炎や!』
『氷だよ!』
睦月と如月が叫ぶ。
「音ッ!速ッ!
その瞬間、肥大化した魔力の刃は炎と氷をまとい、亜音速に達した斬撃は陸竜の頸椎を
陸竜が完全に動きを止め、その身を崩壊させていく。
……ふぅ。
初めてここに来た時はほぼ総力戦だった陸竜相手に、一人でかかった時間はわずか3分足らずか。
強くなったなぁ……。特に睦月、如月、弥生の三柱の成長は大きい。クーロンの戦いでこれだけの能力が発揮出来ていたら、ウォルガルフに苦戦することも、ノーフェイスを逃すことも無く、もっと楽にプリニウス戦えただろう。
……あの戦いが付喪神姉妹たちの成長を促したのだから、順当と言えば順当なのだけど。
この成長に異能が関与してると思うと、今日の俺はちょっと微妙な気分になる。
『お疲れさん。ドロップは回収しないのか?』
『ダンジョンに次を生んでもらわないといけないので』
ステータスでレベルが上がっている事を確認。ドロップはそのまま放置。魔物が消えて落ちた武器は、しばらく放置すればダンジョンに再吸収される。
ダンジョンから物を奪うと力が弱まってしまうから、程々にしておかないと。
『次の陸竜が沸くまで2時間ほどあるはずです。一度下に戻りましょう。睦月、如月、弥生、お疲れさま。よく頑張ったね』
太刀を鞘に納め、声をかけると嬉しそうな声が返って来る。
『今回のはちょっと歯ごたえあったけど、まだまだこんなもんじゃないで!』
『お姉ちゃんはすぐ調子に乗るんだから。私はいつもより面白かったよ』
『お役に立てて良かったです!』
『それじゃ、少し休憩にしよう』
バノッサさんと共にタリア達の居る6階層に戻る。次はバノッサさんが経験値稼ぎをする番。
ザースを目指す前に
暫くは6階層で経験値稼ぎ、陸竜を始末してレベルアップの繰り返しだ。
……これは努力に入るのかな。
ふとよぎる
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お久しぶりです。出張だのなんだので少し時間が開いてしまいました。
とりあえずの山は越えたので、更新ペースを戻せるように頑張ります。
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アーニャの冒険~鍛冶の国の盗賊娘~
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