第374話 価値と能力
「……ちょいと困ったことに成っておる」
数分後に
「先ほど知識に当てたリソースは、予想通り解放できた。これは何度かスキルを入れ替えたりしておったので予測通りじゃ。しかし、解放してもリソースが想定ほど戻らんかった。原因は分かっておる。儂自身の記憶と人格の再誕コストが上がっておった」
「……ってことは、解放した『剣士スキル知識』なんかの情報はそのまま記憶に残っていると」
「うむ。少なくともキサマと話した分はしっかりとな。十数分前のことじゃし、そう忘れもせん」
「それがそのままコストに乗っていると」
「すべてではない。しかし、おそらくそれは知識のすべてを覚えたわけでは無いからだと推測する。あのやり取りで全部の知識を引き出せた保証は無いからの。もともと復活の度にわずかながらコストは増えていた。しかし今回はその影響が目に見えて大きい。ステータスの数十、スキルの一つや二つは余裕で食いつぶすほどじゃ」
先ほど
しかし渡した1000Gをそれで使い切ったとも思えないから、そこに当てたコストはまぁ5割って所だろうと推測する。
ステータス単位数十、これは数百Gクラスの魔物のステータスに相当。スキルは100G程度でも取れるが……。
……魔物の能力は核の価値が高いほど上昇する。
しかし同じ幅なら上昇幅は魔物の能力が高いほど小さくなる。
100Gの魔物が追加で100Gの価値を取り込んだ時の強化される幅と、1万Gの魔物が100Gの価値を取り込んだ場合の強化幅は違うというのが定説。後者ならおそらく初級スキルの1つを増やすのも難しいだろう。
魔物を倒しづらくなるほど、核の回収の可能性が減り価値が下がる……期待値に近い法則が働いているわけだ。
……じゃあ、
これは腑に落ちない。
「ダンジョン魔物知識はともかく、剣士や魔術師のスキルの理解を深めた所で、ステータスほど能力が変わるとは思えない。原因は別の所にあるんじゃないか?」
「ふむ……別の原因とは?」
……さっきの自爆はわりかし凶悪だったが、教えると調子に乗りそうなので言ってあげない。
「俺との戦闘経験や……こうして話していること自体とか?」
「戦闘経験は比較対象がお主しかおらぬから判断つかぬ。儂が魔物でなければ、いい加減嫌になっておった所だと思うのじゃ」
精神面のタフさは人類の比じゃないからな。
「俺はお前を倒すたびにレベルアップして強くなって行ってるし、戦闘経験を積んでもその実感ないのは仕方ないさ」
流石にオーバーサウザンツだけあって、3次職でもレベルが上がる。普通ならソロ撃破できる相手じゃ無いからね。
そして装備の相性の問題で簡単に倒せているように見えるが、
「儂の再召喚の魔力は核から供給されとるので、単にお前の経験値になるだけなのは核に申し訳ないのじゃがな」
「ダンジョンコアへの追加魔力供給もこっちでやってる。気にするな」
「気にするわいっ!儂にも意地があるのでな。必ずキサマをギャフンと言わせてくれる」
「……そう言う言い回し、何処で覚えて来るんだよ。……そう言えば、核の価値が上がった時に新たにスキル取れるよな。知識は取れないのか?」
「……試したことが無い!というか、物を取り込んだのも今しがたが初めてじゃ」
「だろうね。ほい、500G」
「……馬鹿にしおってと文句を言った所で、この程度では手も足も出布がムカつくわ」
ブツブツと文句を言いながら銀貨を取り込む。
これで知識が取れるなら、わざわざ斬り殺さないで良いのだが。
「……無理なようじゃな。追加で獲得できるのは、儂が知っているスキルだけの様じゃ」
「知っている知識?」
「前回は無かったはずの剣士系のスキルが増えておる。しかし知識系はそもそもない。コストが足りんスキルもわかるようじゃから、知らぬスキルは取れぬようじゃな」
価値上昇の際に取得可能スキルも知識ベースなのか。……元の価値より高い物を取り込んで再誕する場合はどうなんだろう。ここで試すわけには行かないからなぁ。その辺の知識は無いかしら。
「知ってるってどのくらい?」
「先ほど話に出た槍兵のスキル3種は獲得可能じゃな。それから、剣士と魔術師のスキルは全て獲得できるようじゃ」
魔物が使う術も人類側と近い物が多いとは感じていたが……システム的には全く同じ?
魔物と人類で共通の呪文書領域へアクセスしてる?それなら神々の力で魔物のスキルを封じられそうだけど……やらないって事は、違うのかな。
……違うとするなら、人間側に有って魔物側に無いスキル、逆に人間側には存在しないスキルもあるか?
人間側に存在しないスキルは確かめようがないけど……魔物側に無いスキルなら調査可能か?
やりたい事が多すぎるな。
「まだスキルは選んでない?それなら、何処まで情報が得られれば取得できるようになるかを検証しておこう」
消費MP、効果と順に教えていくが、口頭で説明するだけではスキルが生えたりはしなさそうだ。
仕方ないので錬金術師のスキルから、これも名前の挙がらなかった
「ほほう。なるほど、初級の結界系魔術なのじゃな。戦闘に置いては使えぬが、罠としてなら利用価値がありそうじゃ」
「あんまり塩を送りたくないから、この検証はこんなもんか」
恐らくだが、獲得できるスキルは知識系の情報を有しているか、目にしたことがある必要があるのだろう。
機会があれば魔物が獲得出来なさそうなスキルの検証のため、アーニャを連れてきて盗賊の
魔物のドロップを
「リスポーンの時以外もコストを弄って再取得出来れば楽だったんだがなぁ」
「お主にとっては経験値も入って一石二鳥じゃろう?」
「……俺は普通の人間なんでね。魔物は嫌いだけど、それはさて、おきこうして言葉を交わしてる相手を毎回切り殺すのは、ちょっとどうかと感じるわけよ」
別にこいつ自身に恨みがあるわけでもないし。こっちは余裕と思われてるだろうから、こいつからしたらなんのこっちゃいだと思うけど。
「……儂が言うのもなんじゃが、青いのぅ。それに異端じゃろ」
「邪教徒とかいるし、そうでもない」
国やギルドを始めとする組織の上層部には魔物とつるんでいる奴らもいるし、そいつらが目先の利益に釣られてる奴だけでない事も理解している。
クーロンで味方を自爆させた糞野郎どもと比較するなら、
「ふむ……まぁあ良い。頂いた分の強化はした。さぁ、今度こそ黒星を付けてくれるぞ」
「こっちもやられる気はないんでな。さっくりお還りいただくぜ」
なんとなく暗黙の了解に成りつつある
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現在5話まで公開中のスピンオフ、アーニャの冒険もよろしくお願いいたします!
アーニャの冒険~鍛冶の国の盗賊娘~
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