第359話 ホクレンへの援軍
魔物達は2分化し、村に突撃して時間を稼ぐ組と撤退する組に分かれたらしい。
攻める側が無理な突撃をしていて被害が出かねないか。ドロップ品を回収する影系の魔物も飛び回っている。
『引く魔物の深追いはやめましょう。目の前の相手に集中、余裕があるならシャドウ系の魔物を狙ってください』
注意を促しなしながら、残った魔物を倒していく。
小一時間ほどの殲滅戦で、村の周囲に残ったのは巨大スライムだけになった。
あのスライムはちょっと厄介だ。マナドレインで倒せる気がするが、どれだけかかるか分からないから、警戒だけして暫くは放置である。
『警戒を維持しつつ指揮官は被害報告を』
確認すると、幸いなことに生者の中に死者はいなかった。強力な回復アイテムのおかげで即死しなければ持ち直せため、けが人は複数出ているものの死ぬまでは至っていない。
『代わりに死者の皆さんはかなり被害が出ていますので、早く治療してあげてください』
また無残な戦い方をしたのだろうか。
倒した魔物は延べ4000ほど。回収したドロップは2500体分くらい。残りはロストするか魔物に回収された。
価値が高かったウォルガルフ、ヘドウィグ、それに鹿の魔物は回収に成功。
それ以外に数千G級の魔物から、子供を含む奴隷4人を助けることが出来た。
『無事な人は再編を、ホクレンでの戦闘が始まっているようなら援軍に行きますよ』
日没から3時間弱、みんな休むことなく状況の確認にあたってくれている。
俺も付与の腕輪で負傷した亡者を
魔剣士のレベルは45。ウォルガルフを倒してレベルが上がったが、ノーフェイスでは上がっていない。ほとんど経験値に成っていないのだろう。
『一応魔物の特徴を共有しておくのである』
ホクレンの平原に平原に向かう最中、そう話すコゴロウ達と、倒した魔物、逃がした魔物の特徴を共有した。
まず、逃がした
術師系で、分かっているスキルは……。
1.
2.高速移動スキルを妨害するデバフ
3.
4.視覚や
5.魔物に自分と同じスキルを使用可能にする
恐らく奴一番の能力はこの感染する能力だろう。
発動時に飛ばされた銀色の刺は、人差し指くらいの大きさで速度はそこまで早くない。おそらく
爆風も至近距離で受けても大したダメージには成って居なかった。
人間に刺さった場合、どの程度の効果があるかは不明。
一時的に操られるとか、行動を制限されるくらいはされるかもしれない。ただ、フルプレートメイルなら防御を抜かれることはなさそうなので、あくまで周囲の魔物の強化がメインだろう。
コピーは能力が低いのか、経験値は増えない様子。群体などのコピー作成というよりは、一時的な能力の貸し出し、とみるべきか。
ジャベリンにしろデバフにしろ、能力が足らないとコストが高いのか、弱い魔物は一度使用すると死んでしまうので使い捨てだ。ほんとに伝染病みたいなやつだな。
『某が相手にしたのは、ソウルイーターと呼ばれていたらしいのである』
終焉を齎すモノ・ソウルイーター。
ヘラジカの顔を人間にしたようなバケモノで、基本的には人が歩く程度の速度で忍び寄って来る。
1.スキル反射。物質を伴わないスキルなら反射できる。
2.半径5メートル範囲内に常時
3.最大10メートル弱の超加速移動。ただし数秒に1回
能力に特化していて、ステータスは恐らく低い。
ダメージが加算されてもその動きが変わらなかったことから、AGIは
普段はクーロンの森の奥などで目撃情報があるらしい。
運悪く忍び寄られた冒険者は、気づく間もなく殺される。そう言う戦い方するタイプで、逆に今回のような見晴らしのいい場所での集団戦は想定外なのだと思う。
反射と常時ドレインはヤバい。その分ステータスが低くて、投石や
類似する能力を有する魔物がいるかも知れないので、頭の隅にとどめておく必要がある。
アルタイルさん達が対峙し、現在地面の下に沈められているのは侵食するモノ・スローグルク。
馬鹿でかいグリーンスライム。スキルらしいスキルは使ってこないが。
1.強酸性で金属を軽く溶かす粘液
2.粘液は気化すると肌を焼く強力な毒となる
3.衝撃も斬撃も吸収する柔らかボディ
と、なかなかに厄介な特徴を備えている。
恐らく周囲の探知は熱と振動。襲い掛かって来る速度は、
ただし移動速度も
恐らく炎は弱点。だから気化する毒を有しているのだろう。
HPが恐ろしく高いようで、倒せる気配がない。
回復の方が速かったら話に成らないので、地下に封印が妥当なところだ。
『後は、ウォルガルフとヘドウィグですかね』
1.魔術を打ち消す拳。
2.高速移動、自在飛翔
3.物理限界突破
このシンプルな3つ。
その代わり無手での近接戦闘の技術が高く、ステータスもほとんどが200を余裕で超えるだろう。
アルマジロの姿は、スローグルクの柔らかボディと同じような物だろうと思われる。
恐らく格闘戦の技術がバーバラさんより高い。スキル無しの技量では、コゴロウでも厳しいだろう。
打ち消しも的確で、魔術師では手も足も出なかったと予測される。
静かなるヘドウィグは、隠匿を得意とするバードマン。
1.特定の魔物の姿を隠し、
2.高速移動
3.複数の羽を放って、着弾点に火炎球のような爆発を起こす
奇襲以外の活躍が無かったので分かっているのはこれ位。集合知だと、トラップ系のスキルが使えたという話もある。
空を自在に飛び回るので厄介な相手ではあったはずなのだが、コゴロウが上手く戦況をコントロールして倒してくれたので楽が出来た相手だろう。
『ノーフェイスとヘドウィグは上司が違うのであまり参考に成りませんが、プリニウスはウォルガルフ、ソウルイーター、スローグルクと近い能力や特性を有している可能性があります』
集合知の情報でも、
『ホクレンは城壁をプリニウスに破壊されたのち、一度城壁から引きはがすことには成功。プリニウスを複数の前衛で抑えつつ、雑魚から街を守っているようです。
先行していた斥候から連絡が入る。
すぐ農地に差し掛かり視界が開ける。照明弾で照らされた農地の先に、大きく城壁が壊されたホクレンの街と、そこを取り囲むように展開する魔物の群れが見えた。
そしてその中心に、巨大な魔物がうごめいていたのだった。
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サクッと倒されたり逃げられたりした魔物たちの能力を情報共有です。
現在5話まで公開中のスピンオフ、アーニャの冒険もよろしくお願いいたします!
アーニャの冒険~鍛冶の国の盗賊娘~
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