第339話 銀牙のウォルガルフ 2
「おらおら!どうした!根性見せろ!」
ウォルガルフからの猛攻を避け、受け止め、受け流し何とかしのぐ。
早い!完全にインファイター型だ。
こちらが振るったスキル付きの斬撃は全て拳や腕、さらには足でも受け止められていてダメージに成っている様子はない。
石斬りは名の通り岩石をプリンのように切れるし、魔力での防御でも霞斬りで無効化できるはずなのに!
しかし攻撃を受けてノーダメージということもないはず。
斬撃は全て四肢で防御して来るし、魔術に対しても迎撃や回避行動を取る。つまりダメージになる可能性があると言う事。
「二段、音速!」
「うぉっと!」
器用に受ける!
力も速さも俺と見劣りせず、バフがある分で反応速度はこちらが早いが、近接戦技術は上まであるな。
それでもなんとかなっているのは、ウォルガルフと名乗った魔物がほとんどスキルや魔術を使ってこないから。
これはおそらく使えないのだろうと推測する。
こいつは特化タイプだ。使うスキルは高速移動系二種と、魔術を無効化していると思しきスキル、そして物理限界を突破するパッシブスキル、このくらいか?
「物理、通常攻撃特化、四肢による限定的な魔術無効化、そんなところか?!」
「へぇ!頭も回るじゃなねぇか!」
隠さないか。それだけ自信が有るのだろう。もしくはまだ隠し球がある?
当初の魔力反応からすると、今でも強すぎるくらいだ。それは考えたく無い。
「それじゃ、更に上げるぜ!」
猛攻が一層激しくなる。クソっ!三回に一回くらいしか反撃できない!
こういう相手は離れて広範囲魔術で焼き払いたいが、高速移動されると更に厄介度が増す可能性がある。縮地で距離を取るメリットが薄い。
『狙撃する!攻撃後に離れな!』
『離れたらそっち行きますよ!』
『かまわねぇ!自分ごと焼く』
また無茶を!しかし良いと言うならお言葉に甘えてみるか。
二段、それから……
「なっ!?ぐぁっ!」
この狼野郎、咄嗟に反応しやがった!けれど初めて当たった!
「
一瞬の隙に、拘束魔術を発動する。どうせ大した時間稼ぎには成らないが、それで構わない。
「吹き飛べ!
縮地を発動して距離を取ったその瞬間、ウォルガルフが紅蓮の穂脳に包まれた。
ジャベリン並みの射程、ランス系より強力な破壊力と、火炎球に勝る爆発を有する中級魔術。鉄をも溶かす高温と衝撃が、着弾点を含めて直径10メートル以上を吹き飛ばす。
それが3発。多少打ち消したところでどうなる物でもないが……。
「あちぃじゃねぇか!」
雄たけびを上げながら、高速移動スキルを発動させたウォルガルフがバノッサさんめがけて突っ込む。
あれでダメージを見せないのかよ!
「
バノッサさんは慌てる事無く、自分を中心にして炎の嵐を放つ。
まっすぐ向かっていた狼野郎はもろにその炎に包まれて吹き飛ばされる。
「
更に追い打ち。嵐にまかれながらも発生した炎の柱が敵を飲み込む。
どれも中級魔術ではあるが、
「うらぁ!」
「っ!」
ウォルガルフは吹き荒れる強風と炎を中和しながら、多少焼けるのは構わないとバノッサさんめがけて飛び込む。
流石に勢いは無く、
くそ、高速移動モードに入りやがった!
「追いかけっこを傍観するのは好みじゃないんでな!」
「んじゃ引くんじゃねぇよ!」
縮地で真正面に飛び込み、剣と拳を交える。
ダメージが全くないという事は無いのだろう。銀の毛並みは焦げてはいるが……魔物の事、どうせ回復するな。
『どうなってんだ!』
『こいつ、HP0まで止まらないタイプですね!』
これだから特化型は嫌いだ。
高速移動スキルを妨害可能な職が居ればよいのだが……ない物ねだりをしても仕方ない。
この状態、俺の技量だと近接戦は不利だ。
俺の焼付刃の剣術でも何とかなっているのは、相手が無手で、俺にバフがかかっているからが大きい。
こちらの斬撃は防御されればダメージに成らなず、無手の分相手が早いとなれば分が悪い。
しかし俺が近くにいる限り、バノッサさんは攻撃魔術を放てない。それが分かっているから、こいつも高速移動によるヒット&アウェイでは無くインファイトを選んでいる。
つまり、泣き言を言ってないで俺が何とか押し切らないと話にならんってことだ。
消費が厳しいが……威力を上げる。
「
魔剣士のスキルに付与を使って、石斬りに雷剣、霞斬りに凍剣を付与。
「祖は万物の根源、力は理、集まりて大いなる力と成れ!
そこに上級の強化魔術を上乗せする。
「いくら重ね掛けしても無駄なんだよ!」
「さてね!」
余裕を見せつつも、こちらの攻撃を回避。どれほどの威力、副次効果があるか分からないこちらの技を冷静に見極めている。やりづらい。
じっくり観察させてやる気はない。
「音速斬り!」
目にもとまらぬ一撃を、しかし狼野郎はかわす。こちらの動きは見切られていて、早いだけじゃ当たらないか。
しかし本命は二の太刀。スキルは載せていないものの、こちらは避けられる耐性じゃない。
ウォルガルフはこれまでと同様、爪を用いて刃を止める。
「ぐあ!?」
止められた太刀の持ち手から、動きに連動して放たれた
やはり硬いが無敵じゃないね!やせ我慢か!?
返す刀で切り付けると同時にもう一度
モーションに紐づけられた
そこに
「てめぇ!妙な技を!」
「口を開く余裕が?」
攻撃の頻度はこちらが3、相手が1。防御に重きを置いて、致命傷を避けている。
更に斬撃への対処を受け止めから、拳を横から当てた反らしに変えてきやがった。まだ完全に対処し切れてはいないが、いずれ
……MPの消耗が激しい。このまま押し切る!
相手の攻撃に合わせて
無詠唱でもスキルだと感づかれるが、これなら……。
「そうそう何度もなっ!」
「っ!」
もう対処して来た!?
攻撃を打ち落として隙を作るはずの一撃は、軌道を変えた拳によって弾かれる。
魔力の流れを見て、
「手品は終わりか!」
「残念!」
奥の手はいくつも準備しておくものだ。
あまり見せたくないが……
これは俺のなんちゃって
決して効果は高くないが、洗練された
それでいて、振り下ろされたウォルガルフの腕を外側へと押す。
「!?」
一瞬、つっこんで無防備な全身をさらけ出す。
「
ただひたすらに早く。だからこそ強い。
力を込めた石斬りの斬撃が、相手を袈裟懸けに切り裂いて……。
「ぐっ!?」
「ぐぁっ!?」
互いに吹き飛ばされて十数メートルを転がったのだった。
---------------------------------------------------------------------------------------------
現在5話まで公開中のスピンオフ、アーニャの冒険もよろしくお願いいたします!
アーニャの冒険~鍛冶の国の盗賊娘~
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます