第304話 ダンジョン攻略報告
亡者たちの倒したダンジョンマスター(仮)のドロップ品は幾らかの金貨と魔石、それにダンジョンコアだった。
あれは元々数千G程度のサポートタイプの魔物だったのだろう。
金貨の価値を考えると、1次職に取っては強敵だが2次職混じりのパーティーなら対象できる相手。それがダンジョン産の魔石を得て強化され、更にコアを取り込んで力を得ていた。おそらくであるが、迷宮を取り込んでいたのもこいつの采配だろう。
知略に重きを置くタイプ。敗因は直接戦闘の経験不足にもかかわらず、ダンジョンコアを取り込んで勝負に出た。あいつの言い分だと、魔物であるダンジョンコアそのものが価値を持ったらしいから、それで勝てると判断したのだろうか。
強化されたダンジョンマスター(仮)は、おそらくゴーレムタイプで近接寄りのステータス重視型。
初手で守護戦士の中級スキルを容易く打ち破っていたから、単発攻撃力寄りで3次職相当と対等に戦えるだけのスキル。
囲まれた時の吹き飛ばし、近接での高速移動妨害、自身も縮地、縮天という使いやすいスキル、全方位攻撃と布陣的には隙が無い。実際亡者でなければ二人は確実に死んでいたし、初手でアル・シャインさんが吹き飛ばされて後衛がやられた後の立て直しはかなり難しかっただろう。
ただし戦闘経験の無さは遺憾ともしがたい。
まずはじめ、これ見よがしに進化する必要は無い。ああいうのは隠れた所でやっておくべき。次にスキル振り。アクティブ防御系スキルをロクに取って居なかったと考えられるが、多人数を相手にするなら基本防御力が高くてもそれは愚策だ。防御スキルを使って上級スキルを防がれれば、こちらの不利な持久戦に成っていただろう。
それから戦術。自分が高速移動スキル2種を取っているのに、それを使えなくするデバフを掛けるのはお粗末。こちらを倒すことを優先しての判断だろうが、縮地から打撃や
最後に使っていた
追加で援護すれば倒せない相手では無かっただろうが、ついうっかりで殺されかねない程度の能力はあった。こちらの手の中でさばけたのは運が良かったな。
まぁ、なんにせよ全員無事にダンジョン攻略を終えられて一息だ。
「と、いうわけで、7階層のダンジョンコアは台座にセットした状態にしてあります。ダンジョンマスターらしき魔物を倒したので、おそらく迷宮への進行は収まると思います。外がダンジョン弱体化の原因を探っているようですし、今壊すと外で活動する俺たちがめんどくさいので、しばらくは様子見のつもりですが良いですかね?」
「ああ、ダンジョン側かから侵入してくる魔物も減ったから、基本的な問題は解決したとみている」
6階層のボス部屋がおいしいので、当面は現在の状況を維持したい。最下層へのショートカットは確保しましたから、コアの破壊は実質的にいつでもできる。
「1階層、2階層、3階層の迷宮部分の奪取はどうする?」
「当面は様子見で良かろう。今ダンジョンが消えた所で迷宮を目指す者が居らん。何かしら人を呼び込む手を打たねば意味がない」
「試練前広場の情報を更新するか。新たな記述が増えたと振れれば、探索に来るものも居よう」
「それをどうやって伝える?」
「それはほれ、ちょうどよい者がいるではないか」
エルダーの一人がこちらを見る。
「頼めるか?」
「まぁ、お世話に成ってるからやりますけど……自分たちでもできるのでは?」
「儂らはダンジョンに潜っておらんからな。外での信用が無い。お主らは迷宮探索を目的に来ておるのだろう?新情報を報告しても怪しまれん」
「わかりました。そちらは引き受けます。内容はこちらで模写しますから、手を入れたら教えてください」
真偽官に調査されても問題ない状況にしておく必要はある。
「それから、俺達が救助した獣人の奴隷ですが……」
7階層に捕まっていた獣人たち。人数は7人で、子供が3人、老人が4人。デルバイ周辺を納める領主が生け贄としてダンジョンにささげた者のようだ。その結果として装備のドロップが良くなり、ペローマはダンジョンを運営することを決めた。
「洗脳は溶けておるからの。こちらで面倒を見よう。当人たちには不服かもしれんが、ダンジョン運営も手伝ってもらうつもりじゃ。魔物産装備が落ちなくなれば、また同じことをするかもしれん」
「ええ、二次被害が増えても後味が悪いですからね」
これ以上被害者を出すようならコアはサクッと砕いてしまうつもりだ。
ダンジョンが消えればデルバイは一気に過疎化するだろうが、知った事ではない。
「お主の亡者たちも力を借りるが良いか?」
「ええ、問題ありません。彼らも魔力制御が出来るようになるまでは外に出られないので」
仮初の命で活動制約が自身のMPになり制限時間が大幅に伸びた亡者の皆にも、迷宮に出入りできるよう魔力制御は習得してもらわなければ成らない。
ここだと6階層のコボルト地獄がMP回復に有用だ。そこまで行かなくても、4階層適当なところでザコ狩りをしてもいい。生活には苦労しないから頑張ってもらおう。
「お主らはどうする?」
「まだ教わっている呪法の獲得が出来ていない者が多いので、外の様子を見ながらここで修練に励むつもりですが……ああ、でも俺の鎧が出来たら、一度ボラケに戻ろうと思っています。移動用の飛行船を建造中なのと、あっちの錬金術師協同組合の会長に依頼された報告をしなければ成りません。……ここの話ってどこまで外に出せますかね?」
「当人に足を運んでもらうしかないのう」
転送陣の効果で、
「とりあえず、出来るところでやってみます。後は俺の鎧ですが……」
「おう、それなら仕上がったぜ」
「本当ですか?」
朝、今日の戦いには間に合わなかったと聞いていたのに。
「ああ、ずいぶん寝坊助な奴だったが、たしかに付喪神化に成功した。ってか、朝には成功していたってのが事実だな。そっちが良ければすぐにでも合わせられる」
「お願いします」
コゴロウの太刀よりさらに時間がかかってようやくだ。
さらにそこから付喪神の力を引き出すのにどれだけかかるか……先は長いな。
「では、ダンジョンはしばらく様子見という形にしよう。迷宮の碑文書き換えは後程連絡する。議題は以上で良いな」
ダンジョン絡みの探索はひと段落。
鎧をもらったら、一度ボラケに行って飛行船の状況を確認。その後は時間迷宮経由でクロノスに戻って、クーロンの状況確認。それからザースに行くか、クーロン経由でクトニオスに向かうかを決めないとな。
---------------------------------------------------------------------------------------------
今週も仕事で予定が見えない為、隔日での更新とさせていただこうと思います。
次回更新は11/29(火)の夜になります。よろしくお願いいたします。
現在4話公開中のスピンオフ、アーニャの冒険もよろしくお願いいたします!
アーニャの冒険~鍛冶の国の盗賊娘~
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます