第299話 それぞれの成長と2つめの二次職

亡者全員にMP強化を施し、必要な装備を作成して仮初の命リ・ボーンを付与すること数日。

54人は全員単独行動が可能なところまで仕上げることが出来た。


俺が準備したアイテムは4つ。


一つ目はMP回復向上Ⅱの足輪。アルタイルさんがスキルを持っていて1分1消費だったので、これが無いとMPの消費が厳しすぎる。


二つ目は収納空間インベントリの腕輪。亡者にとって最大MP低下は諸刃の剣だが、封魔弾やMPポーションなど小物を入れておくのに便利。亡者の皆さんに収納空間インベントリを定着させるのは面倒なので腕輪で代用だ。


三つ目は人造魔結晶製の自動MPタンクのペンダント。魔力制御を覚えてようやく錬金アイテムが作れるようになった。

MPタンクを、自然界に存在する魔素を収集するように調整した物である。貯蔵量96、最大貯蔵24時間、一度最大状態までMPを貯めないと引き出せず、0まで使いださないと再収集を開始しない。また半径1メートル以内に同じアイテムがあると収集速度が低下する。ここまで制約を入れないと形に成らないのは腕が足らない。


四つ目は朽ちゆく武具メメント・イクウィップの腕輪。これは死者専用の装備を一時的に生み出す死霊術師のスキル。これまで使ってこなかったが、使い減りしない装備は偉大なので作ってみた。MPを消費するデメリットがどこまで許容できるかは当人しだい。


本当は義体アーティフィシャル構築ボディ・リ・ビルドをエンチャントか錬金アイテムとして渡せればカンペキだったのだけれど、これは断念。回復対象と素材を両方とも対象に取るという特性があって、作るときに指定した素材しか回復に使えない、さらに再指定不可で毎回作り直し。回復用に亡者の収納空間インベントリに鳥肉1羽分常備するのは無意味なので止めた。


ここにバーバラさんの二次職用装備が加わるので、亡者たちの装備はそれなりになった。

MPさえあればずっと活動できるが、魔力制御は覚えてないので、街へ出ると戻ってこれない。なので大半はダンジョンでレベル上げをしている。たまに死にかけて戻って来るのは何とかしてほしい。皆30レベル超えてる二次職なんだから、もうちょっと注意深く戦てほしい所だ。


そんな事をしている間に、他のメンバーも着々と力をつけている。


タリアは神凪カンナギの38レベルまで到達。天眼通、天耳通など巫女系スキルの強化に加えて、周囲を癒したり強化する聖域系スキル、魔物の能力を封じたりスキルや行動を阻害する結界系スキルを取得。念動力もさらに強化された。


槍のトレーニングも慣れ、最近は武器での模擬戦も形になり始めた。メイスから槍に持ち替えたが、もともとメイスが得意だったわけでもないので変に戸惑う事もなかったのが幸いした。

キューブは4面を攻略中。呪法も15種類は獲得できたらしい。契約精霊ともようやく話せるようになった。ただ、精霊同化はまだ糸口がつかめないとのこと。先は長そうだ。


アーニャは騎士の42レベルまで成長している。大ゴーレム部屋をメインに、たまに亡者に交じって普通のボス部屋で戦っているようだがかなり成長が早い。

魔操法技クラフト魔矢マジックアロー魔槍マジック・ランス強風ラフ・ウィンド縮爆風バースト・エアを習得。自らの動きに連動した舞踏魔技アーツとして使うため、技一つ一つの早さがシャレに成らない。


キューブは5面を攻略中。呪法は新たにいくつかを取得したようで、騎士のスキルと合わせて物理限界を完全に突破。今の俺だとアーニャの全力に着いて行けない。何とかせねば。


バーバラさんは魔闘士のレベルは少しだけ上がって33。

キューブは4面を攻略中。呪法は15種類を獲得。魔導刻印の技術を習得するため、もっぱら金槌を振るって亡者たちの装備を作っている。覚えることが多くて大変そうだ。


直近の作品で最も画期的だったのは、魔術無効化を練り込んだ武器。魔導回路に毛の生えた程度の仕上がりと言っていたが、幽霊部屋のレイスを狩れるそれは、亡者たちにとても喜ばれた。悪霊殺しレイス・デットシリーズとか呼ばれている。意味違くねぇかな?


コゴロウは昨日ついに竜戦士の部屋を攻略した。レベルは46。太刀を預けず初めからダンジョン攻略に参加していたら、最初にレベル50を超えていたのはコゴロウだっただろう。彼以上にレベルが高いのは最近48に上がったアルタイルさんしかいない。


物理限界突破スキルと極めし者マスターの高ステータスにもなれ、こちらも動きに磨きがかかりつつある。能力的には力がコゴロウ、速さがアーニャと言った感じで、うちの前衛2枚看板に成っている。

キューブはまだ3面を攻略中。身体を動かす方が好きなため、そっちをやり始めたらキューブの攻略が止まった。一点集中しか出来ないらしい。


「ん~……やっぱり決め手に欠ける」


俺はと言えば転職神殿で着ける職のリストを眺めながら首をひねっていた。

とりあえず剣士を60レベル程、錬金術師アルケミスト極めし者マスターとなって、シナジー無しでも錬金スキルは使えるようにした。人形遣いはまだアナウンスが流れないので待ちだ。


今成れる2次職は狂戦士、剣闘士、騎士、魔剣士、属性魔術師、賢者、武者、機兵使い、化学者、物理学者の10種。自身の物理限界突破を目指すなら狂戦士、剣闘士、騎士、魔剣士、武者の5種類。4人の職と比べるとやはり魔剣士か。


他に東群島で取るなら式紙使いと神主。式紙使いは魔術師系で、陰陽師、付喪使いと上がっていく。神主は巫女の男性版。性別で分かれるので俺は巫女に成れんようだ。

今の環境なら1次職極めし者マスターも2次職レベル上げも幽霊部屋で刀にでもなるのだけれど、スキルを取り過ぎても取っ散らかって使いこなせなければ意味がない。

とりあえず、依然目指していた魔剣士に転職して使い勝手を試してみるか。


転職したのち、その足でダンジョンに向かい6階層までショートカットする。

ああ、影渡りシャドウ・トリップを使えないから移動がめんどくさい。ここまで来るのに外から早歩きで1時間近くかかる。


「性懲りも無くまた気おったか!」


悪霊王は始めっからブチ切れ状態だ。

この階層のボスは倒されるまでの記憶を有したまま再誕するらしい。何度も戦っていると、相手も経験をためていくのはなかなかに厄介……なのかな?

話が出来るのが悪霊王だけなので分からないのだ。竜戦士は分からないが、ゴーレムや雑魚コボルトは経験を活かせる知能はなさそう。普通のボス部屋も似た感じだから、役に立つのはこいつだけだろう。


「すまんな。また経験値稼ぎをさせてくれ」


「今日こそコロス!」


「……そう言いつつ何度目だっけ?やる気があるならスキル振りとかステ振り変えて生まれてくりゃ良いのに」


「変えられんから創意工夫で何とかするのじゃ!」


「……まぁ、あんま頑張らず刀の錆に成ってくれ」


封魔弾で悪霊王のワープ先を制限、襲い掛かって来るレイスを切り捨て、悪霊王に肉迫する。

攻撃魔術は霞斬りと魔術無効化ディスペルで対処。さばききれないレイスは封魔弾を一斉掃射。数が減ると寄ってこなくなるのはドロップを回収されるのを避けるためだろう。

魔投槍マナ・ジャベリンで牽制。追い詰めた所で影渡りシャドウ・トリップを誘発させて、絞ったワープ先に距離を詰める。


「おのーれ!暗黒爆撃ダーク・ブラスト!」


「自爆させるわけないだろ!」


魔術無効化ディスペルで魔術を打ち消して一刀両断。恨めし気な視線――こちらを見つめる顔は空洞だが――を向けながら、悪霊王は消えて行った。数分間の別れ。

うむ。消費は大きいけど高速移動できなくても行けるな。


ステータスを確認すると、3つほどレベルが上がっている。さすが1万G越えの魔物。

……ダンジョンコアを破壊する急ぎの理由がないなら、これこのままの方が効率良いかな?

ムネヨシさん、メリッサさんとに相談してみよう。

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現在4話公開中のスピンオフ、アーニャの冒険もよろしくお願いいたします!

アーニャの冒険~鍛冶の国の盗賊娘~

https://kakuyomu.jp/works/16817139559087802212

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