第241話 年明けと今後の指針
大晦日は結局宴会になった。
残っていた餅も結局米やパンの代わりに食われたので、新年の朝飯には追加分を出すことに成った。消費が激しい。
追加分の餅を丸めて、一部を鏡餅として玄関に飾ってある。鏡餅文化はこの世界には無いので不思議がられた。
タリアのセリフは一言「もったいない」だ。乾燥しても焼けば食べられるし、それはそれでまたよい物とフォローをする羽目になった。焼餅を作るために火鉢でも作るか。
それはさておき。
「それじゃあ、今後の作戦会議を始めようか」
朝食後にダイニングを兼ねた居間に集まって、今後の方針の相談を始めた。
「昨日も言われたけど、何を話すの?」
「うん。今から2カ月弱の各々の強化方針かな」
アーニャのインゴットを渡せば、二人の分の装備の作成が始まる。
バーバラさんは素材の関係で明後日から魔力注入を開始。2月前半には新春のお祭りが始まるらしいので、実際の仕上がりは2月中旬になるだろう。一か月以上はボラケを離れられないわけで、その間にやることがこれまでと同じトレーニングではちょっともったいない。
「ふむ。普段のトレーニング以外ということですな。そう言いだすという事は、何か思うところがあるのであるか?」
「ええ、一応は」
俺は新しい移動手段を作るとして、拠点があるならちょっと検討していたことが有る。
主にタリアとアーニャに関してだ。
「ぶっちゃけて言うと、タリアとアーニャ、二人に外を見てきてもらいたい」
「外?」
「外って……首都の周りか?」
「いや、
タリアは魔物に捕まった後に成人していて、16歳だが冒険者としての活動は俺と一緒になってから。
アーニャは孤児院で日銭を稼ぐために採取などの仕事をしていたが、冒険者になってからはろくに依頼を受けていない。
二人とも無茶苦茶な環境での経験しかないのだ。
「二人とも一般的な冒険者の活動をしたことが無いだろう?急ぎ足でレベルを上げて、日々のトレーニングで戦闘力だけは高くなっているけど、常にそれが活かせるかはまた話が別。まぁ、実際俺もなんだけど、経験が足りないんじゃないかと思ってる」
俺はタリアを解放するまで、グローブさんに教えてもらいながらしばらく冒険者をやっていたが、二人はそう言う期間すらない。
「ギルドから依頼を受けたり、臨時でパーティーを組んで討伐をしたり。……二人の実力からすると、戦闘面では新人を指導する側になりそうだけど、そんな感じ」
「ぶっちゃけ実戦経験が足りてないから、自力で見て来いって感じね」
「そう。人の事言えた義理じゃないけどそれは置いといて、俺のやり方は成長は速いけど、良いとは限らない。少なくとも最善では無いだろうしね」
一緒にいると見えなくなっている物もあるだろう。
2次職以降はレベル上げも中々難しい。別に実力を上げる検討が必要だ。
「ギルドで依頼をこなせばいいのか?」
「うん。アーニャの目標はランク2に上がる事、タリアの目標はドロップとギルド報酬で10万Gの利益を上げる事。このなところだと思う」
アーニャはランク1。ボラケでの活動はしていないから、ほぼ新人冒険者と言う扱う。ここからランク2に上がるには、それなりの稼ぎを上げなければ成らない。魔物討伐ひと月半でランク2は相当厳しい。
俺がランク2になったのは年齢と封魔弾の卸しのおかげだ。
タリアはランク3に上がっているので、ギルドランクを上げるのは難しい。
目標の10万Gは、カサク周辺では魔物のドロップで稼ぐのはなかなか難しい。
この金額だとギルドの依頼をそれなりにこなさなければ成らないはず。
「なるほどね。……一応聞いておくけど、手段は何でも良いの?」
「出来れば正攻法で。お金になりそうな職業はいくつか思い浮かぶと思うけど、それは目的からずれるじゃん」
「……まぁ、言いたい事は分かったわ」
タリアだってアーニャだって、
既に入れ知恵をしている状態なので、二人ともやろうと思えば俺の真似事は出来るのである。タリアなど商人ギルドに登録されているから、さらに自由だ。
「……そうだな。あたしも最近、自分が昔と比べてどれくらい変わったのか分からなくなってたし、特に異論はないぜ」
「二人は?」
「……そうですね。外を見てくるのは賛成です。ワタルさんの側に居ると、常識を忘れますから」
「某も異論はない。生きるために稼ぐだけなら態々その様な事する意味は無いであろうが、我々はそれ以上のことを成す必要がある。この間も後れを取ったばかり出るし、広い視点を養うのも必要であろう」
全員の同意が得られたので、タリアとアーニャは個別の冒険者活動を当面の予定とする。
簡単に所持品を整理して、亡者や貴重品は俺が預かる。
手持ちの資金は100Gスタート。共通装備はHPポーション、MPポーションを3つづつと、特製封魔弾を10個。装備はそのまま利用だ。
アーニャはステータスが上がっているので、俺の打刀も渡しておく。量産品なので、そのままでも使えるはず。今後二刀を訓練しなければ成らないのでちょうどいい。
二人とも復唱法で
「一応、泊りがけの仕事を受けたり、他の街に行く場合は事前に連絡を」
「ああ、それも良いのね」
「手段は任せるからね。ああ、でも家で以外の飯と酒も経費してね」
「……なるべく帰ってきたい処ね」
10万Gは食いつぶせないと思うが、うちは一般的な冒険者のパーティーに比べると食費がシャレにならんからな。
「私たちはどうしましょう?」
「バーバラさんはヒノさんの工房で生産技術を学べるように渡りをつけてあるけど、どう?」
「……何から何までありがとうございます。しっかり学ばせてもらいます」
「某はとりあえず
「構いませんよ。俺も基礎トレをやり直そうと思っていたので、一緒にやりましょう」
そう言うと、タリアとバーバラさんが二人して怪訝な表情でこちらを睨む。
「……ワタル……やっぱりそういう?」
「やめて!視線で見るのっ!」
コゴロウがメンバーに入ってからこっち、宿だの家だのの部屋割りでもめにもめて、そっちの疑惑を持たれている。
最初にライリーで5人部屋は無いと、部屋を2対3に分けようとした時からずっとだ。
元々4人部屋を使っていたのがおかしかったと思うんだけどね。
最初の時はコゴロウが一人で逃げ出しやがった。「某、国に妻と娘がいる故、浮いた話には興味ないのである」と、実は既婚者だったことも判明。
「既婚者だからと言ってその気が無いとは言えないのでは?」と、バーバラさんが余計な油を注ぐので余計に詰め寄られる羽目になった。
「俺も7割8割ヒノさんの工房だよ。浮遊船を改良して海を越えられるようにすんだからっ」
「バーバラさん、よく見ておいてね」
「分かって居ます」
何が分かって居るんだろう?
アーニャが生暖かい視線をこちらに注いでいるし、不安が絶えない。
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□雑記
ボラケで借りた家でも、男二人、女三人の部屋割りで二階で生活しています。家を借りた時にちょろっと出ていましたがもう一部屋あり、そちらは物置に成ってます。
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