第213話 海魔討伐の依頼が来た
「よく来てくれたな。まあ座ってくれ」
そろそろ日も暮れきろうかという時間に冒険者ギルドへ顔を出すと、すぐにギルド長室に通された。
ミスイの冒険者ギルド長はバードマン。白い頭と黒い翼をもつ、カモメ顔の男性だ。海鳥系の鳥人がギルド長をやっているのは港町特有だなと言う感じがする。
彼らは長距離飛行を得意とするタイプのバードマンで、魔物との戦闘がメインの冒険者ギルドで重役に着くのは珍しい。
「色々と無理をお願いしている自覚もありますので」
応接スペースで四人そろってソファに腰を下ろす。
国が違えばギルド長室もずいぶんイメージ違うな。壁は紙製のクロスが張られていて暖炉は無く、代わりにこの周辺の海域と思われる大きな海図が掲げらえている。
ドアのそばに置かれているのはコート掛けでは無く帽子掛けに成っていて、しかもかけられているのはボーターハットやパナマハットだ。
「まずは、先日のドロップ品の鑑定に関して、首都の総長から再度感謝の言葉が来ているので伝えておこう。解析検証が終わった物から、マジックアイテムとして使用が始まっている。使い捨てのアイテムだから、改修しただけ魔物も減って行くだろう」
そう言えば古の封魔弾はどれくらいの性能なのだろう。
手に入っている物は全部ギルドに売ってしまっているが、水槍アパーム・ナパートと同じように使える物はあるのだろうか。
……出所不明の使い捨てアイテムを使うのはそれなりに怖いから使わないかな。
「それで本題だが、最近発生した海の魔物たちの住処が判明した」
「本当ですか!?」
俺たちは魔物の数を減らして、あわてた魔物の大攻勢を狙おうと思っていたから、これは予想していなかった朗報だ。
「場所は西の沖合30キロ。船の墓場と呼ばれている海域の一つだ。海流の関係で、流された船がその辺りで沈むことが多い。大型船もいくつか沈んでいる」
沖合30キロは結構遠いな。
かつてから知られているポイントなのだろうが、海中を探索する冒険者も行動範囲外だろう。
「場所が海中なため、魚人、人魚、鳥人を中心とした戦力で討伐に当たろうと計画していた。ただ、距離があるのでどちらにせよ船をだす。そこでそれ以外の種族でも優秀で海上戦に支障がない者に個別に声をかけさせてもらっている。基本は2次職以上だな」
海上戦に不慣れな人間を連れて行っても足手まといなだけだから妥当な判断だろう。
「昼の報告で、貴殿らのパーティーも十分な実力があると判断した。独自の移動手段も有しているようだし、可能であれば参加を願いたい」
なるほど。こちらとしてもさっさと船の運航が再開してくれないと困るので、協力するのはやぶさかではない。
「ちなみに、申し訳ないが依頼料は安い。往復の船や帰還の宝珠はもちろん準備するが、一人当たりの依頼料は300Gだ。拘束日数は1日の予定なので、これでも経費は弾んでいる方だ。申し訳ない」
相変わらずだな。
まぁ、帰還の宝珠が配布されるだけで安全性は段違いに上がるので致し方ない。
「2次職限定ですか?」
「そのつもりだが?」
「うちのアーニャは見習い扱いですが、サポートには必須メンバーです。人数に加えてもらいたい」
「未成年なのだろう?万全を期すが、それでも危険だ。ギルドとしては承諾できない」
「そこいらの1次職よりよっぽど強いですよ。フォローも可能です。あと5人、こちらのパーティーとして2次職を参加させられます。重力の魔術師、冒険家、守護戦士、騎士、武装商人の5人です。皆20レベル以上ありますから、十分戦力になりますよ」
重力の魔術師、アルタイルさんは言わずもがな。海戦への適応力も高い。うちのメンバーで自力で飛行できるのは彼くらいだ。
冒険家、ダラセドさんは索敵も得意だが状況を見る目が特に高い。海上からでも水中の戦況を確認でき、経験豊富な分、タリアの千里眼以上に信頼できる。
まだ活躍の機会がない守護戦士のアル・シャインさん。守護戦士は防御特化タンクであり、離れた所の仲間も防御できる。ステータスをエンチャントで延ばせば、海中の味方の防御も可能だろう。
騎士のスコット・チェンさんもアルさんとい似たようなことが可能。こちらは上陸して来た魔物の迎撃にも当たれる。バランス職ならではだ。
武装商人のハオラン・リーだけちょっと何に役に立つか微妙だが、
「魅力的な提案だな。君のパーティーだけで一船任せられそうだ……だが、それと未成年を連れて行けるかは別だぞ」
「アーニャの参加は必須です。連れて行けないなら、この依頼は受けられません。紹介できる5人は、俺が居ない場合参加できません。直接交渉も無理です」
俺のINTの範囲内でなければあっという間に動けなくなるし、そもそもタリアの
「ランクの高い冒険者でも、
少なくともこの世界に置いて、
俺は集合知で
「それはそうだが……しかし未成年は前例もない。本気か?」
「もちろん。なんなら、職員と腕試しをして貰ってもいいですよ。ランク2になれるだけの能力は有ります」
アーニャは見習い、冒険者ランク的には0と言う扱いではあるが、戦闘能力も知識量も既にその反中に収まらない。エンチャントアイテムでステータスマシマシにすれば、1次職50レベルが相手でも勝負になる。
持ち前の器用さもあるし、3カ月真面目にトレーニングを積んでいる。俺がアインスで最初に模擬戦をしたのはグローブさん相手だが、当時のグローブさんレベルではおそらく相手に成らないだろう。
「ええ……あたしに出来るかな」
「大丈夫。実力的には問題ない」
アーニャの周りには、この世界の平均以上が集まってるから気づいていないだろう。
俺や
口には出さないものの、邪教徒との一戦で力不足を感じているようだし、ギルドにその気があれば噛ませ犬になってもらおう。
それに船上での戦いが予想通りに進むとは限らない。
シーサーペント以外にも1万G級が居れば、それだけで船の一隻二隻は沈むだろう。2次職組に余力がない場合、他に浮遊船の操作を任せられるのはアーニャだけだ。
「……未成年でもギルド所属の冒険者が居ないわけでは無い。だが、実力を兼ね備えていなければ許可は出せない。……が、戦力としては惜しい。試験を受けてランク1以上の能力があると認められれば、許可が出せる。それが最低ラインだ」
「問題無いよな」
「ワタルが大丈夫っていうならな」
「ちなみに試験は魔物との戦闘と船上想定した模擬戦だ、それに筆記」
「……エーーーー!?」
筆記は嫌だそうだ。
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