第207話 スキルを【使う】技術
「厚さは1メートル。後は言われた通り、転覆しない様に太さ2メートルくらいの柱を浅い海底に引っかかる様に固定したわ。これで
「まあ、そこはフィーリングだからね。耐久力向上と軽量化を付与したから、これでそれなりに持つはず」
広さも十分にあるから、魔物たちも端から上陸するように動いている。
いま観測している範囲だけでも、この間の砂浜よりさらに多い数が集まりそうだ。魔力反応も強い。
「冷えるし滑るけど、スパイクは大丈夫?」
氷上活動用に、ブーツには後付けの金属スパイクを装備。服装もクロノス出来ていたローブやマントを羽織っており、寒さ対策をしてみたがどうだろう。
「あたしは問題ないぜ」
「多少違和感は有りますが、大丈夫です」
「それじゃあ、魔物狩りを始めますか」
ビットを飛ばして、さらに広範囲を索敵する。大きい反応もあるな。寄って来てくれるかは未知数だ。
ほんとは連携の練習も兼ねてサウザント級後半や、オーバーサウザンツ級が来てくれると良いのだが……その辺りに成って来ると、ひょういひょいこっちが準備した戦場に向かって来てはくれない。
高速移動スキル持ちを相手にする場合アーニャが危険だし、連携を考えられるようになるのは成人を迎えてからかな。
アーニャの誕生日まであとひと月は切った。未成年の間に検証できることもほぼやりつくしたので、成人したら1週間くらいならしながら2次職まで鍛える。そのころまでに大陸に戻れるかは運しだいだ。
「浮遊船を追いかけてきた奴らが来るな。外洋側からも来てる。陸に近い方を3人でお願い。俺は沖合から来るのでいくつか新技を試す。横から来るのは適宜狙撃で。流氷が攻撃されて割れたら、浮遊船に飛び乗って。俺はワープできるから」
「連携の練習はしなくて平気?」
「大丈夫。やるなら大物が来てからか、とばりの杖でやろう」
「わかりました。お気をつけて」
3人と役割を分けてから、一人正面の敵の群れに向き合う。
今日はトレーニングでだけ試していた、新しい戦い方を試す。魔術でもスキルでもない。ギリギリの戦いを勝つための術。着目する者は少ないが、腕利きと言われる者たちの中には確かに存在する、スキルや魔術を【使う】技術一つ。それを試す。
まず飛び出してきたのは右前方からサハギンライダー3体。その後左から上がって来るのは魚類と水棲哺乳類の魔物のようだ。フライ・マンタに乗ったサハギンライダーから倒してしまおう。
距離は30メートルほど。
今日は都合により素手である。
「ぎょえ!?」
マンタが跳ね上がり、サハギンが宙を舞って氷の大地にたたきつけられた。
「ほら、お相手様のお出ました。来いよ」
サハギンライダーたちは急旋回し、
それを前方へのステップで躱し、避けられないものは盾を出して受け流す。
……それなりの衝撃だが、防御は貫けなそうだ。これなら盾は要らないな。
盾をしまって肉迫、突き出された銛を掴んで上を振り落とす。身を捻って毒針付きの尾をこちらに向けたマンタには、ガントレットで防御しつつ手刀を叩きつける。……流石に殴るじゃ倒せないか。
氷面にたたきつけられたマンタに踏みつけを3発。頭を潰された巨大エイは、それでドロップ品に変わった。そうしている間にも残りが復帰してきている。
「
手近な敵からMPを吸収しつつ、銛の攻撃と水撃を徒手空拳で迎撃する。
……っ!銛は受けても大丈夫だが、水撃は中々の衝撃。特別ダメージはなさそうだが、直撃したらバランスを崩すぐらいはするな。
敵のステータスは高く見つかってもALL100に届かないだろう。スキルを使えば圧倒できるし、直撃を受けてもダメージに成らないだろうが、それでも気は抜けないか。特に海戦は、最悪海に落とされたら死ねる。
突き出された銛をはじいて腹に一撃、前のめりになったサハギンの顔面にアッパーで跳ね上げてハイキック。この3コンボで向かってきた1匹を撃破。残り4。
自分の手に切れ味強化を発動。フライ・マンタの尾を切りつける形で迎撃。……さすがに尾がちぎれたりはしない。
問題はここから。
これで上のサハギンが落ちる。
そのサハギンライダーに拳を突き立てると同時に魔術発動。
吹き飛ばされたサハギンライダーはドロップに変わる。まず一つ。拳からバレットを討つのは可能だな。バーバラさんの飛翔拳のようなもんだ。
やはりモーションに合わせて撃つ方が発動が早い。練習した甲斐があるな。
「さて次は……」
丁度こちらに向けて突っ込んでくるフライ・マンタが居る。
ガントレットを収納。これで肘から先は何も防具を付けていない状態。
すれ違いざまに降りぬくとジュッと水が蒸発する音と共に、魔物の肉が焼ける。斬撃と言うよりは熱攻撃だな。
焼かれたフライ・マンタはそのまま落ちて、しばらく氷の上を跳ね回ってから死んだ。
炎症によるスリップダメージ化入ったようだ。
残り2、先に来るのはフライ・マンタなので、
魔術にエンチャントが乗るかは不明。発動はしている。
水撃を放ちながら突進してくる巨大エイを迎え撃つ。
「せいっ!」
上部から振り下ろした手刀自体は当たっては居ない。しかし炎剣はエイの巨体を腹まで引き裂き、一撃のもとにドロップへと姿を変えた。
威力は上がっている気がする。
まぁ、これは良いか。もともとおためしのつもりだ。炎剣を消してガントレットを戻す。
向かってくる最後のサハギンは、スキルの乗った銛を避けて拳で……と思ったらいいのを一発貰った。
鎧で完全に防げたものの、当ったのは右胸だ。防御が突破されて居たら普通に死ねる。
とりあえず、今度は拳に
さてお次は……
ハリセンボンのような魚で、陸地では刺を立てて膨らんだウニのような形状になって襲ってくる。直径が1メートル以上あってでかい。殴れないし毒もあって面倒なので、進行路上に
さて次は……
幸いにして氷の上に影が落ちている。
「メザシにでもなってろ。
影から伸びた漆黒の針が、氷上を飛ぶ
確実に仕留められる分、広域魔術より雑魚殲滅向きで使い勝手がいいな。
「おっと、でかいのが上がってきた!」
既に射程内なので
コイツなら一番試したかった技がたぶんできる。
「
その数、半秒で4発。すべてヒットに合わせて
【これでっ!】
5発目は渾身の正拳突き。手が届く距離ではない。
そのモーションに合わせて
「やった!」
今のはこれまでのスキル発動より明らかに早い。
それがモーションに合わせて反射で発動させる方法だと、1秒以下に縮める事が出来た。実戦で使うなら、こういう技術はあったほうが良い。
近接職のスキル発動方法を習って、バーバラさんと特訓した甲斐があった。
「ドロップ回収。さて次は?」
大きいのが一斉に攻めて来るようなことは無いようだ。
またサハギン達が上がってきている。3人は大丈夫そうだし、片付けてしまおう。
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