大陸に轟く冒険者
第199話 久々の冒険者ギルド
フォレス皇国の山間に存在した邪教徒の隠れ里。
そこで何も捕獲できないという大敗を喫してから早3週間ちょっと。
俺たちは東群島の西の一国、ライリー皇国の首都に立ち寄っていた。半分は油を売っている状態である。
「……掲示依頼は相変わらずだなぁ」
場所は冒険者ギルド。
張り出されている――文字が読める人専用の依頼と掲示連絡――を覗いてみたものの、数日前と大きな違いはない。相変わらず、船は欠航したままのようだ。
フォレス皇国での事件を片付けた後、事後処理のゴタゴタに巻き込まれまいと、ミャケからラーファ皇国へ向かう船の甲板から『うらぎりもの~』と叫ぶアケチ氏に見送られたのが3週間前。
ここ数日は天候不順で、3日に1度しか船が出ずライリー皇国カーシマに着いたのが2週間ちょい前。
そこからリャノ、クーロンへの船が出ている港町ミスイまで来たところ、天候と魔物で見事に足止めをくらった。
長距離船は魔物の討伐まで運休中。
短距離もこの時期にしては珍しく海が荒れていて、さらに航路に魔物が出始めているから調査中と来ている。
「姉さんたちの装備がそろそろだろ? 受け取ったらミスイに行って、少しでも魔物狩ろうぜ」
一応、首都でタリアとバーバラさんの新装備をオーダーした。
人造魔鉄を提供し、魔蚕のシルクをメインにしてステータス参照の服をオーダーしたのは10日ほど前だ。古着屋で漁った服と布をサンプルにデザインと機能性に拘った逸品に成っているはずなので、
「妥当なところではあるんだけど、それでどうにかなるかな。根本解決を狙いたいし、魔物が増えた理由が分かればいいんだけど……っと、これは?」
「……天露草……天然物の株の採取、もしくは植物系魔物からのドロップ回収」
「正解」
余り期待できない掲示依頼を眺めているのは、文字を覚えつつあるアーニャの訓練を兼ねてだ。
ギルドで使われる用語位なら一通り読めるようになって来ている。足し算引き算も二桁くらいは暗算で行ける。九九と割り算の暗算はまだ道半ばだ。
今日はタリアは宿の厨房を借りて料理、バーバラさんは朝から図面と格闘している。
タリアは変わらずだが、バーバラさんはこの三週間でいくつかの1次職を習得した。
まず試しに
タリアは精霊使いだと料理人のスキルが使えない。この差は何だろう?パッと思いつくのは専門2次職があるか否か。料理人には、料理長または菓子職人という2次職が存在する。
そんなわけで、バーバラさんは持てるスキルを使って、メルカバーの改良案作成に精を出している。
目下の目標は陸上での安全な速度向上、次が海を渡る方法の検討だ。せっかくやる気になっているのだから、とりあえず任せてみるつもりで居る。
まあ、なので俺は自分とアーニャの訓練に集中出来るわけだ。
「なぁ、こいつは何だ?鑑定?」
「ん?……正体不明アイテムの鑑定?」
アーニャの指さした掲示は、ここ数日で張られた物のようだった。
鑑定……冒険者ギルドでこういうのがでるのは珍しいな。商人ギルドなら分かるのだが……。
「ワタルの集合知なら、何か分かるんじゃないか?」
「そうだね、……あんまり他人の仕事を奪う真似はしないつもりで居るんだけど、ちょっと話を聞いてみようか」
ざっくり依頼を見る。魔物のドロップ品で正体不明の物品があり、魔物の強さから数百Gくらいの価値があると思われるが、使い方等も不明。海外の物品の可能性あり、詳しい人求む。
発行者は冒険者ギルドに成っている。
受付に行くと、奥の応接スペースに通してくれた。
どうも正体不明のドロップ品は何種類かあるらしい。ギルドの登録ランク3だと、この辺の話は早くていいな。
「正体不明のドロップは複数ありますが、まずは数が多い2点をお持ちしました」
物品管理を行っている獣人の男性が持ってきたのは、三角錐型の金属片と、厚さ数ミリの木の板だった。
三角錐型の金属片は小指第一関節分くらいの大きさ、表面には錆が浮いる。木の板は古い文字が記載されていて、大きさはトレーディングカードほどのサイズだ。
「どちらも魔力が込められている事は分かって居ますが、正体がわかりません」
……なんかどっかで見たことある組み合わせだな。
「ワタルが作った木札に似てるな」
アーニャも気づいたらしい。
封魔弾以外のエンチャントアイテムとして最近作成した
「なんて書いてあるかは……よめねぇな」
「古い文字だね。まだ世界の言葉が、神の声に統一される前の古代文字……文字は分かるけど、文は殆ど分からないな」
手元にある木札は掠れてしまっていて読み取ることが出来ない。
「手元にあるドロップはこれ一つですか?」
「いえ、他にもありますよ。魔力反応がない物もあります。おそらく魔力の反応がある物が価値があると見込まれています」
「なら、木札の方あるだけ持ってきてください」
木札は結構な量があった。ほとんどは壊れて魔力が無くなっている物のようだったが、どうも10枚くらいを一組としているらしい。細い麻ひもで縛られている物もいくつかある。
纏まっている物の真ん中は、文字がかすれていない。多分魔力が残っているのもそう言う物だったのだろう。
「ん~……手書き文字の解読は難解だな」
言語は……大陸の方で使われていた古代語、クーロンの方の言葉だな。
集合知を参照しているが、意味が取れない。今の時代だと、この文字を調べずに読める人が居ないという事なのだろう。
単語くらいは何とかならんかと思うが、手書き文字の所為で解読が厳しい。
「書き起こしてみないと分からないか」
単語の区切りが分からない。ついでにいくつか候補がある文字も分けて……集合知で分かる範囲の組み合わせの単語とは限らないか?
「……これは……盾か?」
表音文字で表されて居るから、まだ解読は何とかなる。
木札にはパターンがあって、木札の説明が書かれているっぽい。この最後の音が
「……
その瞬間、木札に込められた魔力が解放され、目の前に盾が発生する。
「これは!」
「これ、封魔弾と同じものだな……」
魔力の残っていた他の木札に付与解除を使うと、普通に魔術を打ち消すことが出来る。
やっぱり。これ昔に作られた封印付与アイテムだ。
木札に書かれているのは、おそらく作成者の名前、魔術の種類、INTの値、発動の仕方とキーワードなど。
三角錐の方も使い方が同じだとするなら、こっちはぶつけて使うタイプの攻撃アイテムか。
まだ
……さて、なんて説明したものかな。
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