第195話 隠れ里の攻防
「なんだこいつら!」
「気をつけろ!強いぞ!」
襲い掛かって来るキメラゾンビたちと、フォレス侍集団の戦闘が開始された。
その数11体。獣の死体が混ざった者、複数人の死体を混ぜた者など様々だが、間違いなく一様に手練れである。
初手で切りかかった前衛二次職の数人があっさり迎撃された。
『こいつら複数人を一人にまとめてます!スキルは全員分使ってくるし、ステータスも高いです!ついでに、首をはねても死にません!』
『ぬぅ!承知した!』
飛んできた斬撃を盾で防ぎ、プルートと名乗った男に向けて
ああ、防がれた!
「……さすが
敵の矢と魔術がこちらに向かって降り注ぐ。
くそっ!一発貰った!鎧で防げるけど、この状況はまずい!
『後ろの術者を無力化できませんか!?』
『術師たち、やってみるのである!』
後方の魔術師たちから状態異常魔術が飛ぶ。
それに合わせて俺も
「無駄ですよ」
プルートの嘲笑が見える。
ダメか!魔術が敵の周囲に到達した時点で、魔力の流れがかき消された。
タリアの
魔術の妨害には魔力収束量が大きく影響する。
広範囲に影響を与える魔術ほど打ち消しやすく、逆に
中級魔術の
だからあそこから動かない。
「だったらこっちも力を押しで行くか」
キメラゾンビの攻撃を避けて、
これで1体は多分ステータスだけの存在になった。さて次は……
「そして、
「なっ!?」
地面が吸い上げられるように盛り上がり、土塊の巨人を生成する。
高さ約10メートル、重さは優に1000トンを超える質量兵器だ!
「薙ぎ払え!」
クレイゴーレムの横凪の一撃。そうそう倒せないと思ったが、うまくかわされた。
それでも戦線の一部は切り崩したぞ。
『今のうちにゾンビどもの始末を』
『すまぬ!集中攻撃で数を削れ!』
村からの援護が途切れたキメラゾンビたちに、兵士たちのスキルが集中する。
倒したところで次が来ると思われるので、手近な遺体は奴のスキル範囲外に転送してしまおう。
『アルタイルさん!戦闘要員を投入してください!ソンビ撃破のフォローを!っ!?』
その瞬間、突然真横に現れた魔力反応に、とっさに盾を構えて避けるように飛ぶ。
ガギンッ!振りぬかれた剣は火花を飛び散らせながら、盾に浅い傷をつける。
「な!受けられた!?」
「吹き飛べ!」
「!?」
高速移動スキルで現れた男に
「おのれ!キサマ、ただの魔術師ではないな!」
「答える義理は無いね!」
ギリギリのところで高速スキルで躱したか。
左肩のアーマーがひしゃげて、腕がだらりと落ちている。どうやらカスる位はしたらしいな。
こっちもステータス参照している盾にがっつりダメージが入っている。
まともに斬られたら、鎧の上からでもダメージ受けかねない!
「死ね!」
「ごめんだね!」
踏み込みの一撃を盾で受け流すが……早い!しかもスキル!
受けた瞬間、次の一撃を剣で弾く。っ!三発目!?
ステータス任せにすくい上げの一撃に盾を割り込ませた。体が浮く!防御力は足りているが、俺の重さが足りねぇ!
半分吹き飛ばされながら、3歩分の距離が開く。
早い!重い!最低でも2次職後半、物理限界を突破した前衛! 打てる手立てが少ない!
それと同時に
いきなり目の前に現れた人形に、反射的に切りかかるの選んだな!
剣は身体に食い込んでいる!フェイス、オープン!
「何!?」
フェイスレスの断面がせり上がり、中に隠された魔結晶に回路が繋がる。
すまん!死ね!
「十連
永続付与された結晶から放たれた一撃が、前方数十メートルを吹き飛ばした。
………………
…………
……
□隠れ里の中□
「
地面を吸収して見上げるほどの巨人が現れた時、プルートは相対する敵に初めて畏怖を感じた。
「薙ぎ払え!」
『これは行けません、みんな回避を!』
前のめりに振るわれた巨大な腕が、近くにあった小屋を巻き込んで辺りをなぎ倒す。
『でけぇでくの坊なんて的だぜ!』
『近づくな!そいつ自爆するぞ!』
仲間の狂戦士が斧を振り上げて突っ込んでいくのを、式紙使いの男が止める。
『どういうことです?』
『でかい人形だ!そう言うスキルがある!』
『では遠距離から解体ですね』
「
プルートは対抗魔術を放つが、それは身体の一部を土に戻して崩れさせただけに終わる。
INTの差がありすぎて、魔術を打ち消し切れないのだ。
『これは本当に行けません!全員、撤収の準備を早急に!村長!……っ!別動隊!?』
その時、村の反対側から3つの魔力反応が迫るのに気づいた。
戦場から最も離れた位置、用心であるウェインと言う少年と、彼を説得しているサラサという少女が居る屋敷のすぐ裏である。
人質救出も想定されていましたか……これは相手の方が上手ですね。
一人で戦況を左右できる能力は3次職に相当する。2次職までの広域スキルであれば精霊魔術で被害を抑えられるが、そこにこんな力業をぶつけられては溜まったものではない。
『サラサ、説得はうまく行きましたか?』
『もうちょっとです』
『急ぎなさい。そちらにも敵が来ています』
合成亡者たちによって敵兵力は抑えられているが、この土人形が転がるだけでこちらの戦力も崩壊だ。
まともな戦いになりはしない。
しかも死体がどんどんスキル範囲外に転送されている。今の合成亡者が倒れたら、戦力の補充が利かない。
相手は数十人の亡者を操っているのが分かる。
数で圧倒する戦術のはずが、数的に圧倒的に不利な状況に追い込まれていた。
『術者を倒せばよかろう!』
『ソウゲツ!私と同じと思っては死にますよ!』
付与魔術師と人形遣いを取った後の
魔力の反応から、仲間が敵に切り込んでいくのが分かる。
ゾンビの捜査、サーチによる戦況の把握、それに目の前のゴーレムの相手で手一杯だ。
『ヴァイスァヴァルト殿、何とかなりませんか!?』
『……片足だけなら何とかしよう』
精霊魔術の詠唱が始まる。
地面から競りあがった複数の石柱が、土人形の片足を壊し、その身を地面にたたきつける。
「よし、これで態勢を立て直せ」
そう思った矢先、今度は爆音を立てて残っていた壁が吹き飛び、それは地面を引き裂いて村の反対側のまで到達した。
『!プルート様!ソウゲツが!』
『ええええ、分かってますよ!』
「影と共に、
何の魔術か知らないが、直撃を逃れたソウゲツの身体はボロボロだった。
左腕は肩の根元から吹き飛び、露出していた部分は余波でずたずたに引き裂かれている。
それでもまだ生きていた。それを
ついでに何人か余波に巻き込まれた者も回収し、この際兵力をあの
『……勧誘成功しました!』
彼にとっての吉報が、そしてワタルにとっての凶報が、わずかな差を持って伝えられたのだった。
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