第155話 報酬に中級魔術を教えてもらった
ウォール守備兵隊が魔物を捕まえ、穴に落として強化し、それを倒す。
その作業を延々と繰り返す事半日。30人ほどの治癒師が50レベルに到達し、さらに20人ほどの領兵が各々の職を50に到達させた。
「いやぁ、早いですねぇ」
勇猛果敢なウォールの領兵なら、MPが無い最初の一回以外は差し棒を使ったレベル上げで十分対応できる。
これによりINT700相当の封魔弾が節約でき、俺がやるべきことはあまりない。
「小隊に1人、治癒師を入れるとして、必要な人数は何人です?」
「およそ400~500だな。こう簡単にレベルが上がるなら、予備兵は必要な状況に応じて転職すればよい。応用が利く。すばらしいな」
俺たち三人とシルド団長は、いつも通りに並べたテーブルについてお茶を楽しんでいる。
いやぁ、勝手に生長してくれるのは楽だわ。
「
「うむ。問題無いと思われる。難民からも募集しよう。合わせて100人もいれば十分か?」
「おそらくは」
「では、兵とその親族知人、それに難民の中から募集しておこう。あとは賢者には
「ええ。製法を秘匿しているわけじゃ無いですからね。高INTの物は私にしか作れませんし」
「ああ、正直あるだけ欲しいところだからな」
この街に来てから、MPは暖房機や封魔弾の作成くらいにしか使っていない。
MP回復をブートするディアナの首飾りのおかげで、使えるMPは潤沢にある。宿代も飯代もウォール辺境伯持ちなので、懐は温まるばかりだ。
商会の設立や、装軌車両の作成などで結構使ったのだが、あっという間に増えていく。次は何をしようかね。
「ご報告いたします」
街から走ってきた兵士が、団長殿に声を掛ける。
「このままでよい。話せ」
「は!西門側に魔物の集団およそ300が襲撃を仕掛けました。西門守備兵団にてこれを撃退。みな軽症ですが、けが人が出ております」
「分かった。新米
「おおよそ300G級、指揮官が500G級と思われます」
「平常通りだな。ではいつも通り対処せよ」
「は!」
魔物の活動が活発な国境だけあって、この規模の襲撃はしょっちゅうらしい。
周囲の村にも常時100人、200人の守備兵団が滞在しており、こういった襲撃を撃退している。
1000体を超える魔物の襲撃も年に何度かあるらしいので、アインスがどれだけ平和だったか分かるね。
「シルド団長殿、よろしいでしょうか。こちらの兵は一対一だとどの程度の魔物まで相手に出来るのでしょう?王都ではレベル40代の1次職で100Gちょっとは倒せるようになる、と見立てていますが、さきの報告の魔物の強さを考えると1次職には荷が重いように感じます」
兵たちの動きに疑問を持ったのか、めずらしくバーバラさんが疑問を口にした。
「ふむ。ドッド殿は王国騎士であったな。……魔物との戦いは経験と相性が大きい。1次職100Gはもともと冒険者ギルドが提唱した考えだ。我が領兵だと、一人前となる経験年数3年、40レベル台の前衛職なら、150Gから200Gの魔物は単独で安定的に処理できるであろうな」
「倍近くの価値の魔物をですか」
「この辺りは経験の差が大きい。1次職でも経験年数が長い2職目の者、さらに2次職の者なら、もっとレベルの高い魔物も倒すことが可能だ。ただ、危険もある。そもそも前衛職は『倒されない事』と心中に据えて戦う。前衛が倒れれば、無防備な後衛はやられるだけだからな。逆に魔術師などの後衛職は、格上の魔物を的確に仕留めるための術を学び実践する。一人では100Gしか無理でも、二人いれば500Gが倒せるようになる。ならば一人で撃破できることは、それほど重要ではない」
出来るだけ安全に魔物を狩るという思想は、冒険者も領兵もそう変わらない。
「なるほど。兵同士の連携が重要という事ですね」
「うむ。そして連携には、普段から一緒に行動し、訓練をしっかり行うことが重要だ。……そう言う意味では、このただただレベルを上げる、と言う行為は、あまり褒められたものでは無いのだ」
「そうですね。冒険者ギルドも、その方針で一致しています」
バーバラさんは昨日格闘家をレベル50にしたので、今朝から2次職の魔拳士に転職している。
しかし、2次職になったからと言っていきなり強くなるわけでも無いので、このウォールの兵たちの強さに興味を持ったのだろう。
「さて、のんびりしていても時間がもったいないので、報酬をいただきましょうか」
2次職になることで、中級魔術の詠唱魔術を使うことが出来るようになっている。
復唱法で覚えられるので、ウォール領兵の魔術師系2次職や賢者から、幾つかの詠唱魔術を教えてもらう事を報酬の一つにしたのだ。
「それでは魔術師たちを呼んでおこう。ここは大丈夫そうなので、私はそろそろ戻る。書類仕事が多くてかなわんが、少し手も片さねばならんのでな」
シルド団長は、武官としてはかなりまじめな方なようだ。
お茶を飲み干すと兵たちに声をかけ、街へと帰っていった。
それから、領兵の魔術師たちに復唱法で魔術を教えてもらう。
教えてもらった魔術は10種類を超える。
更にこのほかに1次職の魔術で覚えていなかったジャベリン系――これはアロー系とランス系の中間で射程も威力もそれなり――と、
ガンガン覚えていく様子に驚かれたがまあいいだろう。
これでまた打てる手が増えた。
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