閑話 彼の人らからの手紙

しばらくギルドへ行けない日がつつき、久しぶりに顔を出したその日、ワタル・リターナー宛に手紙が来ているとの連絡を受けた。

ふむ。エトさん達か、ロバートさん達かな?


受け取った手紙は3通。どれもギルドで使われている簡易な封筒だ。さて?


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親愛なるワタル・リターナー様へ。


お久しぶりです。

グローブさんが筆不精なので、二人分まとめて私が筆を取ることにしました。

噂では王都でもご健在だと聞いておりますが、その後お変わりありませんでしょうか。


件の襲撃以降、アインス周辺はでは平和な日々が続いています。

最近は封魔弾や封魔矢がギルドに出回るようになっていて、この間の襲撃の残党狩りもだいぶ進んだようです。


私たちは相変わらずアインスを中心に稼ぎとレベル上げをしています。

グローブさんがリリーナさんを見事PTに勧誘してきたため、斥候一人に魔術師二人と言うちょっと不思議な感じですが。最近、領兵のロバートさんと言う方が訪ねてきて、休みの日には共に狩りに出るようになりました。


さて、出立の際に頂いたエンチャントアイテムについて、レビューを返したいと思います。


まず、私に送ってくださった短剣ですが、こちらは便利に使わせていただいています。

ステータス加算の恩恵は1次職ではかなり大きいですね。AGIとDEXが上がるので、防御は盾よりも安定しました。物理攻撃にも使えるので、利き手に持って使っています。INTが上がって魔術の威力も高まるのも助かります。


不足があるとすれば、STRが上がらない点でしょうか。

防御に使うにしても攻撃に使うにしても、AGIよりSTRを上げたほうが効果的かも知れません。AGIが上がると走る速さなどは早くなりますが、それに比べて腕の振りなどの速度はそこまで増えないようです。

1次職の魔術師が使うなら、STR、DEX、INTの組み合わせの方が汎用性は高そうです。

逃げる時にはAGIが有効ですが、今のところその恩恵にはあずかって居ません。

あと、魔術師はSTRよりAGIの方がバフが容易いのも、そう思う理由かもしれませんね。


グローブさんはファルシオンを愛用していります。

シンプルで使いやすく、鉈としても使えるのでありがたいとのことです。ただ、推定価値が高すぎて怖いとぼやいています。二本剣を持つのはさすがにちょっと重いので、スモールソードはリリーナさんが使っています。


そのリリーナさんですが、私と同じく魔術師としての取所については疑念を感じているようです。

自らの魔術を使うより、エンチャント装備を使って殴ったほうが強いなら、MP効率くらいしかメリットが無いと。まあ、封魔弾を使うと同じことを感じます。

使い勝手は良いですが、あの性能なら、もうちゃんとした武器じゃなくても良いかも知れない事です。凄く軽い金属の棒とかに付与するのでも良いかも知れません。


この手紙を書いている時点で、グローブさんはレベル41、私は38まで上がりました。リリーナさんも35まで上がっています。

魔物が減ったので、西側の山地へのルートの開拓を検討しているという話を、ロバートさんから伺いました。稼ぎもよさそうなので、挑戦しようかと相談しています。


もしアインスに来ることが有りましたら、また一緒に仕事が出来れば幸いです。


エト・マクドゥガル

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……エトさんの家名、マクドゥガルって言うのか。なんか商家でヒットするな。

王都にも支店を出しているっぽい。そう言えば実家は商人だと言っていた気がするし、聞いておけばよかった。


それはさておき、エンチャントアイテムは役に立ってるようで何より。

凄く軽い金属の棒……差し棒がそれだな。自分の使うスキルでもないのにそこに行きつくとは、なかなかの観察眼。

そしてグローブさんとリリーナさんがねぇ……まあ、下種な勘繰りはよしましょう。彼彼女らギルド職員だし、親しくてもおかしくはない。


魔術師が使うならAGIよりSTRの方が良いかも知れない、か。そこは参考にさせてもらおう。

ええっと、次は?


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ワタル・リターナー殿


アインスに戻り、落ち着いたので筆を執らせていただく。

まずは先達の手土産に感謝する。頂いた腕輪3つは子爵への献上品とさせてもらった。既に領兵隊の備品として、行軍マーチの腕輪でのランニングは、既に領兵のトレーニングカリキュラムに組み込まれた。有効に活用されているのを報告させていただく。


頂いた装備だが、便利に使わせてもらっている。

帰りの道中で何度か魔物に遭遇したが、これまで以上に安全かつ迅速に倒すことが出来た。素晴らしいとしか言いようがない。

隊長の判断では武器自体の性能は2次職の装備に届かない、と言う話だったが、込められている魔術の効果には感心しておられた。武器は自分たちの物にしてよいとの事なので、これからも使わせてもらう。

代わりにさっさとレベルを上げろと言われているのがつらい所だ。


アインスに帰ってから、ふとワタル殿の料理が恋しくなることが有る。

料理人としてあの料理を広める気は無いだろうか?

また……もしよければ、少しだけでも正確なレシピを教えていただけないだろうか。アインスも食は豊かな方だと思っていたが、一度上を知ってしまうと普段の食事を楽しめぬものだ。


もしアインスに戻って来るなら、詰め所を訪ねてくれ。歓迎する。


リネック・レシア


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ワタル・リターナー殿


その後はお変わりありませんでしょうか。

無事アインスに帰着し、落ち着きましたことを報告させていただきます。


おそらくリネックも書いていると思いますが、いただきました装備の内、腕輪3つは隊の備品として共有、武器は個人で持つこととなりました。

この魔法剣の威力は素晴らしいですね。切れ味、耐久度共に申し分なく、込められた魔術が強力であり、街道に出るような魔物なら容易く蹴散らす事が出来ました。ありがとうございます。


アインスに戻った後すぐに、冒険者ギルドに伺いました。

ギルドで相談すると、名前を伺っていたグローブさんをリーダーとするパーティに参加させてもらえることとなり、この手紙を書くまでに2度ほど狩に出ましたが、兵と冒険者では戦い方も違い、勉強になることが多いです。

彼らから学ぶ代わりに、|行軍<マーチ>の定着方法を伝えましたが良かったでしょうか。

定着させるかは今のところ未知数です。何せ500キロ走るのは辛いですから。


隊長からは、いい武器を使っているのだから早くレベルを上げて2次職に成れとせっつかれていますが、このまま騎士に成って良いのか、悩みは尽きません。

また近況変わりましたら連絡させていただきます。アインスに戻られた際は、タリアさん共々、ぜひ詰所の方へお寄りください。歓迎させていただきます。


敬具


ロバート・フロス

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リネックさんとロバートさんからは一通で便箋2枚。

二人とも武器は使ってくれているようで何より。


……リネックさん、後半飯の話しかしてないな。ちょっとレシピを起こして送っておくか。


ロバートさんは職業について悩み中かな。

何処を目指したいのか、それをハッキリさせないと方向性も定まらない。レシピと一緒にアドバイスを送っておこう。


さて、最後の一通は?


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ワタルへ


時の素質は得られた。

10年一気に老けるのは、分かっていてもなかなか辛いな。これから時の迷宮に向かう。


ところで、ニンサルを出ようとしたところで魔術ギルドから謎の追手がかかった。

振り切ったんだが何があった?


バノッサ

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……バノッサさんの名前で復唱法広めました。

上手く逃げ切ってください。私は王都を離れます。


これでよし。一筆書いて送り返しておく。

なんとなく後で小言をもらいそうな気もしたので、きれいに忘れることにするのだった。

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