第99話 偽装をお願いしてみた
「ステータスを開示したときに他人に見せられる値じゃなくなっているんですが、どうにかできませんか?」
その日の午後、転職ついでに
『難儀。不可能ではないが仕様はどのように。あと、システムさんの呼称は止めて』
「相変わらず心読んでるじゃないですか?俺が声に出して語り掛ける意味あります?」
この加護、神様の声は他の人に聞こえないから、一人でブツブツ言ってるような感じなんだよね。
タリアが怪訝な顔をしてこちらを見ている。
『発生があったほうが受領が低コスト。問いかけとモノローグを分けて対話するのは面倒』
「本音が駄々洩れですね。まぁ、わかりました。それで仕様ですが?」
『貴殿の異能に関しては不明点も多い。こちらで対応できるのは表示だけ。どのような表示にする?低くし過ぎるのも問題があると考えられる』
なるほど。確かに見せた時のステータスがあまりに低いと微妙か。
「ん~……職級毎に上限値がありますよね。それに達していたら、その数値を表示って形で。あとはレベル99の恩恵もあるって言っておけば平気だと思うので」
『是。意識的に切り替えられるように対応する。INTは設定が無いが良いか?』
「致し方ないですね。アインスでもINTは600越えと話してしまっているので、それは開示します。HPとMPにも上限があればお願いします」
とりあえず、これで王都の研究機関から絡まれるリスクは減るだろう。
さらに
この職は魔素を含んだ素材からアイテムを作成するのに特化した職業だ。精霊魔術と同じく、過去の知識と自らの発想を組み合わせてアイテムを生み出すため集合知と相性が良い。
とりあえず永続付与用のミスリル粉末を自力で作成できるようになる所から始めて、思いつく物を作ってみよう。
「転職したならレベル上げかしら?」
「そうだね。タリアの精霊魔術士を50、俺の
幸いにしてMPはほぼ回復している。
溜まり切らないように封魔弾か封魔矢を作っているが、まだ1日の回復量よりMPが少ない。積極的に使っていくに越したことは無い。
ロバートさんは拠点決めに行っているので、今日は街の外なら大手を振ってとばりの杖が使える。
ちなみに外に出るとは伝えていない。
「冒険者ギルドに寄って求人を出す。引退を考えている治癒師系2次職、
「盛りだくさんね。日暮れまでに帰って来られる?」
「たぶんね」
錬金術師に転職したけど、レベルを上げないと使えるのはバノッサさんに教えてもらった
ギルドへ行って求人を出して、簡単な商談の申し込みを行い、軽食を取ってから街の外へ。
王都の門を東に抜けたのは、2時に成る直前。
クロノスのシンボルは時計で、王城の大時計塔は街のいたるところから確認できるのがありがたい。18時までに戻ってくれば問題なく入れるはず。
「しっかり
「そりゃ、今回はギルド章で出入りしてるからね」
逆にタリアは職業チェックだけだった。
チェックを行う役人と顔を合わせる人間を絞っているから、タリアがチェックされることは無い。
出入りの人数が多いので、手続きも記名だけで済む。
タリアの冒険者ギルド登録も済ませたほうが良いな。一人で動いてもらう可能性もある。
ギルドで聞いていた王都からほど近い森へ走り、そこから周囲に人の反応が無くなるまで奥へ進む。
そろそろ遅い時間に成り始めているから、帰っていく人が多いな。
少し奥まった広場で周りに冒険者らしき反応が無くなったので、穴を掘ってからとばりの杖を使う。
MP100を超えているので、3000Gの魔物をタリアが一回召喚。まず一体目を封魔弾を落として俺が倒す。
その跡は2回続けて自分で召喚して、タリアが倒す。これでタリアのレベルが50に到達した。
「作れる精霊魔術は25種類なのね」
「うん。そうらしい。どうする?定着目指してみる?」
「世界に名前が売れるのは嫌よ。エルフたちが頑張っているんでしょ?最低でもアナウンスが流れてからね」
俺がレベル50を超えてから流れたアナウンスは、魔術師、弓兵、武士、魔導士、神聖魔術師、方士、斧戦士ときている。精霊魔術士はまだ流れていない。
「51レベルまで何G分の経験値が必要かも調べたいんだけど、だいぶ先になりそうだな」
アナウンスの所為でこっそりレベル上げと行かない。
街に入るときにはチェックが入るから、職業がそのままだとバレるしなぁ。名前だけなら同姓同名で行けるだろうけど。
そこから更に4体の3000G級を召喚して、封魔弾で倒す。
これで
MPとしては、とばりの杖の召喚に500と、封魔弾の10発分200。トータルでも1日の回復量でおつりがくる。
「自然回復分を使えるように、何か職を取る?」
「その発想が頭おかしいと思うのよね」
「そうは言っても勿体ない。あとは精霊魔術を定着させるために、ずっと小精霊を呼び出しておくとかしか思いつかない」
契約済みの小精霊は、一緒にいる時間で定着させることができる。
それ以外の精霊魔術は、あくまでリソースと言う形なので定着の仕方が良く分からない。2次職の精霊使いになれば、小精霊と同じように一緒にいる時間で定着するのだけど、タリアの適性だと今は精霊使いにはなれないからな。
精霊との親交が増えれば精霊使い適性が生えそうだけど、こればかりはゆっくりやるしかない。
「MPを貯められるアイテムがあったりしないの?それを使って、ワタルが魔術を使えば、私のMPがお金に変わるわ」
「……その手があったか。再利用可能なMPタンクは作るのが辛いな。買おう。お金を出せば何とかなる」
錬金術師としてのスキルは足りているけど、技術と経験と時間がない。
錬金術のアイテムには、自力採取して専用の保存が必須な物がそれなりにある。この手にモノはほぼ流通しないから作るとなると手間だ。
MPタンクも1種類だけ、入手に手間のかかる素材がある。採取難易度は高くないけど、王都周辺だと手に入らない。
「とりあえずギルド、それから個人経営の錬金術師を訪ねてみるか。とりあえず、今日のレベル上げはこれまでなんで、減ったMPで石を拾って帰ろう」
「なんで石……」
「錬金素材にする」
錬金術師のスキルを使えば、石を各元素に分解して金属を取り出すことが可能だ。
INTとMPを使うので、その辺に落ちている石を使うのは効率が悪いのだが、そこはステータスの高さで補える。
日が傾き、17時を過ぎた所で王都の東門にたどり着いた。
入門の際になんで石を?と怪訝な顔をされたが、錬金術の素材です、と言ってごまかした。
700キロ越えの石材を詰め込んでいるのは、さすがに不審がられるからねぇ。
職人ギルドに行って、家の引き渡しを訊くと明日には大丈夫とのこと。
使い始めて構わないという話だったので、石材は庭に置かせてもらった。
さて、明日は何をしようかな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます