第84話 街道を駆け抜けた
経験値に成りそうな魔物の反応があれば、わき道にそれてロバートさんが倒して経験値を稼ぐ。
「……この剣は凄いですね」
ロバートさんが使っているのは、俺が予備で購入してあったバスタードソードだ。
適当に補助を掛けて突っ込むと、敵が2~3体いても数分で倒し切れる。防御行動をとらない獣系の魔物なら特に早い。
ロバートさん、やっぱり動きが良いな。剣術が身に沁みついている。
「いい感じですね。サクサク行きましょう」
30分走って、10分休憩がてら歩き、また30分走るを繰り返し、お昼になる前にはロバートさんが
「……聞いてはいましたが
「ある程度安定して走れるところだけですけどね」
スキルを使えるようになってから、ロバートさんの走る速度は格段に速くなった。
元の移動速度が早ければ早いほど速度が上がる。魔力は消費するものの、体力の消費は劇的に軽くなるのだ。
……魔術ならエンチャントすればいいじゃんと気づいたのは、昼飯を食べている最中だった。
「次の街でエンチャント素材があることを期待しましょう」
残念ながら手持ちの素材は使い切ったので、永続付与を使うためのアイテムが無い。
集合知で調べてわかったが、魔術には対象を他人に取れる魔術、自分にしか取れない魔術がある。
強化系と俗称される魔術で言うと
これら自分にしか対象を取れない魔術の付与は、
これを脱却できるのは今のところ永続付与だけだ。リユース封魔弾に魔力供給の制限が無いように、永続付与なら装備者を発動者として効果を得られる。
……集合知、調べるつもりが無ければ情報出てこないのはやっぱり使いづらいな。
しばらく一人だったから、他人を強化するのに制限があるとか気づかなかった。
こう考えると魔術は他者を強化出来て、スキルは出来ない、と考えるべきか?
魔術かスキルかの区分は人が後追いで決めた物だから、今魔術とされている術にも、本来はスキルと考えるべきがあるのかもな。
……これについては考えても仕方ないか。
タリアとロバートさんが
リネックさんにも
一番道が険しい所では、
やはり予定よりちょっと遅いけど、頑張れば日が暮れきる前に街にたどり着けるだろう。
「……少し先で魔物と街の方から来た行商人らしき一団が戦闘中です」
そう思っていると、リネックさんが警告を発する。
ロバートさんが
「大いなる光の神の聖名において、汝の傷を癒さん。
MPが怪しくなり始めていたタリアは、すでに俺に背負われている状態だった。
「……大丈夫、いけるわよ」
「リネックさん、距離は?」
「2回曲がった先、おそらく1.5キロほど。一団が劣勢だな。獣だが敵が10体ほどいるように見える。一団はおそらく3人」
それは同レベル程度でも辛いな。
「スピード上げましょう。タリア、見えたら後は自力で頼む。いったん止まるから鎧と剣を」
リネックさんの言う通り、2回曲がったところで少し先に何かが動くのが見えた。
木々のまばらな森を抜けるように続く会堂で、荷馬車が獣たちに囲まれていた。
タリアを下ろし、
着た状態から収納し、その状態で預けることでピッタリフィットする状態で即座に金属鎧が着られるという一種の裏技だ。今は鎧をタリアに預けているが、自分で持っていればさらに速い。
トリガーナッツで
敵は……一番魔力反応が強いのは300Gくらい。残りは100から200前後。それから森の中にも少し魔物の反応がある。
ぱっと見種類はばらばら……なんだろう。魔物は同種で群れることが多いのだが……。
さらに近づくとその理由が分かった。獣たちはどれもボロボロで、怪我をしているように見えた。なるほど、アンデット系か。
「冒険者です!加勢します!
近くにいたイノシシの魔物を吹き飛ばし、一段の中に切り込んでいく。
「気を付けて!マンティコアが指揮している!」
一番魔力の反応が高かったのはマンティコア・ゾンビ。人の顔をしたライオンのような獣で、目の前にいるこいつは大型犬くらいの大きさだ。
尾にサソリの毒針を持つものが一般的であるが、このゾンビはそれが無い。マンティコアは300G程度で出る魔物じゃないから、劣化版だな。
「グルルッ!ギャン!?」
こちらを警戒してうなり声をあげたマンティコアに向かって剣を振りぬいた。
それだけで魔物は避ける間もなく両断されて、即座にドロップに姿を変えた。
飛び掛かって来る片足隻眼の熊。
体中から嫌な臭いのする液体をまき散らしている。
「ばっちい!」
縦に振るった剣で、熊は真っ二つになって消えた。
「……嘘だろ?」
つぶやいたの荷馬車を守っていた冒険者だろう。
「えー、気持ち悪い!えい!」
ここ生きて3人も到着する。
タリアがメイスを振るうと、雷撃が発動して蜘蛛の魔物が吹き飛んだ。リネックさんの投げた短剣が狼型の魔物に突き刺さり、そこにロバートさんの追撃が決まると、こちらもドロップに変わる。
それで魔物の隊列が崩れ、逃げに切り替わった。
「逃がすわけがない。
捕縛魔術を連打。逃げようとする魔物たちを絡めとる。
ははは、あがいても無駄だ。君らの力では脱出できないし、消えるのもしばらくかかるぞ。
「レベルが欲しい人いますか?」
「ここでそれを聴くのはいくら何でも非常識では!?」
リネックさんからツッコミが入る。
でも、俺もタリアもこの程度の経験値は要らないし、というかレベルを上げる必要もない。
「そちらは?」
「え?あ……え?」
見た所、襲われていたのは軽装の前衛と魔術師、それに商人らしき男性の3人。
前衛の男性が怪我をしているようだったのでとりあえず
「……レベルが上がりました」
商人らしき男性は困惑した表情でつぶやく。
「お疲れ様でした。私たちは先を急ぐので。ドロップは倒した分だけいただきますね」
「え、あ……はい?」
「封魔弾とアース式治療術をよろしく!それでは!」
今日中に次の街まで入るのに、時間の余裕はないのだ。
ため息をついて着いて来る3人と共に、再度
こんな事をしていたから、後で街道を爆走する妖怪の類ではとのうわさを聞くことに成るのだが、まあそれは別の話。
努力の甲斐あって、門が閉まる前ギリギリで街にたどり着く事が出来た。
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