第74話 転職したら自動アップデートが実行された
「これが
筋骨隆々モリモリマッチョな像を見上げて、タリアは若干いやそうな顔をする。
「……贅沢言うつもりはないのだけど、もうちょっとこう……無いのかしら?」
「そんなこと俺に言われてもね。転職をつかさどる神の像は製作者の趣味だし」
転職を司る神殿はいろんな町にあるが、街によって神の像は結構違ったりする。
そもそも、神に決まった姿があるわけじゃあない。俺が出会った創造神らしきものの姿は分からないし、他の神様もどこかに降臨されたことが有るわけじゃ無い。
神と名乗る、魔物と敵対し人類を助けてくれる存在は居るが、その姿は不確かなままだ。なので今世界の宗教は、
神様にガチで怒られるので凄惨な宗教戦争とか起きないのは良いと思う。その代わり小競り合いは結構あるようで、SNS上で繰り広げられるファンクラブ同士の抗争みたいなのが数百年続いている。
「さっさと祈りをささげて、次に行こう」
「そうね。あまり見つめていたい感じはしないものね」
これから祈りをささげる神に対してわりかし失礼だな。それでよく聖女の資質とか巫女適性とか持っていられる。
タリアが祈りをささげると、さくっと転職が完了する。
一般職は素質とか気にしなくていいから早い。
「ワタルは何に転職するのよ?」
「とりあえず
「……なんでまた」
「方向性の模索。知識はあっても、スキルの使い勝手とかステータスと合わせてみないと分からないし」
戦士は初めの4職の一つ、様々な武器を使って戦う前衛の基本職だ。
神がこの世界に転職システムを授けた時、最初に作られたのが戦士・魔術師・治癒術師・斥候の4職。記録だと最初は最高レベルも50では無かったらしい。
その後
「戦士はステータス補正と、いろんな武器をうまく使うための加護が多い。俺は結局のところ魔物が居ない世界の一般人だから、どんなにステータスが高くても戦い方は二流以下だ。だから色々試してみる」
戦士は剣士や槍兵、弓兵などの派生元と言われる基本職だ。
1種の武器に特化した各職業に比べて、どんな武器でも使えるようになる加護やステータス補正が充実していて、代わりにアクティブスキルが少ないという特性を持つ。
獲物をとっかえひっかえする機会は多くないから、近年はあまり選ばれなくなっている職の一つでもある。
目標は35Lvで覚える修練理解というパッシブスキル。
これはトレーニングの際、自分が良い動きが出来たかを感覚的に分かるようになるというもの。もっと早く覚えろよと言う気もしないでも無いが、魔物と戦うためにステータスや武器知識の加護がこの前に詰まっているから仕方ないのかも知れない。
逆にそれ以外は魅力が少ない。加護として得られる剣術知識などは集合知で事足りる。ただ、剣士などだと覚えるスキルが剣修練理解なので、いろいろ試したいなら戦士が良い。
「んじゃ、さっさと祈りを捧げますか」
『……集合知がクロノス王国歴300年版に更新されました。以後、290年版は参照できなくなります』
転職すると同時に、天啓のメッセージが頭に響く。どうやらクレームをつけていた集合知が更新されたらしいが……。
「いや、そこは両方参照できるようにしてよ」
20年間で失われた知識があるかもしれないじゃないか。
「?どうしたの?」
「神様から天啓で、集合知が更新されたけど、古いのが参照できなくなった」
「……すぐクレーム入れられる神経が知れないわ」
そんなこと言われてもね。俺にはこの世界の神様を敬う理由は無いのだ。
『……リソース不足』
またそれか。
『個別アナウンスの撤回を求む。それで対応可能』
レベルが上がった際に響くアナウンスをなくせば、その分のリソースを集合知に回してくれるらしい。
悩むが……10年分の失われた知識を捨てるのはさすがにもったいない。
「じゃあ、代わりに集合知で分からないことを教えてくれるならそれで。レベル99はどの職でも同じ?上位職で差がある?」
『……51~99レベルでスキル・ステータス定着は変わらず。一律』
「ステータス上限はある?また、複数の職業でステータスをあげることで、1次職でもありえないステータスになると思うけど、それは?」
『物理限界値以上は上昇しない』
「俺は物理限界突破してる気がするけど?」
『異能の効果。人の言う物理限界を突破するのが2次職以降のスキル』
なるほど。つまり一定以上は1次職を取り続けてもステータスに恩恵は無いという事か。
『貴殿は既に1次職の限界を突破している。1次職のレベルアップ時のステータスボーナスは得られない』
……スキルはともかく、ステータスボーナスは意味が無いと。
まあ、戦士のステータスボーナスは+1とか+3とかだから良いか。どうせ比率としては小さい。
「おーけー、ありがとう。集合知は290版と300版でよろしく」
『是』
これでとりあえず集合知は新しいものを参照できる。
個別アナウンスもあった方が便利だが、どっちか選ぶなら集合知だろう。ステータスの上昇はもう気にしても無駄だし、戦闘中にスキルを確認しなきゃいけない事態には、そもそもならない様に動くべきだ。
「とりあえず交渉成立して、99レベルについて補足もらった」
タリアに聞いた話を伝えると呆れた顔をされた。
「それ、全世界でワタルしか知らない情報じゃ無い?貴重なんてもんじゃ無いわよ」
「元々聞かれたら答える予定だった情報しかくれてないと思うよ」
その内に物怖じしないやつが問いかけるだろう。
加護を持ってなくたって答えてくれる事もあるのだ。人間側が神を特別視し過ぎて自分を縛ってるだけで、ちゃんと問えば応えてくれる。
「これで明日からレベル上げかな。あ、タリアは復唱法で
素質とMPですぐに使えるのはそれくらい。覚えておいて損は無いから、練習してしまおう。
「そして明日から特訓の日々が始まるのね」
「ははっ、なに、心配することは無いよ。努力は必ず報われる」
その言葉に、彼女は今日一番嫌そうな顔をした。
酷いな。俺の大事な異能さまの名前なのに。
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