第65話 燃える平原
北側に抜けようとした召喚部隊を押し込めた後、各個撃破していた防衛隊は陣を整え始めた。
準備を始めてから20分ほど、すでに敵の陣形は思い通りの形に成りつつある。
「なんか、面白いように敵が意図通り動いてくれますね」
この20分で敵の陣形はこの観測拠点に集まりつつある。
「
魔術やそれを用いた戦術については、タームスさんに一日の長がある。
俺もスキルで知識は得られるけど、実用するのにはまだまだ経験が足らない。それに気づかなければ調べることすら出来ないから、集合知の運用がまだまだだな。
「MPは問題ないか?ポーションはもう在庫が厳しいが」
「問題ありません。魔術に必要な分は残っています」
ポーション貰った分は使って残り50ほど。これが終わったらほんとに撤退だ。
この20分で
それから
さらに自分を除いて、この作戦に参加する魔術師の杖やら指輪やらに
……いや、術者のINTに左右されず、永続付与ならステータス加算アイテムが装備個数制限なしで身に着けられるのはそりゃすごいよ。永続付与のコストが高すぎて、
「高INTは素晴らしいですね。こう考えると、詠唱魔術も出来ることが多い。特に大規模作戦には有効ですね」
「ああ、素質が無くても復唱法で習得期間を短縮できるなら、
「INT不足だと威力は出ないですけどね。覚えて損はないですね」
俺は気にしたことが無いが、各魔術にはベースとなるINT値があるから、それより低いと威力が減ってしまうのが難点だ。それでも覚えて損は無いだろう。
「……
「ああ、そうだな。よし、正面部隊を下がらせろ。出来るだけ自然にな!」
「……こういう作戦って大概失敗する印象なんですけど、どうですかね」
「ワタルさん、縁起でもない事言わないでくださいよ」
そうは言ってもね。
タームスさんが高レベルになると使えるようになる魔術に、
2次職高位の魔術師が出てくれば、密集して戦う危険性は格段に大きくなる。魔物もそれを理解しているからばらけた陣を引いていたわけで、高INTの魔術師が居ると推測できるであろうこの拠点に突っ込んでくるのは策があるのでは?という気もしなくもない。
……魔物だからね。あほなだけかもしれんが。
「どこまで倒せるか分からないが、どちらにせよ撤収だ。派手にやろう。結界を解くぞ!防壁を展開せよ!矢が来るぞ!」
攻撃のために結界が解かれると、こちらに向かって矢の雨が降り注ぐ。それが壁や強風によって弾かれて落ちる。相変わらず生きた心地がしない。
地鳴りのような足音とともに、土煙がこちらに向かってくる。
「前衛が来るぞ!防御準備!」
これまで前衛を抑えていた壁部隊が下がり、そこの魔物たちが群がって押し寄せる。これを抑えていたのか。
前衛は
「来たぞ!壁展開!」
副隊長の合図で
「矢を放て!」
「
皆放った矢を操作できるスキル持ちだ。発動条件を満たすために、魔物に当てるだけならわけはない。
「スキル準備!」
「風と炎の
隊長の合図に応じて詠唱を始める。俺の発動場所は一番奥だ。細かな調整をする必要はない。決められた距離に打ち込めばよい。
「荒れ狂う風に、偉大なる炎の神の祝福を与えん!」
「魔術部隊!発動」
「
その瞬間、戦場に炎と石のつむじ風が発生する。
発生した渦は全部で15個。一つが10メートルとか20メートルある渦がゆっくりと戦場を動き、魔物を巻き込みながら薙ぎ払っていく。
壁による抑え込みによって逃げる場所をなくした魔物たちが、焼かれ、飛来するつぶてによって倒されていく。
「2発目!行けるものは追加!」
隊長の合図に従って、MPがあるものは2つ目のつむじ風を発生させる。足りないものもMP消費が少なめな
多重魔術によって放たれた熱風はがここまで熱を伝えてくる。1次職のスキルの効果とは思えない。
俺はもう一発放つだけのMPが無い。だからと言って出来る事がもうないわけでもない。
両足に力を込めて飛び上がると、軽く3メートルほど飛び上がる。ステータス万歳!垂直ジャンプなら物理制限にも引っかかりにくい。
「
舞い上がる土煙と炎で見えない敵を、魔力の反応だけで打ち抜く。
目視で確認できないが反応が消える。直撃したらしい。これで
風が収まる。熱気はとどまらない。
土煙の中から、壁をたたく者たちが消えていく。
誰かが舞い上がった土煙を吹き飛ばしていく。
焼け付いた地の向こうに、撤退を始めたわずかな魔物たちが見えた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます