第59話 西門防衛隊に合流した
許可をもらってギルドの外に出ると、街の上空いたるところに
数が多くて、暗い路地でも普通に日暮れ時くらいの明るさがある。
人間側は夜戦のための暗視持ちなんてそう多くない。
夜を得意とする魔物も居るため、不意打ちを防ぐためにこうして街全体を明るくしているのだろう。
一番厄介なのが闇に紛れてさらわれる、盗まれるなので、それさえ防げれば大きな問題は回避できる。
「明るいから勘違いしそうになるが……どうした物かな」
戦線の様子を見に行くにしても、せめて盾くらいは欲しいが……鍛冶屋は開いていないだろう。
それに腹も減った。昼からろくに飯を食っていない。
ギルドに戻ると、西門と東門で炊き出しを行っているので、戦線に参加できるならそちらにと教えてもらう。装備もそちらで予備があれば借りられるかもしれないとのこと。
「ワタルさんなら、西門に向かってもらえますか?破城槌を排除するために、高い威力の封魔矢が必要です」
封魔弾の納品を担当してくれている職員が、すごい圧を掛けてきた。
エリュマントスが倒れて、戦線は少し南寄りになっているものの、相変わらず西は門への攻撃が続いているらしい。
南側はレベルの高い領兵と冒険者が協力して、ルサールカと戦っているようだ。状態異常耐性の無い俺に出番はない。
「わかりましたよ。現場とのつなぎをお願いしますね」
「ちょっと待ってください。……こちらをお持ちして、現場指揮の担当者に渡してください。おそらく、守備兵団の隊長級の方が指揮をしていると思います」
守備兵団長は東側、ギルド長は南側に出ているとのこと。わずかにいる騎士は領主の護衛。これは領主の館を急襲されて万が一に落ちた場合、街の防御が限りなく薄くなるから致し方ないか。
西門に向かう最中、空に向かっていくつもの光が飛んだ。闇夜に紛れて飛行能力のある魔物が侵入してくるのを迎撃しているようだ。
「すいません、ギルドでこちらを手伝えを案内されたのですが」
西門前の広場に行くと臨時の天幕が張られ、そこを人々が慌ただしく行きかっている。
何はともあれ飯だ、と炊き出しを除いてみたが並びすぎていてすぐにはありつけそうにない。
仕方ないので列を
「ん、ああ……これは隊長のところ行きだな。門の近くに旗が3本立っている天幕がある。入り口に兵が居るから同じように渡してくれ」
「配給をもらってからで良いですか?」
「……いや、隊長たちの分も含めてこっちで運ばせよう」
「それじゃあ、一足先に失礼します」
そんな話をしている間にも、配給の列には途絶えることなく人が並んでいく。こちら側だけでも数百人の兵士と冒険者が集まっているようだ。
広場を進むと教会の天幕も見える。軽いけがなら魔術で治るから軽症者は少ない。けれどさっきの俺のように、魔術で治りきらない重症の人は休むためのスペースが必要だ。
あそこがあふれる前に何とかしないと。
三本旗の天幕は円柱と三角錐を組み合わせたような形の、コテージ型テントだった。前の兵士に声を掛けると、すぐに中に通してくれる。
「ワタル・リターナーです。ギルドからこちらの協力をするようにとだけ聞いて来ました」
「おお、封魔シリーズの作者殿か。ありがたい。現在ここの指揮をしているトレマー、トレマー・ロッソだ。普段は街の警備兵団2番中隊長をしている」
アインスの常備兵は……10年前だと300人くらい、半分は農民兼業か。今はもっと増えてるかな。小隊は10名、中隊は100名くらいで運用されるから、大隊が無いであろうアインスでは兵団でナンバー3とか4とかの人だな。
「
「もちろんだ。あれは良いものだな。封印付与は錬金アイテムと比べてコストが安い。威力はマチマチだが、君の作ったものはとても評判が良い」
出回り始めてまだ半月くらいなんだけどな。そんなに広い街ではないが、それにしても上の方まで広がるのが早い。ギルド専売にした効果かな。
「限界更新おめでとう。無事に生きてこの難局を超えれば、領主様からお呼びもかかるだろうが……まずは目の前の戦況だ。封魔矢は作成可能か?クロスボウ用のボルトにランス系……できれば
「問題ありませんが、MPが足りないのでそこまで多くの数は作れませんよ」
残りのMPだと最大威力の付与は10発ちょっとしか作れない。
「状況が分からないので、説明いただければ他の打開策を提案できるかもしれません」
「ふむ……そうだな。食事はとったかな? そろそろ給仕が来るはずだから、食べながら話そう。その前に3発ほど弾が欲しい。最高品質と言われていた封魔矢と同等のものを頼みたいのだが、それくらいならいけるか?」
「問題ありません」
既に渡していた封魔矢と同等なら、魔力をブーストしなくても十分だ。
そして何より飯に行けるのがありがたい。結構お腹がすいていて辛い。
指定されたボルト3発に
さぁ、ご飯だ。
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