第58話 治療を受けつつ現状確認

「いた、痛いいたいイタイ!あぐっ、ぁぁぁあぁぁぁぁあぁ、げぼばぁ……」


「死なないのでそのまま我慢してください。すぐ治療を受けられてよかったですね」


アインスに帰還してから1時間以上。すでに外は暗くなり始めているだろうが、戦いは収まる様子はなく、ギルド内の慌ただしさはさらに大きくなっているように思える。

グローブさんは既にギルドを出た。過剰業務だが闇に紛れての威力偵察を行うらしい。

俺はと言えば『状態』欄が回復しないために呼んだルドルフさん……に連れてこられたアッテナ女史の治療を受けている真っ最中だ。


「ワタルさんのアース式治療術のおかげで、再生治癒リジェネレーションの精度も上がりました。今無理やり治癒ヒールで治したところを正しい内臓に戻しています。そのためにちょっと内臓が破壊されて痛いですけど、しばらく我慢してくださいね」


耐性無いの!めっちゃ痛いの!


何も考えられない痛みにのたうち回る事すら許されず、ひたすら耐え続けること10分ほど。

ある瞬間を境に徐々に痛みが小さくなっていく。


「……死ぬかと思った」


最初の段階でマジで血を吐いたんだが、これが治療?


「よし、後はゆっくり調整です。応急手当ができてよかったですね。症状から言って、回復無しなら数分で死んでる怪我だったとおもいますよ。一度体の中がべちゃってしている感じでしょうか」


どうやらだいぶ重症だったらしい。

応急手当ファーストエイド治癒ヒールでは完全に回復しきらない部位損傷のような形でダメージが入っており、それが軽傷と表示されていたようだ。どうもこのまま放置すると後遺症になるらしい。

怖いのであんまり調べたくない。


まだしばらくこのままらしいので、その間に収納空間インベントリの中を確認する。

エリュマントスとの戦いで全損したのは、古びた魔法剣、風のヒーターシールド、ラウンドシールドの3種。魔法剣は折れ、ヒーターシールドはひしゃげて使い物にならない。大地裂斬アース・ディヴァイダーを受けた木製ラウンドシールドの亀裂が入っている。封印解除後でなければ、封印付与シールの効果は失われていただろう。


盾の革鎧と風のガントレットも損傷が激しい。二つとも永続付与オーラが吹き飛ばされている。

無事だったのはひざあて、すねあて、それにブーツ一体の風のグリーブ。鉢がね入りの清浄なる盾のバンダナ。

着ていたインナーシャツとパンツの付与も消えている。それ以外の服も裂けてボロボロだ。

エンチャントが外れたのは、強い魔力の籠ったスキルを受けたせいだ。剛拳乱打と叫んでいたラッシュの影響だろうな。


「それの所為でチェインメイルとチェインレギンスが板に成ってる……」


これも全損扱いだろう。地金としてリサイクルに出して買いなおしが必要。

インベントリにしまっておいた服に着替えるとして、防具はほぼ使える物がない。被害総額がやばいな。エリュマントスの所持金は1万Gだったけど、現金収入的には赤字もいい所だ。


「そのほかは……ランス系は封魔弾が無い」


バレット系封魔弾は使わなかったので火、氷、雷が5発づつ。

納品余りの封魔矢はランス系が3つ。


聖闘拳セイクリッド・フィスト聖闘衣セイクリッド・クロストリガーナッツは残り2つづつ。魔力強化マナ・ブースト1つ、魔力探信マナ・サーチは1つ、鷹の目ホークアイは0、忍び足スニークは3つ。


治癒ヒール解毒キュア・ポイズンは、ナッツの方は2個と4個。遠距離回復用の治癒ヒール弾と解毒キュア・ポイズン弾は使ってないから10発つづ残っている。

束縛糸バインド弾は全部放り出した。毒霧ポイズン・ミスト弾は残り4と。

ダメだな、戦力になるアイテムがほぼ無い。戦線復帰よりアイテム供給の方がマシそうだ。


付与魔術師エンチャンターのレベルアップで覚えたスキルは、付与解除、二重付与、付与効率向上、二連付与の4種類。

戦闘に使えそうな追加攻撃魔術は、強風、魔矢、壁、雷剣の4種類。補助は1種のステータスを加算+10する呪文が7種と、全ステータスを1割上げる全強化Ⅰオールアップ・ワン

残りは職業固定ステータスボーナスと、ステータスにすら影響しない補助系魔術だ。


ん~……使えるようで使えないこの微妙さ。


「……はい、そろそろ大丈夫です」


アイテムとスキルをチェックしている間に、アッテナさんの治療が終わった。

ステータスの状態が健康に戻っている。


-------------------------------------------

名前:ワタル・リターナー

状態:健康(18)

職業:付与魔術師エンチャンター

レベル:99MAX(ボーナス:76)

HP:760

MP:169/1151(1182)


STR:239

VIT:313

INT:638

DEX:238

AGI:344

-------------------------------------------


付与魔術師エンチャンターのベースステータス加算値は、おそらく99LVで補正無しだと


HP:+250

MP:+400

STR:+8

VIT:+8

INT:+300

DEX:+9

AGI:+9


位になると思われるので、HP、MP、INT以外の上昇は謎の異能の所為だろう。

INTは2次職後半、MPは3次職の域に到達している。


ステータスだけ見れば強いが、HP、MP、INT以外は200を超えたあたりで物理限界に当たるはずなので、カタログスペックだけ高い状態だ。新しく覚えた全強化Ⅰオールアップ・ワンは元より、聖闘拳セイクリッド・フィストなども発動するだけ無駄なスキルになっている。INT上昇だけは意味あるかな?


「ありがとうございます。ステータスでも完治しているみたいです。助かりました」


「いえ……あまり無茶をしないでくださいね。ワタルさんにその気があれば、教会で治療術の研究を行ってもらうというのも可能なのですから」


「感謝しますが、まだやるべきことが有りますので。寄付はまた後程」


「お心遣い、ありがたくいただきます。他の方も見なければならないので、私はこれで戻りますね」


アッテナさんには治癒ヒール封魔弾をあるだけ渡しておく。これで手間を取らせた分の足しくらいにはなるだろう。

とりあえず、確認は一通り終えたけど、街の状況はどうなっているだろうか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る