第55話 収納空間ーインベントリー
このスキルは触れた物をそのままの状態を維持したまま、亜空間へ収納・取り出しを行う
この世界において、スキルと魔術の明確な区別は無い。その区分は人が後々定義した物であって、出所はどちらも同じ神の力であり、すべての魔術はスキルであり、すべてのスキルは魔術となる。
当然、
触れた物を
触れた物をすべて取り込む盾。もちろん、こいつはそんな便利なものじゃぁない。
所有者は人間を始めとした一定以上の知的生命体に限定されるが、他人の物は収納することが出来ない。この制限は絶対的で、スキルを司る神の視点があるらしい。
そして当然、生き物や魔物を収納することも当然出来ない。
この制約によって、他人が装備している武器防具や、魔物の一部である装備を収納して無力化すると言った事は不可能だ。投擲されたナイフや、放たれた矢を収納することは出来るかもしれないがちょっと怪しい。
この制約から、無敵の武具は一転役立たずになる。
……ある例外を除いては。
その例外も至極シンプルな話だ。
魔物は神が定めた【物】の所有者には成りえない。
魔物は知的ではあるが生物ではない。金の魔王の呪いによって具現化した存在。魔力を主な構成要素とするが、地球の言葉でいうならロボットとかアンドロイドとか、そう言った者としてとらえるのが良いだろう。つまり、平たく言うと奴らは物だ。
つまり魔物の装備出ない魔物の【持ち物】、についてだけ、
……ちょうど自分専用の武器を自慢げに振るうエリュマントスのような相手にだけ。
「
エリュマントスの渾身の一撃、
轟音が轟き、亀裂は優に100メートルを超えるだろう。背後にいた魔物が巻き込まれてドロップ品へと姿を変えていく。
「ぐぉぉぉぉぉっ!」
エリュマントスの叫びが木霊する。
ちっ、一撃で倒せなかったか!
エリュマントスのスキルは間違いなく自身の身体を2分割したが、それでもHPを削り切ることは出来なかったらしい。即座に剣を
「キサマ!何をしたぁぁぁぁぁっ!」
力なく伸ばされた腕を身をひねってよける。冷静な判断力を失っている今しかチャンスは無い。
「
エリュマントスの叫びを無視して、
「
再度エリュマントスの剣を取り出して強化して振り下ろす。振り回すだけならSTRを生かすことができる。
「ハエが止まるわっ!」
スキルを使ったエリュマントスには温い攻撃だろう。容易く防御されるが、それは予想通り。
一瞬だけ剣をしまい、防御の隙間に再度出現。速度の乗った剣はエリュマントスの深い毛を切り割き、肉に食い込む。予想外の一撃に大きく瞳が開かれた。
この剣ならダメージが通る!
『ワタル!無事か!?何があった!!』
グローブさんから
引けよ糞がっ!撤退ラインのHPは切ってるだろうっ!
「コロス!コロス!!コロス!!!剛拳乱打!!!!」
「!?」
咄嗟に盾を発動するが、そんな物無かったかのように拳の一つが直撃し跳ね飛ばされる。
ギリギリを保っていた
「しねぇっ!」
「お前が死ねっ!」
エリュマントスはステータスに任せて飛び込んでくる。もう何度も切り結ぶ余裕はない。
発動するのは
拳を振り上げたエリュマントスが目の前に迫る。避ける猶予はまずない。
だからそれを抱えるようにして叫ぶ。
「
エリュマントスの進路上に現れた剣は、相手の勢いを利用してその喉元に深々と貫いた。
「ぐげっ!?」
「うぉりゃぁぁぁ!」
突き刺さった剣を跳ね上げる。
それは顎を砕き、鼻を割り、イノシシのようなエリュマントスの頭部を真っ二つに切り割いた。
「ば……か……な……」
既に言葉を発する役割を果たさなくなった口から洩れる声に呼応するように、エリュマントスの身体が光の粒子となって消えていく。
延ばされた手は届かない。恨みがましい視線を向けながら、オークの将はドロップ品を残して消えた。
「……
最後の気力を振り絞って、安全地帯を発生させる。
きっつい、むちゃくちゃ痛ぇ……。
グローブさんたち……早く来てくれんかな。
『ワタル・リターナーが初めて
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