第44話 捕らわれの冒険者を解放した
「いやぁ、助かりました。このまま連れていかれたら、うっかり世界を滅ぼすところでしたよ。ハハハッ」
「冗談は良いから元気なら手伝ってください」
ホロ馬車に詰め込まれていたのは商人の一団と、凪の平原で活動している
「ありがとうございます」
「こっちの3人が商人さんの護衛?」
「トニー・ボルツマン、以前は
さっきからうめき声しか上げないのはそのせいか。
「……ボルツマンさん、馬車を止めるときに馬が逃げてしまっています。
「おっと、それは大変だ。様子を見てきましょう」
馬も結構な『価値のあるモノ』だ。生物は自然に魔物化したりしないが、他の魔物に捕まる前に回収してもらおう。
ボルツマンさんは荷台から飛び降りると、馬が逃げたほうに走っていった。
商人だから多分
「装備は奪われたか。治療を手伝ってもらえるかい?」
残った
「あの商人、襲われませんか?」
「どっちかっていうとこの馬車のほうが心配かな。やる気があるんなら外で警戒してもらっていいかい?これを。使い方はナッツと同じく、封印解除の詠唱をしてから投げつければいい」
……
「さて……口は動きますか?解毒の魔術を籠めたナッツです。何とかかみ砕いてください」
無理やりに口の中にナッツを突っ込んで咀嚼させる。かみ砕かれたナッツから魔術が発動して、すぐに呼吸が落ち着いてきた。
「
護衛の冒険者は俺より少し上暗いだろうか。3人組で男二人、女一人。武器や一部の防具は持ち去られたらしく職業は分からないが、一人は
リーダーらしき男は体つきから言って前衛。女の人は良く分からん。つーか薄着なので目のやり場に困る……っと、んなこと気にしてる場合じゃないか。
「……すまない」
回復魔術で症状が消えても、毒の痛みによって削られた失った体力までは戻らない。
それでもすぐに体を起こすと、仲間の様子を確認する。
「ワタル・リターナー、
「ウィリアム・ロジャース、
ローブを着た男性が長髪の男性がディランさん、赤茶けた短髪の女性がアンナさんらしい。
「あたしも大丈夫だけど……ダメだね。装備がない」
「俺も鎧と盾も持って行かれた。まともな戦闘は無理だな」
装備は多分アインス襲撃のための兵力にする為に持ち去られたのだろう。
その場で魔物を生み出せる
「装備なら
調査遠征の直前の襲撃でドロップしたダガーを
「おお、助かります」
「ありがとう。素手よりずっといいわ」
「いったん出ましょう。ここじゃ外の様子が分からないし、
このスキルは便利だけど1日8時間と言う制限があるから、いざと言うときにとために利用可能時間を残しておきたい。
外に出ると、ボルツマンさんは見える範囲には居ない。警戒に当たってくれている
「その辺に俺が倒した魔物のドロップが落ちてるはずだから回収してもらえるかな?さて、魔物に襲われたのはいつごろです?」
「朝一だ。早朝に街を出て、30分も経たない内に魔物の一団にぶつかった。王都へ向かう街道だ」
「……ずいぶん離れてますね。ここはアインスの東側ですよ」
「捕まってからずっと馬車に揺られていたからな。すまない、それ以上のところは分からないんだ」
街の西側から攻められた?そっちが本隊とも限らないな。
むしろ
「僕とライリーは凪の平原の北東で狩りをしていて捕まりました。昼になる前、街の方で煙が上がってるのが見えて、様子を見に戻ろうとしたところでした。その時には、あっちの二人や、そちらの方たちは既につかまっていました」
詳しく話を聞くと、どうもボルツマンさんの商隊が捕まった後、北回りでここまでやってきたらしい。
街は東側と西側から挟み撃ちにされているようだ。
装備が即座に持ち去られていることから、
街の防御はそう簡単に突破できるものではないが、状況はよくなさそうだな。
「……なあ、ワタルの仲間はどこだ?」
「俺は一人ですよ。調査遠征で一緒だった二人はまだたぶんあっちの山の中です。見晴らし台から煙が見えたんで、先行するためにまっすぐ降りてきたらちょうどぶつかったんです」
「……
アインス襲撃は確定。一旦戻るか?……いや、もう少し状況を確認したいな。
敵の一団には装備を魔物に変えられる
敵の拠点の目的地がこのルートなら、凪の平原で捕まった人たちを輸送している兵団が居てもつぶせる。
「俺はこのまま街の様子をうかがいに行きます。皆さんは近くの村に避難するのが良いでしょう」
「正気か?さすがに一人で行ってどうにかなる状況だとは思えないぞ」
「様子見ですよ。それに一人のほうが目立たなくて危険も少ない。……できれば北回りに進んで、俺の仲間との中継に入ってもらえるとありがたいです。ディックさん、魔術師ならそれなりに
「……わかった。何にせよ装備が無い俺たちに出来ることはそう無い。申し訳ないが避難させてもらおう」
「ええ。
「ああ、出来る限りの事はする」
ボルツマンさんが馬を連れて帰ってきたところで、近くの村へ避難する方針を告げた。
一緒に護衛をしてほしいと頼まれたが、そちらは丁重にお断りをさせてもらった。
「それより、商人なら
馬車では穀物を運んでいたらしいが、それ以外の物だって当然運んでいる。
思った通り数種類の武器と盾を持っていたので、そっちの方はそれで何とかなりそうだった。
再度襲われたら面倒見切れないが……封魔弾をいくつか渡しておけば大丈夫だろう。
頼まれて荷馬車の車輪を解体――
アインスはまだ遠い。
街が落ちて大量の魔物であふれかえっていないことを祈るばかりだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます