第27話 剣一本で戦ってみた
通っている経路は比較的初心者向け、モンスターが少ないため人気のない経路でもある。
索敵に引っかかるのは十数Gクラスのゴブリン、それに10G未満の鼠や虫と言った魔物。1次職の前半でもソロで戦える相手だ。ステータスだけなら1次職後半に届きつつある俺なら問題なくさばける。
そう頭ではわかっていても、なかなか心はついていかない。
「このっ!」
とびかかってきた大鼠の亜種を切り捨てて、一息。
「
サーチ範囲にモンスターが居ないことを確認して結界を張る。今日五度目。
通算では2時間くらい休んでいるだろうか。探索し、戦っている時間より休んでいる時間のほうが長い。
同格、それ以上を相手にするなら当たり前なのだが、格下ばかり相手にしているのに休みながらではなぁ……。
「……ステータス、オープン」
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名前:ワタル・リターナー
状態:健康(18)
職業:
レベル:4(ボーナス:12)
HP:22
MP:78/225(229)
STR:37
VIT:39
INT:108
DEX:23
AGI:38
ATK:34+20
DEF:3+15
スキル:魔力操作Lv2,魔力感知Lv1,
魔術:神聖,火,風,水,土,暗黒,無,雷,重,空間,時,対,召喚,付与,錬金(各Lv1)
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MPは残り三分の一まで減っているか。
ステータスは一番低いDEXでも23。初期からすると倍以上に成長している。このステータスでこの進み方はビビりと言われても仕方ないんだよなぁ。
代表的な1次職一つである剣士は後半でSTR、VITが50前後、DEXとAGIが40前後。
魔術師の場合、MPが300、INTが150前後で後は10代。
1次職の到達点はレベル50なので、レベル30~40ぐらいの剣士と魔術師を合わせたステータスを持っているのに、相手にしているのは
使える魔術がほとんど詠唱魔術のため見た目ほどのスペックは無いとはいえ、これで勇者だとか言ったら笑われるか。
詠唱魔術は発動までにどうしても数秒かかるので、実戦、特にソロでの使い勝手はいまいち。
防がれやすく、かわされやすく、カウンターや妨害もさせられやすい。パーティーを組んで同レベルまでなら使える。格上にはきついといった感じ。
俺の場合は格下にも奇襲の初撃位しか使えていない。
「
戦ってる相手は皆一刀両断なんだ。でも、それは反撃が怖くてオーバーキルを連発しているってだけ。
MPを温存し、本来は回復魔術を使いながら進むくらいでいいはずなんだけど……痛いのは嫌なんだよな。
ぶっちゃけ、この間マラソン中に転んだので懲りた。
「……バノッサさんにもうちょっと戦い方も聞いておくんだった」
あの人は魔術師系だから身を削るような戦い方はしたことないかもしれないけど……引率してもらっているときに、もうちょっと体を張った訓練を積むべきだったな。
……ギルドの訓練所で良いトレーナーさんに指導を頼むか。幸いにして所持金は1万Gを超えているし、何とかなるだろう。
「MP消費低減やMP回復上昇が欲しいなぁ。あと
どれも魔術師系のスキルだけど、
他の職業で覚えた所で定着に恐ろしいコストがかかるから意味が無い。
上級職になれば、その系統の1次職のスキルはそのまま使えるようになる。
当面の目標としている魔剣士は剣士と魔術師系の上級職なので、
その代わり、上位職でも系統外のスキルは定着していないと使えないので、例えば武道家や
定着していれば使えるので、日ごろの訓練とこなした実践数がモノを言う世界だ。
「当面目標になる
エンチャントできるもの制約は存在するけど緩いので、大量に作成した
このスタイルは流行ってもいいと思うんだけどなぁ。
そもそも
「何にせよレベルが足りん」
ステータスだけでどうにかなる程甘くない。スキルだけでもダメ。
俺がもらった素質なんて絵に描いた餅で、売って金にでも買えない限り腹の足しにもなりゃしない。
ここは地道に経験値を稼ぐしかないか。
40分ほど休憩して、MPが100を超えた所で探索を再開する。
戦闘はあと一回がいいとこ、稼ぎが微妙だけど切り上げるつもりでやる。できれば剣一本、少なくとも同格と一対一ならそれで倒したい。
「……近くに良い反応は無い。……これはほかのパーティーか?移動中……探索中かな。逆方向に行くか」
弱い魔物に会敵しないようルートを選びながら奥へ進む。
1次職クラスで1体、できれば正面から戦っておきたい。
そう考えながらしばらく進むと、少し反応の大きな魔物がサーチに引っかかった。……多分、100Gに届かないくらい。でも、一緒に小さいのがいる?
そう思った瞬間、小さい反応のほうが消える。
「……
魔物の中には仲間を殺してドロップを奪い、自分の力を強化しようとする個体がたまに出る。
こういった個体は面倒だ。倒しておかないと成長して強力なモンスターに変わりかねない。
幸い反応はまだ弱い。同格……やってみるか。
「
目標に向かって走りながら、防具に対して
普通は自身に掛けるが、それだと継続時間は数十秒。
エンチャントとして防具に掛けると、相手の攻撃が自分に当った時に軽減するように発動するようになり、その効果は今の俺でも数分継続する。その方が使い勝手がいい。
わざと足音は隠さない。向うがこっちに気づいた様子。サーチが気づかれていないから魔術師系ではない。
十数秒で視界にとらえた。
「ギギャ!!」
それは向こうも同じか。ゴブリン・ソードマン。長剣と盾、それに革鎧で武装した小柄な魔物。
中級には至らない、それでも直ちに命に影響のある相手だ。
「こんにちわ、死ねっ!!」
出会い頭に振り下ろした一撃は、しかしあっさりと避けられる。
「ゲギャ!」
相手の横凪の一撃は何とか盾で受けることができたけど、その威力に身がすくむ。まともに貰ったら骨の1本くらいは簡単に持って行かれそうだ。
盾で急所をかばいながらの突き。それは相手の盾であっさりいなされると同時に蹴りがわき腹に刺さった。
「ぐっ!」
威力としては大したことは無い。
「ギャゲッ!」
振り下ろしの一撃を剣で受ける。大丈夫、見えてる。そして軽い。やはりステータスはこちらの方が上だ。
「お返しっ!」
不格好な喧嘩蹴りを胴に叩き込むと、ゴブリンは数メートル転がった。
「死ねやくそがっ!」
飛び込むように振り下ろした剣は地面に突き刺さる。ゴブリンは転がってよけた。
くそっ!お前ゴブリンだろ!おとなしく死んどけ!
起き上がりざまの脛を狙った権勢は飛びのいてよけた。
こっちも向うも休む気は無い。踏み込む。振るわれるのは……盾!?
「わぺっ!?」
顔面に降りかかる土に思わず体が反応した。目つぶしとか!
思わず頭を守った腕。がら空きの胴に相手の長剣が叩き込まれて地面を転がる。
「いてぇ!」
そのまま転がる。追撃が来る。このままじゃタコ殴りだ。
肝が冷える。命が縮む。死ぬ。
……死ぬかボケが!
「投石!」
威力は乗ってない。それでも一瞬気がそれればいい。
「うぉら!」
剣を持った片手で体を跳ね上げると同時に蹴り。
「常人の3番倍のSTRなめんな!地球人じゃない動きできんだぞゴラァ!」
吹っ飛ばされたゴブリンはふらつく。ダメージは入っている。ならこのまま押し切る!
コンマ数秒のやり取りの世界で詠唱魔術は使えない。あくまで剣で倒す。
最小限の動きで繰り出した突きは剣でいなされ、相手の肩をかすめた。態勢は緩めない。
防具はこちらが有利。
「逃げんな!」
盾を掴んで頭突き。目が回るね!相手の足を踏みつけて逃さない。
ステータスが上がって体の反応が良くなっているからこそできる動き。剣の柄を側頭部に叩き込むと、醜悪な小鬼はふらついた。
足を放す。距離が開く。1メートル強。一番威力が載る間合い。
「ぐぉらぁ!」
両手で振り切った剣は、相手の革鎧ごとゴブリンの体を上と下に分断した。
上半身が落ちるとともに、その体はドロップ品に変わった。
「はぁ……はぁ……はぁ……やべぇ。馬鹿だろこれ。くそが、
サーチで寄ってくるモンスターが居ないことを確認して結界を張って休憩。
……一匹でこんなにきついか。やべぇ、武器持ってる相手とか超怖い。
罵倒を口にすることで気力を奮い立たせてみたけど、身体の動きは多分今一。今のステータスであれくらいの相手なら、2手目か3手目で倒せていたはずだ。少なくとも集合知の情報では手こずる相手じゃない。
HPは2点削れていて、MPは残り65。
やっぱりちゃんと近接戦闘の訓練を受けたほうがいいな。ギルドに紹介してもらおう。
30分ほどの休憩を挟んで、森を出た。道中2回ほど魔物に遭遇たのは詠唱魔術で片付けた。レベルは5に上がったけど実力はそこにすら届いてない。
魔王を倒すのはいつになるのだろうか。
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