第19話 思った以上に繁盛した
「……って思ってたんだよなぁ」
最初に回復屋を開いたのが5日前。
初日、2日目は宿代と飯代程度。3日目から人が増えて、4日目は午後に行ったらすでに待ってる人がいた。
そして今日は広場で捕まって朝からお仕事だ。
どうせあんまり客がいないならと、2日目に15歳未満は治療無料にしてみた。そしたらそれなりに子供が集まった。
15歳まで生きられれば1度は健康になるって加護があるからな。そこまで生き延びるの重要。
別段疫病が流行っているわけでもないし、教会もそう高くない値段で治療はしてるけどさ。
慢性疾患でなかなか治療を受けられない子供――多分喘息だろう――とか、気持ちが悪いという子供――食中毒っぽかったので、
3日目には慢性疾患っぽい患者が増えた。
初日に
子供がちらほらいるのも相変わらず。青あざ作ってきた子がいたので、ちょっと衛兵に相談しておいた。様子を見てくれるとのこと。
治療費の代わりに野菜や果物を置いて行ってくれる人が出始めた。この街の半数以上は、実は町の外で凪の平原を開拓している農家だ。大きな町に見えるが、まだまだ物々交換も盛ん。宿に材料を渡す代わりに飯代をまけてもらえたのがありがたい。現金結構重要。
4日目は広間に行くとすでに待ってる人がいた。
やっぱり慢性疾患っぽい人が数名と、クリーニング。
初日に話したお姉さん、結婚式に自分が着たドレスを娘にプレゼントするのできれいにしたかったらしく、うまく汚れを落とせたら大変喜んでいた。経年変化っぽい黄ばみもそれなりに落ちるんだな。
どうもそれが噂になったらしくて、クリーニングが結構な量持ち込まれた。魔力が足らないし、病人優先で絞る羽目になったけど。
……素質がある人に
「お、にいちゃん精が出るね」
「そちらも、毎日ご苦労様です」
広場で大道芸をしている兄さんとも顔見知りになってしまった。本業は
街の人との交流が増えるのはいいことだ。
「……
「……
金払って酔って、金払って酔い覚ましとか無駄の極みだろ。
結局、溜まっていた人たちを捌くのに2時間ほどかかった。MPが高くなっているとは言え、回復補助が無いから辛い。
そんなこんなで一仕事終えたステータスがこれ。
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名前:ワタル・リターナー
状態:健康(18)
職業:
レベル:5(ボーナス:14)
HP:11 → 12
MP:51 → 105
STR:12 → 14
VIT:13 → 14
INT:36 → 63
DEX:11
AGI:12 → 13
ATK:13+20
DEF:1
スキル:魔力操作Lv1,
魔術:神聖,火,風,水,土,暗黒,無,雷,重,空間,時,対,召喚,付与(各Lv1)
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スキルや魔術は階層機能を使って簡略化した。気づくまで表示がやばいことに成ってた。
MPとINTの伸びは
レベルは昨日の段階で5に上がって、覚えたかった
足場の悪い湿地などや、切り分けて進むような森の中では効果は発揮しないが、街道とかなら移動速度が1.5倍とか2倍とかくらいになる。
レベルを15まで上げると
「あ~……早いとこ
他の職業に転職した後にもスキルを使うためには熟練度をためる必要がある。
……遠い。
一回の施行で入れたり出したりできるのは、手が触れた物体、自重で崩壊しない、個体結合してるの3条件。鉱山地帯とかならその辺の岩を適当に出し入れするんだけど。
……ぶっちゃけやりたくない。しんどい。
「よう。儲かってそうな割には渋い顔してるな」
看板を
「……バノッサさん、久しぶりですね」
時の賢者の話を伝えた後、全く姿を見なかったけど何処に行っていたんだろう。
「おう。一週間……は経ってないな。まあ、久しぶりっちゃそうだ。ついでにアインスも3日ぶりだしな」
「遠征ですか?」
「ギルドに再登録して、依頼を片っ端からだ。そっちはその様子だと
「ええ。あとは
「定着条件は……知ってるんだろうな。……興味本位で聞くが、どれくらいかかるんだ?」
「条件さえそろえばそんなにかかりませんよ。……そうだ、バノッサさんは100キロぐらいの石塊とか持ってませんか?」
「あるわきゃねぇだろ。なんで聞いた」
「まぁ、もしかしたらと思って」
「もしかしたら持ってることが有る物かそれ?……重さか?」
「今の質問で気づきますか」
「そりゃ、あの流れなら……まて、MP100を超えたって事か」
「ははははは」
「笑ってごまかすなっ!」
「まあ、そうですよ。ちなみに、
「……なるほど。普通に
運ぶことが目的の職業だから1回でそんなに出し入れしたりしない。船の荷卸しなんかをしてる港湾作業員の人たちなんかは定着することが多いけど、結構気づかず
「
「なるほどな。……まあ、人数いない街だからしばらくすりゃ落ち着くと思うぜ。明後日は市が立つから、その時にどうするか考えりゃいいんじゃないか?」
「ああ、そんなタイミングでしたか」
広場に市が立つとここも使えなくなるな。
使用料払ってまで回復屋をやるメリットは無いし、明日で店じまいにするか?
「それと、森で倒木でも出したりしまったりしてくりゃ良いんじゃねぇか?少し山に入れば、結構あるだろ」
「なるほど。むしろ
森まではそれなりに距離があるから
どうせだったら、シスター・グースのところに顔を出してみよう。どうなってるのか気になるし、手伝えることもあるかもしれない。
「ありがとうございます。当面やることが決まりました」
「ああ。……ところで、
「いえ、移動が多くなると思って便利なのを先に抑えてるだけですよ。ステータス補正も欲しいんで、当面は魔剣士を目指します」
どうすれば魔王を倒せるかはまだ見えないか、当面は情報を集めながらいろいろ試してみるつもり。集合知の情報だけだと試されていない組み合わせも結構ある。
それに、多分キーとなるのは異能の方。うまく生かせるようにならないと。
「……魔術師になるの嫌がってたのにか?」
「
初級魔術をいろいろ教わったし、組み合わせ的にその方がよさそうなんだ。
「……まあ、転職したらまた魔術を教えてやるよ。そのMPなら覚えられるのも増えてるだろ?」
「ありがとうございます」
「なに。こっちも礼はいくら言っても足りないしな。それに、餞別じゃあないが、しばらくしたらニンサルに向かうからな」
「……そうですね」
時魔術適正、時の賢者適性を得るには東の山を越えて大陸の反対まで行かなきゃいけない。
……まあ、別れを惜しむほどではないな。魔王に挑むときには役立ってもらいたいものだし。
「……じゃあ、俺は行きます」
「おう、頑張れよ」
ギルドへ向かうバノッサさんと別れて、東門へと向かう。
さて、サンワサ村にはどれくらいかかるかな。
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