第10話 覚えることを強制された
「てめぇにゃとりあえず、各魔術の基礎を覚えてもらう」
ギルドが管理する訓練場の一角、
「ありがたい話だけど、MPがそんなに無いから
「すぐに回復するだろ。さっさと始めるぞ」
いやまあ、確かにMPの回復速度は補正無しでも1分に1点だけどさ。
攻撃魔術の基礎である
「……お前、今日はどのくらい魔術を使った?」
「
「それだと今日の伸びしろはいっぱいか」
「……ステータスの1日成長上限まで知ってるのか」
この世界のステータスは修練によって伸びる。
けれどそれにはステータスに表示されない熟練度と呼ばれるパラメータがあるとされていて、それが1日で上がる上限量は決まっているとされている。
この上限量は能力が低いと小さくて、俺のステータスじゃ10回も魔術を使えば1日上限に達するはずだ。
まぁ、普段運動してない人がいきなりフルマラソン走っても成長しないのと同じだと思えばいい。過剰な努力は意味が無い。
「まあ、覚えるだけなら支障はない。まずは火属性、
「いや、
「教えて逃げられたら教え損だ。それは最後に教えてやる」
……あ~、面倒なのに捕まったなぁ。
まあ、ただで教えてくれるならありがたいっちゃありがたい。
「とりあえずターゲットは……
バノッサさんが力ある言葉を発すると、少し先の地面が盛り上がるとともに形を変え、瞬く間に人間サイズの土人形が生まれる。
「まあ、あれでいいだろう。準備は良いか?」
「……やりゃ良いんでしょ」
何を考えているんだか知らないけど、とりあえず覚えるだけ覚えよう。使えないわけじゃない。
「偉大なる炎の神の力もて、紅の衝撃をここに刻まん!
バノッサさんが手を掲げて詠唱を行うと、バレーボール大の火の玉が空に向かって打ちあがる。……でかいな。
「偉大なる炎の神の力もて、紅の衝撃をここに刻まん!
身体の中の魔力が動く。この感じ、まだ慣れない。
これに成れて魔力操作のレベルが上がれば、自分の魔力で魔術が使えるようになるらしい。まだまだ先の話だろうけど。
「はい。復唱。適性があるなら数回で発動まで行くだろう」
実際、5回目で
発動した
「よし、どんどん行くぞ」
「少し待たないと回復しないですけどね……」
MPが溜まるたびに復唱を休みなく繰り返す。
そのまま弾丸系と言われる基礎魔術を叩き込まれた。
……ああ、日が暮れる。
MPがかつかつの所為で、1つ覚える度に10分は休憩しないといけない。
「……ほんとに滞りなく覚えていくな」
「そりゃまあ」
ステータスを確認すると
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魔術:神聖魔術Lv1,炎魔術Lv1,水魔術,Lv1、土魔術Lv1、暗黒魔術Lv1、無属性魔術Lv1
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見事に一覧が並んでいる。
「一般的なところだと、あとは風、それに雷か」
「……バノッサさん、いったい何の職業なんですか?」
魔術師でも普通ここまで多様に弾丸系を覚えることは無い。
神聖魔術の
「ん?なんだ、聞かずに来たのか?俺は賢者、炎の賢者だ」
「……炎の賢者」
上級職もいいとこじゃねぇか。集合知の知識だと、魔術師系の上級職の1つが賢者で、属性賢者はさらにその上だ。属性賢者の上は賢者系の到達点である大賢者しか居ない。
属性賢者は10年前の知識だと数十人程度と言われていて、結構な人数が国の要職についている。
こんなところで魔術教室を開いているような職業じゃない。
その上の大賢者を目指すにしても不便な場所だ。
そもそも大賢者はこの世界に数人。所在が明らかなのは魔法王国ニンサルの軍司だけだ。転職条件がきついからこんな所で油を売っていてはなれないし、それは賢者なら知っているだろう。
「なんでこんな初心者御用達みたいな街にいるんですかね?」
「隠居だよ。文句は言わせねぇ」
……その年で隠居とか才能の無駄遣いもいい所だ。
「ほれ、MPは回復したか?雷魔術から
「……いい加減
「各魔術の基礎を一通り覚えたらな」
結局、風と雷の2つに加え、重力魔術の
……普通だったらそんなに覚えても使いこなせない量だ。
何を考えているんだか。
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