男には興味がないんじゃ。
ドウテとフタバで二時間程話し込み、あっという間に日が暮れていた。ドウテは話すのも聞くのも割合上手く、私は愉快な時間を過ごさせてもらったけれど、七日間を生き抜くのための目ぼしい情報は、得られなかった。会計の際、財布を家に忘れたと嘘を吐いたら、ドウテは快く珈琲を御馳走してくれたが、いいよいいよ気にしないでと笑う顔があまりに純朴で、彼を利用したことに、私は胸を痛めた。店を出ると、町は夜に包まれつつあり、三日月に似た星が、淋しげに空に浮いていた。日も暮れたしこの辺りは物騒だし家まで送るよと申し出てくれたが、私には帰るべき家がないので、辞退し、フタバの前で別れた。別れ際、
「また、会えるかな」
と訊かれた。それまでの会話から、彼が私に好意を寄せていることは、ひりひりするほど伝わっていた。ドウテは私に、終始誠実に接してくれた。だから私も、せめて最後くらいは、誠実に答えたかった。
「ごめんね、私、男性には興味ないの」
それだけ言い残して、逃げた。
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