34 エルピス林檎をみせてやる!ワニの滅死壊スラープアリゲーターをリリと、ロネで、倒す!

「ハートフルコスメ 変身 キラキラ魔法少女。」

 リリは、コスメポーチを鞄から取り出す。




 リリはポーチから化粧筆とファンデーション、アイライナー、アイシャドウ、口紅を取り出すと、自分の身体をなぞった。




 ポン、ポン、キラ、キラ





 身体中が光に包まれ、キラキラと輝きだす。



 

 ナチュラルファンデに、ビビットなピンクのアイライン、ローズピンクの透け感のあるシアー系の口紅で、綺麗にメイクアップされた。




 髪の毛まで、ピンク色のツインテールに変化した。




 服装は、ピンク色の胸元に大きなリボンのついたコルセットドレスと、ハイヒールになっている。


 


 「凄い。」

 僕は、リリに見蕩れていた。




 「魔法少女リリのできあがりよ。」

 リリは、ウィンクして、ニコリと笑った。




 「さあ、行くわよ、ロネ。」

 リリは、スラープアリゲータを睨みつけた。




 「うん。」

 僕は、覚悟を決める。




 エルピス林檎で、勝つぞ。




 「行くぞ!!!ワニ野郎。」

 僕は、スラープアリゲータに言い放った。




 「ん?うるさいガキだな。殺されたいのか?」

 スラープアリゲータは、僕の方をジロりとみて、ニチャリと笑った。




 特訓の成果をみせてやる。




 「エルピス林檎 飛空ボルタ。僕の足となり、宙を舞え。」

 僕は、林檎を生み出す。




 サイズを僕が乗れる大きさにし、頑丈な強度を持つよう、ウェイトとハードネスを調整する。



 

 「よし。できた。」

 僕は、作り出したボルタ林檎の上に飛び乗って立つ。




 「ボルタ林檎。」

 ボルタ林檎は、時速200㎞新幹線程度の速さで、人を乗せて、動く事ができる。




 僕が、編み出した移動術。




 「撃ち貫け、林檎ピストル。」

 僕は、人差し指を、スラープアリゲータに向けると、ゼロ距離で、額に向けて、林檎を放った。




 バン!




 考え抜いて、作った僕なりの戦い方だ。




 林檎を弾丸のサイズと強度にし、銃の速度で、放つ。




 「痛てええ。うえええええええ。貴様ああああ、やりやがったなあ。俺様の額に穴をあける気か!。」

 スラープアリゲータは、額を抑え、地面でのたうちまわった。




 化け物め、即死じゃないのか―。




 「ぼああああああ。ぶち殺す。」

 スラープアリゲータは、時速300㎞で僕の目の前に移動する。




 速い、ぶち殺される―




 「どりゃああ、ハートフルキック。」

 強烈な蹴りが、スラープアリゲータの腹に直撃した。




 リリだ。




 スラープアリゲータは吹き飛ばされた。




 建物の壁を突き抜けた。




 助かった。




 ま、まだ出していない、技はあったのだけれど―




 「やるわね。ロネ、随分、強くなったじゃない。」

 リリは、嬉しそうに笑った。




 「へへへ。ありがとう。」

 よかった、リリに認められている。




 「油断は禁物よ、ほら、未だ生きてる。」

 リリは、吹き飛ばされたスラープアリゲータによって開けられた壁の穴を指さした。




 「おえええ、ゲボッつ。気持ちわりい。よくも俺様を、蹴ってくれたな。」

 スラープアリゲータは、随分とやせ細っていた。




 口からは、人間の腕、足、顔がはみ出している。




 胃から出て来たのだ。




 リリの蹴りで、もどしたのだろう。




 「ぶええええ、ゲボおおお、おええ。」

 スラープアリゲータは苦しそうに、嘔吐する。




 口から出てくる、人の骨や皮、惨たらしい、遺体の姿。




 「いやあああああああああ。どうしてえええ、どうしてえ、御前たちは、人間を食べるんだ。」

 リリは、泣き叫んだ。




 「御前たち人間だって、牛や豚、鶏とかを殺して、美味しそうに食べているじゃ、ないか?同じ事だよ。」

 スラープアリゲータは、厭な笑みを浮かべ、リリをみた。




 人間だって、他の生き物を喰って生きている。




 スラープアリゲータのいう事に対する反論が思い浮かばなかった。




 「弱肉強食ね。私は、人だから、罪のない人を食べたり、襲ったり、するものを許さない。人として、御前を絶対に倒す。」

 リリは、スラープアリゲータを睨み返した。




 「ほお。怖い顔の嬢ちゃんだ。食べちゃいたいね。」

 スラープアリゲータはニヤついた。




 「ロネ、私があいつを、ぶち殴ってボコボコにするから、援護射撃お願いね。」

 リリは、僕に耳打ちした。




 「わかったよ。」

 僕は、頷いた。




 ビュウウウン




 「行くわよ。」

 リリは、スラープアリゲータに向かって、時速300㎞程で、近づく。




 「ハートフルスマッシュ、連打。」

 リリは、スラープアリゲータに向かって、パンチやキックを、連続で繰り出す。




 「へへへ、なかなかやるねえ。」

 スラープリゲータはリリの攻撃をガードしつつ、反撃する。




 攻防が続いている。




 やつの目を狙って撃ってやる。




 僕はスラープアリゲータの右目に標準を合わせて、人差し指を向けた。




 今だ。




 バン!




 「うわああああああ。」

 スラープアリゲータは、右目を抑えて、のたうちまわる。




 「卑怯だぞ。」

 スラープアリゲータは、泣いた。




 次は左目だ。




 バン!




 ブシュウ




 「ああ、やめてくれ、」

 スラープアリゲータは両目を失明した。




 「何もみえねえ、暗闇はこええよおお。うええええええんん。」

 スラープアリゲータは子供のように、泣きじゃくった。




 バン!




 目を抑える右手の甲に銃弾が当たる。




 ブシュウ




 右手の甲から血が噴き出す。




 「おらあ。」

 リリは、スラープアリゲータの首を目掛けて、思いっきりハートフルキックした。




 「おら、おら、おら、おら―。」

 リリは、何度も何度も、首を蹴った。



 

 もうスラープアリゲータの意識はない。




 「おら、おら、おら、おら―。」

 



 バン!




 バン!




 「おら、おら、おら、おら―。」

 



 いつしか、スラープアリゲータの首は折れ曲がって、首から上が地面に落ちていた。




 「かわいそうだよ。やめてあげよう。」

 僕は涙を流していた。




 酷い、滅死壊いえど、痛みも、知性も、あって生きているんだ。




 どうして、殺し合わないといけないんだろう。




 「バカ、撃つのをやめちゃだめよ。まだ、こいつは生きてるわ。爬虫類よ!!!」

 リリは、僕を怒鳴りつけた。




 「え?」

 僕は、驚きの声を上げた。




 「げへへ。油断したな、人間。」

 地面に落ちていたスラープアリゲータの顔面は不敵に笑った。




 「うわあああ。」

 スラープアリゲータの尻尾が僕の首を絞めつけた。




 尻尾だけ切り落としておいて、形勢逆転の時を狙っていたのだ。




 「喰ってやる。」

 スラープアリゲータの首から上は物凄いスピードで、僕の方へ向かってきた。




 あの技を使ってみるか―




 「林檎シールド。」

 できる限りの強度の林檎を出し、攻撃を遮る、盾の林檎だ。




 「あああああ。」

 スラープアリゲータは、林檎シールドを、思いっきり噛んでしまい、歯が砕け落ちた。




 尻尾の力が弱まる。




 バン!




 林檎ピストルで、尻尾を撃ち、抜け出す。




 「ひい、危なかった。」

 僕は冷や汗をかいた。




 「ロネ、同情はダメよ。ちゃんと殺しなさい。」

 リリは、僕を𠮟りつけた。




 残酷だな。




 滅死壊と言えど、生きた生命体。




 できれば、殺さずに、無力化できる技を身に着けたい。




 甘ったれた考えだろうか。




 「リボンスティック 浄化 ハートフルスマッシュ。」

 リリは、デカリボンのついた棒で、容赦なく、スラープアリゲータを叩いた。




 キラキラ白色に輝いて、スラープアリゲータは消えていった。




 「浄化完了ね。」

 リリは、消えていったスラープアリゲータの欠片をみて言った。




 「浄化か、あいつは、死んだのか?」

 僕は、きいた。




 「わからないわ。ただ、苦しみから解放されたに違いないわよ。」

 リリは、言った。




 「ま、暗い気持ちにならないで、祝いましょう。なんとか、B級に勝てたのだし、凄い事だわ。」

 リリは、気持ちを切り替えるようにして、笑った。




 「ああ、びっくりだ。」

 僕は返した。




 時刻は、午後5時37分で、日が暮れ始めていた。




 「フェールさんは、上手くやったかしら」

 リリは、フェールさんを探し始めた。




 「無事だといいけれど、」

 僕は、言った。


 


 戦いで、建物は、壊れてしまっていた。




 フェールさんを探す。




 荒廃した瓦礫の上にフェールさんは、右膝を立てて座っていた。




 「やぁ、勝ったようだね。よかったよ。」

 フェールさんは、笑った。




 「何とか、勝てました。」

 僕は、言った。




 「ははは。」

 リリは、苦笑いした。




 「C級とE級で、B級に勝てたのは凄い事だよ。無事でよかった。」

 フェールさんは、僕たちの頭をポンポンと撫でた。




 「フェールさんは、余裕でしたか。」

 リリは、きいた。




 「ああ、これでもS級だからね。相手でもなかったよ。」

 フェールさんは、事も無げに言った。




 「次じゃ、アウフヘーベン歌劇場に行かないとね。ミミコくんとロールくんが無事だといいけれど―。」

 フェールさんは、心配そうに眉を顰めた。




 「アウフヘーベン歌劇場までは、エリーゼ都から飛行機で1時間ほどかかるわ。」

 リリは、スマホをみながら言った。


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