32 原子力飛行機で、エリーゼ都へ。
「おい、ノロマ、オレは、御前らと、組むのは、ごめんだね。」
ロールは、言い放った。
白い空間から、ガーレリア街に出て、道を歩いている途中の事である。
「ちょっと、シルクさんに言いつけるわよ。」
ミミコさんは、脅した。
「好きにしろよ。俺は先に行くぜ、あばよ。」
ロールさんは、宙に浮いた。
「テレポート。」
ロールさんは消えてしまった。
「待ちなさいよ。こら。」
ミミコさんは、ロールを追いかけるように、宙に浮いた。
「神足通、瞬間移動術。」
ミミコさんも、消えてしまった。
「どうするんです。リーダー。」
リリは、項垂れて、フェールさんを横目でみた。
「参ったな―、僕は、テレポートも瞬間移動もできないよ、飛行機で行くしかない。二人が無事だといいけれど…。」
フェールさんは、困った様子で、言った。
気の毒になってきた。
僕がいたばっかりに、ロールさんの気を害してしまっていたのだ。
「気にしないで大丈夫だよ。君は君のやれる事をしていればいい。」
フェールさんは、目を細め、僕を励ました。
「ロールだって、ロネの事をちゃんと知れば認めてくれるわよ、きっと。」
リリは、言った。
「ありがとう、フェールさん、リリ。」
僕は、感謝を口にした。
リリもフェールさんも優しくて、いい人で、良かった。
「いいのよ、とは言ったものの、急がないとマズいわね。」
リリは、言った。
「だね。ま、ロール君だったら心配ないかも知れないけれど、用心するに越した事はないからね。」
フェールさんは、歩く速度を速めた。
アルブル駅から地下鉄で、アルブルの文化の発祥地である、ジェネシスへ向かう。
ジェネシスに、アルブル空港があるのだ。
アルブル空港から、飛行機で7時間30分ほどフライトすると、エリーゼ都に着く。
午前12時ごろ、アルブル空港に到着した。
空港で、手荷物検査やらを受け付けやらを終えて、飛行場に向かう。
「飛行機なんて、はじめて乗るわ。」
ミミコは、飛行機をみて言った。
飛行機は、僕の知っているものではなかった。
途轍もなく大きく、豪華客船のような形をしていた。
「大きいですねえ。」
僕は、飛行機をみた。
「中はホテルになってる。」
フェールさんは、言った。
「へえ。楽しみです。」
僕は、胸を弾ませた。
ミーロ星の、技術は進んでいる所もあるようだ。
飛行機に乗る。
飛行機の中は10階建てになっていて、レストランや、ショッピングモール、プール、シアター、バー、カラオケ、ゲームセンター、エトセトラを楽しめる場所がある。
原子力と、電気、温度差利用したスターリング機構で動く、飛行機らしかった。
液体燃料も、一応積んであるようだ。
「まもなく、発進致します。揺れにご注意ください。」
機内アナウンスが流れた。
多少の揺れはあったが、微々たるものであった。
離陸し、空を飛び始める。
飛んでいるのかわからないほど、揺れは殆どなく、快適なフライトだ。
窓から外を見ると、もう、雲の上だ。
「すごいわね。楽しめる施設と店が、たくさんある。7時30分もあっという間に過ぎちゃいそう。」
リリは、ウキウキした声で、言った。
「リリ、歌、うまっ!。」
僕は、リリの歌声を聴いて言った。
機内のカラオケに来ていた。
「歌だけは、自信あるんだ。世界中にあたしの歌声を届けたいくらいよ。あはは。」
リリは、笑った。
「次、フェールさんですよ。」
リリは、フェールさんに、マイクを渡した。
「ああ。」
フェールさんは、マイクを手に取る。
フェールさんは、物凄く、音痴だった。
「耳が痛いよ。リリ。」
僕は、リリの方をみて、言った。
「酷いわね。ちょっと、悪い事した気分だわ。」
リリは、困った様子で、フェールさんをみた。
「ごめん。僕は、歌がダメらしくてね。歌うといつも、周りに厭な顔をされるんだ。」
フェールさんは、しょぼん、となった。
「ロネも歌ってよ。」
リリは、言った。
厭だな、恥ずかしいし、気が乗らない。
「僕も、ロネ君の歌声聴いてみたいな。」
フェールさんは、僕をみた。
「仕方ないな―。」
僕はマイクをフェールさんから受け取った。
歌う。
「へえ。可もなく不可もなくと言った感じだね、一生懸命なのが伝わってくる所は、よかったわよ。」
リリは僕が歌い終わると、言った。
「わかる、ロネ君は、一生懸命な所がいいね。」
フェールさんは、大きく頷いた。
「ありがとうございます。」
僕は、髪の毛を掻いて、照れた。
カラオケを終えた。
プールで、泳いでいた。
「ロネ、泳ぐの上手なのね。」
リリは、目を丸くして言った。
前世では、小学校の時から水泳を習っていたし、高校まで水泳部だったから、泳ぐのは得意だし、好きだ。
「はは。まあね。」
僕は、返した。
僕は、壁をキックして、フリーで25m泳いで、ターンして、100mほど気ままに泳いだ。
背泳ぎ、平泳ぎ、バタフライと、適当に、合わせて3000mほど泳ぐと、プールから上がった。
リリとフェールさんは、流れるプールで、ゆらゆらと、流されていた。
プールから出る。
時刻は、夕方の6時を回っていた。
「夕食を食べようか。」
フェールさんは提案した。
「いいですねえ。」
リリは返した。
レストランで、夕飯を済ませた。
時刻は、午後8時過ぎになっていた。
「温泉に浸かりたいわ。」
リリは、歩きつつ言った。
「いいね。」
僕は返した。
温泉に入って、疲れを取った。
温泉から上がる。
僕とフェールさんは、はやめに上がったので、温泉の近くにある、ゲームセンターで、時間を潰していた。
30分ほどして、リリも上がってきた。
午後、9時30分を回っていた。
「ぷはあ。気持ちよかったわねえ。」
リリは、腰に手を当てて、牛乳瓶を片手に、飲んでいた。
温泉の入り口にあった、自販機で買ったのだろう。
ゲーセンで、UFOキャッチャーやら、リズムゲームやら、をして遊んでいた。
「まもなく、着陸致します。」
機内に女性の声のアナウンスが流れた。
「もう、着くの?、はやいわね。」
リリは、UFOキャッチャーを動かす手を止めた。
着陸には多少の重力を感じたが、無事に降りた。
「お疲れ様でした。お忘れ物のないよう、お降りください。」
着陸し、機内にアナウンスが流れる。
「行くぞ。」
フェールさんは、僕とリリをみて言った。
「はい。」
僕は、返事した。
「楽しかったわね。」
リリは言った。
飛行機を降りると、空港を出た。
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