25 キラ星病院にて、医療魔術師ももこさんに治癒されていた。

 「ロネ!大丈夫なの?。」

 リリの心配そうな、声がきこえる。




 どうにか、僕は助かったらしい。




 「大丈夫だよ。あたしが、診たんだから、間違いないよ、なんで、あたしが、ガキの面倒みなきゃなんないんだか、困ったもんだよ、まったく。」

 女の声がきこえる。




 知らない声だ。




 目を開き、起き上がろうとする。




 「ん、はッ。」

 身体を動かす。




 「やっと、起きたか、ガキ。」

 女は、僕の方に、声を投げかけた。




 目を開ける。




 壁の白い病室の中にいた。




 僕はベッドで横たわっている。




 周りには、救急箱や医薬品などの医療物資が入った三段の台と、レントゲンなどの医療設備、注射器や、聴診器、内視鏡、顕微鏡などの、検査器具とパソコンの置いてある机があった。




 後ろで団子括りにした、ピンクの髪で、ナース服を着た女が、僕を覗き込んでいた。




 卵型の顏で、少し釣り目な、アーモンド目、ギリシャ鼻で、小さな唇をしている。




 「ガキどもが、余計な事をしてくれたものだね―、お前の飲まされた毒は、猛毒中の猛毒、リシンだよ。トウゴマの種子から抽出できる、物質でね、塩ひとつまみで、成人男性でも、即死さ。」

 女は、ケラケラと笑った。




 「ましろさんが、いなかったら、ロネ、死んでましたね。はは。」

 リリも、女に、つられて、苦笑した。




 「あのバカは殺す気だったんでしょうね。」

 女は、呆れた様子で、言った。




 「酷い男ですよね。」

 リリは、返した。




 「ミミコちゃんも、世話焼きだねえ。わざわざ、あたしの元にガキを持ってくるなんて、あんた、ミミコちゃんが来てなったら、死んでたよ。」

 女は、僕の方をみて言った。




 「ミミコ?誰ですか。」

 僕はきいた。




 「呆れた。狩衣を来ている神通力者の女の子だよ。」

 女は、言った。




 「ああ。」

 僕は、声を出した。




 あの人か。




 僕に毒入りコーヒーを飲ませた男の傍にいた女だ。




 「僕は、ロネです。よくわからないですが、助けてくれて、ありがとうございます。」

 僕は、起き上がって、女の方を向いて、頭を下げた。




 「まったくだよ。自分の命は自分で、守れるようにして貰わないと、困る。仕事が増えるからねえ。だるい、ったらありゃしない。」

 女は、顔色ひとつ変えずに、迷惑だと言った声音で言った。




 「ごめんなさい。」

 僕は、謝った。




 「仕事だからね。死なれちゃこっちも困るし、気分も悪くなる。」

 女は、僕を睨みつけた。




 コワい。




 「あたしは、ましろももこ。エイレーネ団の中で、唯一、病や傷を癒し治せる白魔法が使える魔導士だ。だから、医療班を任されてる。あんたみたいに、怪我や病人が増えると仕事が増えて困るのは、あたしなんだ。」

 ももこさんは、言った。




 「次からは、気を付けます。」

 僕は、反省した。




 安易に、ココアを飲んだ僕にも、落ち度はあったと思った。




 僕が、弱いのも問題だ。




 エイレーネ団で、やっていくには、もっと、強くなる必要がある。




 気を引き締めよう。




 「リリ、お見舞いに来てくれてありがとう。」

 僕は、リリの方をみて言った。




 「びっくりしたのよ、ミミコ先輩から、連絡があって―、でも、よかったわ、無事で。」

 リリは、返した。




 ふと、思った、今は何時だろう。




 病室の時計の針は、午後7時30分を過ぎていた。




 「もう、7時半、過ぎてるじゃん。」

 僕は言った。




 「そりゃあ、ねえ。猛毒ですからねえ、2時間くらいは気を失っていたわよ。」

 ももこさんは、返した。




 「そろそろ、帰らなきゃマズいね。」

 リリは、言った。




 「よいしょ。」

 ベッドから起き上がり、立ち上がった。




 「安静にしとくんだよ。また、症状が悪化して、来られると困るのは、あたしなんだからね。」

 ももこさんは、言った。




 ももこさんは、多少、口は悪いが、きっと、根はいい人なのだろうと思う。




 「はい。今日は、ありがとうございました。」

 僕は、お辞儀をした。




 病室を出て廊下を歩く。




 「ここって、病院なんですか?」 

 僕は、きいた。




 「みりゃわかるでしょ、そうだよ。」

 ももこさんは、答えた。




 「キラ星病院っていう小さな病院さ。アルブルの街の東の方にあるよ。」

 ももこさんは続けた。




 「アルブルの街ですって!?」

 僕は、驚いた声を上げた。




 家から、結構、遠いじゃないか。




 一体、どうやって、倒れている僕を運んだのだろう―。



 

 「へえ、帰りはどうしよう。電車に乗って帰るしかないな。」

 僕は言った。




 「あたしが、奢るよ。」

 リリは、申し出た。




 「ありがとう。」

 なんだか、申し訳ない気持ちになった。




 電車に乗って、帰る。




 ポムの街に帰って来た頃には、もう夜8時ごろになっていた。




 家に帰ると、母と父に、叱られた。




 心配したらしい。




 「ごめんなさい。」

 僕は、言った。




 「いいのよ。よかったわ、何もなくて。」

 母は、笑った。




 「遅くなる時は、家に連絡くらい入れてくれよな、ま、無事でよかったよ。」

 父は、僕の頭を撫でた。



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