22 エマ・シンバス契約の儀式をし、エイレーネ団に加入した。

 「おーい。そこの君いい!!!。みない顏だねえええ。こっち、おいでえええ。」

  階段に囲まれた集会場の真ん中から、僕を呼ぶ声がきこえる。




 アルトさんだ。




 右手を大きく上げて手を振っていた。




 アルトさんとシルクさんのいる、階段に囲まれた集会場の真ん中へ、急ぎ足で、向かう。




 「お、リリちゃんも、いるじゃん、なに、なんなの、二人は、どういう仲なの?」

 アルトさんは、リリに詰め寄った。




 「ああ、同じ学校の生徒なんです。」

 リリは答えた。




 「へえ。でどうして、彼が、ここに。」

 アルトさんは、きいた。




 「どうやら、彼も、滅死壊がみえるようでしてな。」

 シルクさんは言った。




 「だろうね。」

 アルトさんは、頷いた。




 「どうも、はじめまして、ロネです。」

 僕は、挨拶した。




 「どうも、アルトだ。一応、S級団員だよ。」

 アルトさんは、返した。




 「で、ロネくんは、エイレーネ団に入るの?」

 アルトさんは、続けた。




 「入ります。」

 僕は即答した。




 入団すると、決めていた。




 転生前のネロー星で、家族と恋人をめちゃくちゃにされ、星を滅ぼされた。




 滅死壊とは、何なのか?




 前世では、父との約束を守れず、家族と恋人を見殺しにし、無念に終わった。




 二度目の命、次は、大事な家族を、友達を、人たちを、自分の手で、守れるようになりたい。




 「ロネや、エイレーネ団は命を伴う危険な団。本当に、入団するのじゃな?」

 シルクさんは、きいた。




 「はい。」

 僕は、返事した。




 「いい目だね。気に入ったよ。私は。」

 アルトさんは、豪快に笑った。




 「わかった。」

 シルクさんは、目を丸くして、僕をみていた。




 「おおおおい!!!!。契約書、持って来てくれええええ。」

 アルトさんは、奥の扉に向かって、大きな声で、叫んだ。




 どこから、あんな大きな声が出るのだろう。




 ガチャ。




 しばらくすると、扉が開いた。




 「相変わらず、うっさいわねえ、アルトは。持ってきたわよ、契約書。」

 身長150cmほどの小柄な、女が、扉から出て来た。




 肩出しベアの、白色のワンピースを着ている。




 逆三角で、キリっとした表情をしている、アーモンド目で、緑の目をしている、小さめのギリシャ鼻に、小さな唇だ、




 青色のまとまったストレートのミディアムヘアだ。




 「で、誰が、新しい団員になるのかしら?」

 女は、シルクの方をみて、きいた。




 「この子だよ。」

 シルクは、僕の方をみた。




 「え。まだ、子供じゃないの。」

 女は、言った。




 「どうも。ロネです。」

 僕は、挨拶した。




 「ええ、どうも、パールよ。」

 パールさんは、返した。




 「ねえ。大丈夫なの。親とか心配するんじゃないの。ねえ。」

 パールさんは、シルクさんと、アルトさんと交互にみて言った。




 「能力者ってのは、そんなものじゃろ。儂の時も、そうじゃったわ。」

 シルクさんは、答えた。




 「確かに、私の時も、そうだったわ。」

 パールさんは、返した。




 「本当に、エイレーネ団に、入る覚悟があるのよね。一度、入団すれば、最後、二度と、元の生活には、戻れなくなるわよ。」

 パールさんは、少し腰を屈めて僕に目線を合わせて言った。




 「はい。」

 僕は、言った。




 「いい返事ね。」

 パールさんは、にこりと笑った。




 「にしても、彼、いい男ね。あの目が好きだわ、覚悟を感じる。」

 パールさんは、アルトさんをみて言った。




 「ははは。」

 アルトさんは、苦笑いしていた。




 アルトさんは、ワンピースの袖から、A4サイズほどの、薄茶色の紙を取り出した。




 

 「はい、契約書。エマ・シンバスよ。」

 パールさんは、僕に契約書を手渡した。




 「ありがとうございます。」

 僕は契約書を受け取った。




 「エマ・シンバスは、血の契約書だ。」

 シルクは、言った。




 「血の契約書?」

 僕はききかえした。




 「自らの血で、自らの名を刻む事で、ミーロ星にエイレーネ団だと認められる。」

 シルクは、答えた。



 

 「???」

 僕は、首を傾げた。




 「ま、やってみればわかるじゃろう。」

 シルクは言った。




「はい。針よ。これで、親指に傷を付けて、血で名を刻むといいわ。」

 パールさんは、針を僕に手渡した。




 「少し、痛むが大丈夫じゃ。」

 シルクさんは、ナイフで、自分の親指を少し切ってみせた。




 グサ。




 親指に針を刺した。




 ダラ。




 親指から血が流れる。




 ハート・A・ロネ




 エマ・シンバスに血で名を刻む。




 ピロロロローン。




「な、なんだ。」

 僕は、思わず声を上げた。



 身体の周りが、輝きだした。




 黄金色の光が、身体を包み込む。




 「加護を受けたのじゃ。ミーロ星に認められた、という事じゃな。」

 シルクさんは、頷き、言った。




 「強い、輝き。素晴らしい素質だわ。」

 アルトさんは、驚きの表情を浮かべた。




 やがて、光は収束した。




 「なんだったんだ。あの光は、どういう原理なんだ?」

 僕は、呆然としていた。




 「エマシンバス。3000年程前から、ミーロ星に伝わる特殊な紙でね。星の中でも、ある一族しか作る事が出来ない、貴重なものなんだ、ちなみに原理は不明だ。」

 パールさんは、答えた。




 「へえ。」 

 僕は、唖然として、答えた。




 「エマシンバスに、血で名を刻むと、アルブルの樹に、名が刻まれる。」

 シルクは、話した。




 「不思議ですね。」

 僕は、返した。




 「首の後ろを家に帰ってみてみるといい。アルブルの樹の紋章が刻まれている事だろう。儂の首の後ろにもついとる、みてみな。」

 シルクさんは、ボサボサの黒髪の首後ろを上げた。




 「ほんとだ。」

 僕は、言った。




 シュウゥゥゥゥ。




 エマシンバスの契約書が、急にどこかへ、飛んで行ってしまった。

 


 

 「待て!!!どこへいくんだ。」 

 僕は、手を伸ばした。




 「大丈夫だよ。元の場所に、かえっただけだよ。」

 パールさんは、言った。




 「元の場所?」

 僕はたずねた。




「集会場の、奥の部屋さ。あそこに、エイレーネ団員全員の、エマシンバスがどういった原理かは、わからないが、集まるようになっている。」

 パールさんは、答えた。




 「エマシンバスは、契約者が死ねば、光の粒になって消えてなくなる。命の量に伴って、紙が光の粒に変換され、小さくなったり大きくなったりするんだ。」

 パールさんは続けた。




 つまり、死んだ団員のエマシンバスは消えるという事だ。




 「エマシンバスは、団員の生存確認にも使えるのさ。」

 パールさんは、言った。




 「次に、ランクじゃな。」

 シルクさんは、口を開いた。




 「おおおおおいい!!!メトルううううう。新団員が出来たんだ、ランクを測ってやってくれないかなあああ?」

 アルトさんは、階段で、ポツリと座って話をきいていた、お兄さんの方に向かって叫んだ。




 誰だろう?




 団員が帰ってからもずっと、座ってボーとしている。




 会場をみると、数十人しかもう、いなくなっていた。


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