20 ガーレリア・ロンド社のオフィス街に来た。

 「来たわね。」

 リリは、僕をみつけると、右手を上げて振って言った。




 4月12日土曜日、午前8時ごろ。




 ルネ小学校の校門前で、リリと待ち合わせている。




 エイレーネ団の集会に行くのだ。




 「来たよ。」

 僕は、リリに近づいた。




 「じゃ、行きましょうか。」

 リリは、歩き出した。




 リリは、ピンクのボウタイシャツに、白のギャザースカートを着ていた。




 街の歩道を歩く。




 20分ほど歩くと、駅についた。




 リリは、駅の前で立ち止まった。




 ポム県アイス駅だ。




 「ちゃんと、お金は持ってきたわよね?」 

 リリは、僕をみた。




 「うん、持ってきたよ。」

 僕は答えた。




 昨日の、夜。




 母に、友達と遊びに行くと伝え、電車賃を貰ったのだ。




 「ロネちゃん、友達と遊ぶだってええ。よかったわねえ、早速小学校でも、友達ができてえええ。」

 母は、歓喜した。




 父は、微笑ましそうに、僕と母の様子をみていた。




 てなわけで、母から電車賃を貰って、来たというわけだ。




 リリは、スマホ決済で、改札を抜けた。




 駅のホームで、電車を待つ。




 ピンポパロ、ポンポ、ピンポパロ―




 音楽が流れた。




 静かに音も殆ど立てず、電車が来る。




 リニアモーターカーだ。




 ミーロ星では、電車は全てリニアモーターカーなのだ。




 超電導で宙を浮き、平均時速600㎞で走るらしい。




 電車に乗る。




 リニアモーターカーの乗り心地は、不思議な感覚だった。




 窓から外の景色をみると、凄まじい速度で、走っているのがわかった。




 「次の駅で降りるわよ。」

 10分ほどすると、リリは、言った。




 「まもなくアルブル、まもなくアルブル。お忘れ物のないようお降りください。」

 電車の中で、アナウンスが流れた。




 アルブル。




 ミーロ星、有数の大都市だ。




 電車が停まった。




 電車から、降りて、駅に出た。




 駅は、人々で、賑わっていた。




 「うわあ。すごい。」

 駅の外に出て、僕は声を零した。




 1000mはあるであろう、巨大な樹が、街の中央に立っている。




 樹は、広葉樹のような形をしていて、街を守るように、枝を伸ばし、緑の葉を生い茂らせている。




 超高層ビルが立ち並び、巨大な電光掲示板が動いている。




 空にはドローンが飛び、荷物を運んでいる。




 複合型の商業施設群や、お洒落な住宅が超高層ビルの周辺を囲うように立ち並んでいる。




 「アルブルの樹よ。いつみても、壮観だわ。」

 リリは、言った。




 都会なのに、空気が綺麗だ。




 アルブルの樹は、都会の空気を清浄しているかのように思えた。




「さ、行くわよ。」 

 リリは歩き出した。




 都会の喧騒をしばらく歩く。




 アルブル、ガーレリア街というところに来た。




 「ガーレリアって、なんか、きいた事あるな。」

 僕は言った。




 「ガーレリア・ロンド社。ミーロ星で最大のスーパーマーケットチェーンで、かつ、電子商取引、いわゆる、ネットショッピングの巨大会社よ。近年は、人工知能だとか、クラウド、にも、力を入れているみたい。時価総額は、200兆を超えるわ。」

 リリは、話始めた。




 「ガーレリア街は、ロンド社の、オフィス街で、キャンパスなのよ。敷地面積は、200ヘクタール程度。」

 リリは、続けた。




 「へえ。凄い。」

 僕は、感心した様子で、当たりを見渡した。




 よくみれば、テレビCmだとか、ネットでみたことのある、ガーレリア・ロンドのロゴが、辺りの建物の至るところに、つけられていた。




 ガラス張りの、建物た、お洒落な、モダン建築の建物、トーラスのドーナッツのような形をした巨大な建物、があった。




 庭には、ベンチや、スペースがあり、自然があった。




 「どうして、ガーレリア・ロンド街に来たんだ?」

 僕はきいた。




 「黙って、ついてきて。」

 リリは言った。




 しばらく歩くと、リリは、立ち止まった。




 少し暗いオレンジ色の壁の、三階建てで、5000平米程度の、四角いモダン建築の、建物の前で、立ち止まっている。




 「入るわよ。」

 リリは入口のガラスの扉を開けると、中に入った。




 入って、正面に受付があった。




 ボブ茶髪で、白黒ボーダーのオフィスベストを着た受付嬢らしき、女が、いた。



 褐色の肌で、アーモンド目、目元の窪んだローマ鼻、頬にそばかすがある。



 「そちらの、方は?」

 女は、リリをみると、言った。



 

 「彼も同行よ。」

 リリは答えた。




 「わかりました。では、行ってらっしゃいませ。」

 女は、深々と頭を下げた。




 グニャり




 周りの空間が、グニャグニャと崩れた。




 「ここはどこだ―。」

 僕は、知らないところに来ていた。




 「こっちだよ。ついて来て。」

 リリは、僕を見つけると、手を大きく右手を上げた。




 殺風景で、空さえなかった、真っ白な空間だ。




 サン・ピエトロ大聖堂のような建物と、ギリシャの神殿のような柱の入り口だけが、あるようにしてあった。




 「不思議な場所だなあ。」

 僕は、呟いた。




 少し歩くと、玩具屋があった。




 小さな店で、駄菓子や、プラスチックの刀、スーパーボール、ヨーヨー、ぬいぐるみ、水鉄砲、ラジコン、パーティホーン―。




 多様な玩具が、店先に並んでいる。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る