18 ねえ、エイレーネ団の集会に参加してみない?とリリは言った。

 ガヤガヤガヤ。




 教室から。話し声がきこえる。




 「もう、ホームルームはじまっちゃてるよ。」

 僕は、ガクリとして、言った。




 「ははは。いいじゃない?はやく、中に入ろお。」

 リリは、拳を上に上げた。




 「行きますかあ。」 

 僕は、引き戸の取っ手に右手を掛けた。




 ガラガラガラ




 引き戸を開いて中に入る。




 バッ。




 一斉に、教室中の視線が僕とセに集まった。




 「どうも、ははは。」

 僕は、腰を低くして、頭を掻いた。




 「どうも、じゃないわよ。遅刻よ、あなたたち。ま、いいけれど、はやく席に付いてねえ。」

 担任の教師らしき、女は、困り眉になった。




 「おはようございます。先生。」

 リリは、悪びれた様子もなく言った。




 「おはよう。リリさん。」

 女は、返した。




 「ロネくんは、ここで、リリさんは、あそこね。」

 担任の教師らしき女は、席を指定した。




 座る。



どうやら、僕たちが来るまでで、自己紹介をしていたらしい。




 生徒たちの自己紹介が終わる。




担任の教師らしき女は自己紹介をはじめた。




 「ロネくんと、リリさんには、まだしてないから、先生もう一回自己紹介しますねえ。ごめんだけれど、もう一回きいてね。」

 担任の教師らしき女は言った。




 トン、トン、トン、トン




 担任の教師は、黒板にチョークを走らせた。




 アステと大きな文字で、でかでかと、書いた。




 「あたしは、アステ。ルネ小学校、新一年、四組の担任になりました。今日からよろしくね。」

 アステさんは、にっこり、笑った。




 生徒たちは、拍手した。




 30代後半くらいだろうか。




 膝辺りまでの丈の長い、灰色のテーラードコートに、黄土色のチノテーパードパンツを履いている。




 眼鏡を掛けていて、背中くらいまでの緑髪ロングヘアだ。




 丸顔で、目元のあたりが窪んだローマ鼻、ぱっちち二重の丸目、厚い唇の女だ。




 自己紹介が、終わると、アステさんは、話はじめた。




 「みんな、知っているとは思うけれど、学校では、タブレットを使って、勉強します。今から、配布しますねえ。」

 アステさんは、タブレット端末の入っている、段ボール箱を教卓の上に乗せた。




 タブレットで、勉強するのか。




 「先生が、教える事は、殆どありません。タブレットに入っている人工知能が、一人一人に合わせた、勉強をしてくれますよ。」

 アステさんは、言った。




 凄い、結構進んでいるなあ。




 どうやら、問題を解いたり、文章を読み進めてデータが溜まっていくと、データを元に、自分に合わせた勉強プランを作ったり、わかりやすく、サポートしてくれるみたいだった。




 教科書も、デジタル化していた。




 好きに学校の、図書室の本も、タブレットで読めるらしい。




 「もちろん、クラスで、話し合いをしたり、身体を動かしたり、物を作ったり、遊んだりは、しますよ。先生は、お目付け役みたいなもんです。ははは。」

 アステさんは、笑った。




 話によると、学校行事、例えば、運動会とか、合唱コンクールとか、遠足とかは、あるみたいだった。




 もちろん、テストも、ある。




 「じゃ、今日は、これで、お終いよ。」

 一通り、説明し終わると、アステさんは、言った。




 時刻は11時25分ごろであった。




 学校から、帰る支度をする。




 ランドセルに、学校から貰ったタブレットや、紙の資料を入れている。




 「一緒に、帰りましょ。」

 リリが、後ろから、話かけた。




 「うん。」

 僕は、頷いた。




 廊下を歩き、昇降口で、外履きに履き替えて、外に出た。




 「いい天気ね、桜が綺麗だわ。」

 リリは、校庭の桜の樹を見上げていった。




 校庭を出て、歩道を歩く。




 無言で、歩いている。




「ねえ、エイレーネ団の集会に参加してみない?」

 リリは、思いついたように、言った。




 「エイレーネ団、なんだ、それ?」

 僕は、ちんぷんかんぷんな、様子で、首を傾げた。

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