13 アルルは武器商人になりたいらしい。

 「将来は、武器商人に、なるんだ。」

 アルルは、ポケットから手榴弾と、ナイフを取り出して、喜々とした様子で語った。




 「武器商人?」

 僕は、ききかえした。




 4月16日、金曜日のことだ。




 保育園で、アルルと話していた。




 「ああ、そうだ。君には、言っても大丈夫かなと思ってね、友達だし―。」

 アルルは、気恥ずかしそうに、顔をあからめた。




 武器商人だってえええ!!!???




わけのわからないことを、いいはじめちゃったよ、この子、




ゲームや漫画、アニメの話でしか、きいたことがない!!!




 ミーロ星では、普通にある職業なのだろうか。




 手榴弾やナイフを持っているが、物騒だな、本物だろうか。




 「武器商人ねえ、アルルが作ったの?先刻ポケットから出した武器、」

 僕は、アルルの持つ、物騒な武器をみて、言葉を選び声を発した。




 「もっちろんさアっ!すんごいだろう?僕は武器を作るのが好き得意なんだ。」

 アルルは、鼻息を荒くして、興奮した様子で詰め寄った。




 あれ、アルルって、こんなキャラだっけ。




 コワい。




 「へえ。そいつは、すげえや。」

 僕は、正直な感想を述べた、武器を作れるなんて、なかなかできる事ではない。




 「わかってくれると、思っていたよ。」

 アルルは、うんうんと、頷いた。






 僕は、アルルの熱気にやられ、少し、あとずさって、深呼吸した。




 「って、ごめん、ちょっと引いているね。」

 アルルは、僕をみて、反省した様子で言った。




 いつも、アルルだ。




 「ああ、いいよ。熱中できる好きなものがあるっていいな」

 僕は、返した。




 「ありがとう。」

 アルルは、にっこり笑った。




 「あの、よかったら、なんだけれど、うちに、遊びに来ない?えっと、みせたいものもあるし―」

 少し間を開けて、思い切った様子でアルルは、もじもじしながら、口を開いた。

 



 家ねえ。




 友達の家に遊びに行くのは、いつぶりだろう。




 「うん、行ってみたい。」

 僕は、答えた。




 アルルの、家がどういった家なのか、気になっていた。




 超天才のアルルがどうやって育ったのか、家で何をしているのかが、気になった。




 「やったあ!!!家に友達を呼ぶのは、はじめてなんだあ。」

 アルルは、飛び跳ねて喜んだ。




 3歳児のわりに、ずっと大人っぽくみえた、アルルにも子供っぽいところや、人間味のあるところがあるんだなあ、と思った。




 「まだ、3歳児だったら普通の事だよ。」

 僕は、苦笑いした。




 「僕たちは、普通ではないよ。」

 アルルは、ボソっと呟いた。




 「明日、家に来てよ。土曜だし園も休みだ。」

 アルルは、言った。




 「いいね。」

 僕は、答えた。




 「明日の朝10時ごろ、園に来てくれ、僕が車で家まで送るよ。」

 アルルは、申し出た。




 「わかった。」 

 僕は、提案をのんだ。




 4月18日、土曜日




 「ロネが、友達の家に遊びに行くだなんてねえ。」

 母は、言った。




 車で、園に向かっている。




 「いいことだ。よかったなあ、いい友達ができて。」

 父は、笑った。




 数十分後、園に、着いた。




 「到着と。」

 父は、車を停めた。




 園の入り口で、アルルは立って、待っていた。




 僕は車から、降りると、アルルの所に駆け寄った。




 「やあ、来てくれたんだね。」

 アルルは僕を見つけると、言った。




 「当然だよ。」

 僕は、返した。




 「優しいね。」

 アルルは、歩き出した。




 車が一台、停まっていた。




 アルルの家族だろうか。




 「あの黒い車に乗って、行こう。」

 アルルは、言った。




 車の扉を開けると、若いお兄さんがいた。




 「やあ、僕は、アルルの兄のマキだ。気軽にマヤって呼んでくれや、少年。」

 アルルの兄だというマキという男は、挨拶代わりの自己紹介をしてきた。




 肩ほどの長さの緑髪で、毛先が所々外に跳ねている、切れ長の目に薄いギリシャ鼻で、唇は薄く、顔は卵型で整っている。




 兄弟揃って、女と言われてもわからない見た目で、綺麗だったが、マキさんの声は、重低音で、男の色気のある声だった。




 つまりいい声だということだ。




 「どうも、ロネです。」

 僕は、言った。




 「ロネちゃんね。弟から話はきいているよ。」

 アルルは、二っと笑った。




 僕はアルルの方をみた。




 アルルは恥ずかしそうにうつむいていた。




 「どうやら、アルルは君を気に入っているらしい。」

 マキさんは、言った。




 車に乗って、十分ほどすると車が止まった。




 「さあ、着いたぞ。」

 マキさんは、車を駐車場に停めて、言った。




 北欧の家のような建物が、待っていた。




 二階建てで、40坪ほどだろうか、二階と合わせると80坪ほどの広さの家だ。




 白い壁に黒色の切妻屋根の建物で、木材で作られたテラスとベランダがあり、お洒落な作りになっている。




 庭には、木々が植えられている。



 

「マキにい、送ってくれてありがとう。」

 アルルは、マキさんに、お礼を言った。




 「ありがとうございます。」

 僕はアルルに続けて、言った




 「好きでやっただけさ。」

 マキさんは、二っと笑った。




 車から降りる。




 ガチャ




 アルルは、木で作られたお洒落な玄関の扉を開いた。




 「さあ、ロネ入って。」

 アルルは、僕を手招きした。




 「おじゃまします。」

 家に入った。




 タッタっタッタ




 足音が聞こえた。




 「あら、アルルちゃん、おかえり―。」

 若い女が出て来た。




 「ただいま。」

 アルルは、言った。




 髪は肩ほどの長さ、たれ目で、口角の上がった唇、ギリシャ鼻の女だ。




 「僕の母さんだよ。」

 アルルはそっと僕の耳元で、囁いた。




 アルルの母は、僕たちの様子をみて、言った。




 「アルルのママの、マヤです。あなたは、アルルの友達のロネくんでしょう?よくアルルから話をきいているわ。」

 アルルの母のマヤは、微笑みかけた。




 「はい、仲良くしてもらってます。」

 僕は、返した。




 アルルは気恥ずかしい様子で、顏を真っ赤にしていた。




 「アルルはあなたの事が大好きで、お気に入りみたい。これからもアルルの事をよろしくね。」

 マヤさんは、にっこり笑った。




 「畏れ多いですが、よろしくされました。」

 僕は、苦笑いした。





 「僕の部屋で遊ぼう、ついて来て。」

 アルルは、玄関から、歩き出した。




 玄関を抜けて、エントランスを通り、待合室的なところを抜けると、二階へ続く階段をのぼった。




 二階に行くと、家族部屋のような広い空間に出ると、東側にある、扉の前でアルルは止まった。




 「僕の部屋は、この扉の向こうだよ。」

 アルルは、言った。




ガチャ




 アルルは扉を開けて中に入った。




 「ロネも入ってよ。」 

 アルルは、僕を部屋に招いた。




 部屋に入った。




 普通の部屋だった。




 むしろ、質素だった。




 ベッドと、テーブル、椅子、本棚、テレビ台のある部屋だ。




 机にはデスクトップPCが置かれている。




 本棚は、難しい本でぎっしりになっていた。




 3歳児が、一人部屋を持っているものだろうか?、何かがおかしい。




 「どう、僕の部屋。」

 アルルは、きいた。




 「いいね。」

 僕は答えた。




 「何して遊ぼうか―、ゲームでもしない?」

 アルルは、ゲーム機を指さした。




 どうやら、ミーロ星にもテレビゲームがあるようだった。




 しかし、みたことのない形状のゲーム機だった、コントローラは、だいたい、知っているものと似通った形をしていた。




 「いいね。楽しそうだ。」

 僕は、返した。




 アルルはテレビの電源を付けると、ゲームを起動した。




 「はい。」

 アルルは僕にコントローラを手渡した。




 「ありがとう。」

 僕は、言った。




 アルルはゲームが、異常に強く、上手かった。




 「上手すぎないか、強すぎないか。」

 僕は呟いた。




 「たいしたことないよ。」

 アルルは謙遜した。




 対戦では一度も勝てなかった。




 バトルゲーム、パズルゲーム、リズムゲーム、FPSで遊んだ。




 ネロ―星では、みたこともきいたこともない話や、設定で、キャラクターも知らないものばかりだったが、操作性や、ゲーム性は似通っていた。




 2時間ほど、ゲームで遊んだ。




 「ねえ、ちょっと、外にでよう、みせたい場所と物があるんだ。」

 アルルは、立ち上がった。




 「わかった。」

 僕はコントローラーを、机の上に置いた。




 アルルは家から出た。




 家の裏にある山の方へ歩いていった。




 山を数分ほど歩いたところに、建物がみえた。




 鉄筋コンクリートでできた、かなり大きめの現代シンプルモダン的な建物だった。




 一階建てで、広さは200坪程度かと思われた。




 アルルはポケットから鍵を取り出して、建物の入り口の扉を開けた。




 ガチャ




 「ひええ。」 

 僕は声を上げた。




 工房になっていた。




 ロボットが立ち並んでいる。




 刀や銃が、飾られている。




 大きな窯がある。




電動ノコギリ、高速切断機、ネジ回し、ドリルドライバー等の工具が置いてあった。




 後ろには試作品かと思われる戦車があった。




 扉で仕切られている部屋もあった。




 「凄いでしょ。工房なんだ、父さんがくれたんだ。」

 アルルは、自慢げに言った。




 「父さんがねえ。」

 僕は返した。




 「父さんは、鍛冶師でね、武器製造をしてるんだ。」

 アルルは言った。




 「へえ。」

 僕は、相槌を打った。




 3歳児に、工房を与えるものだろうか。




 「で、みせたいもの、なんだけれど―。」

 アルルは、奥の部屋から、丸い小さなボールを持ってきた。




 「なんだい、それは。」

 僕は、たずねた。




 「超小型水素爆弾の試作品だよ。材料さえあれば、水爆なんて簡単にできるんだ。」

 アルルは、にっこり笑って、爆弾を撫でた。




 大丈夫か?こいつは、病気だ。




 「へえ、悪用しないでくれよ。」

 僕は言った。




 「しないよ。父さんが、プルトニウム239やトリチウム、ウラン、リチウム、タングステンとかをくれるんだ。」

 アルルは、笑った。




 家族して、頭のネジが飛んでいる事が分かった。




 「はは、面白い父さんだねえ。」

 僕は、苦笑した。




 「だろ。」

 アルルは、えへん、とした様子だ。




 ミーロ星では、核兵器を一般人が所持することが許されるのだろうか。




 アルルの家族が特別なのかも知れなかった。




 しばらく工房の道具だとか、アルルの作った物をみて回った。




 アルルは喜々として、話をした。




 気付くと午後4時を回っていた。




 「そろそろ、時間だねえ。」

 アルルは、言った。




 「だね。帰らないと、親が心配するなあ。」

 僕は返した。




 工房から出て、アルルの家の庭に戻った。




 庭のベンチで、駄弁っていた。




 「おお、お前ら、そろそろ、帰る時間だろ、どうする。」

 マキさんは、僕たちを見かけると、声をかけた。




 「はい、そろそろ帰ります、よろしくお願いします。」

 僕は、言った。




 「わかった、車を出すよ。」

 マキさんは、駐車場の方へ向かった。




 「僕も、ついてくよ。」

 アルルは、マキさんの後をついていった。




 車に乗った。




 保育園の前で停まった。




 「ここで、いいんだよね。」

 マキさんは、確認した。




 「はい。迎えがもうすぐ来ると思います。」

 僕は言った。




 「あ、あれ、ロネの家の車じゃない。」

 アルルは、駐車されている僕の家の車をみつけて、指さした。




 「うん、そうだ。じゃ、帰るね。今日はありがとう。」

 僕は車のドアを開けて降りた。




 「今日は、ありがとう、楽しかったよ、じゃあね。」

 アルルは、車の窓を開けて、手を振った。




 今日は楽しかったなあ。




 車に揺られながら、家に向かった。


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