11 バブぅ!立って歩けるように、なりました。
「おい、いま、ロネが寝返りを打たなかったか!?」
父は、興奮した様子で、嬉しそうに言った。
「ロネちゃん、すごい!!!寝返りが打てるようになるなんて、えらい!!!。」
母は喜んで、にっこりと笑って、僕の頭を撫でた。
大袈裟だな。
寝返りを打っただけで、褒めすぎだよ。
厭な気はしなかった。
なんだか、照れる。
母は、うれしそうに母子手帳に、記録していた。
「ロネに、よだれ掛け、作ったの。あげるわ。」
母は、僕の首に、かわいい、林檎の柄の入った、よだれ掛けのスタイを掛けた。
僕、よだれ垂らしてたか?
赤ちゃんの身体になってから、頭では、わかってんのに、身体は言うこと、きかないんだよね。
母は、僕の服も手作りで作った。
どうやら、母は、洋裁ができるようだ。
「母さんは、ああみえて、ファッションデザイナーなんだよ。」
父は、言った。
僕が寝ている間に、仕事をしていたのだろうか。
起きていようと、思っても、眠くなる、赤ちゃんの身体というのは、正直だ。
僕が、母さんの仕事の重りになっていないだろうか、と心配になった。
4月27日、土曜日。
「ロネが、ずりばい、してる!!!。」
母は、歓喜の声を上げた。
ようやく、身体を動かして、移動できるようになった。
ずりばいってのは、ほふく前進の事だ。
筋肉が鍛えられてないので、思うように身体を動かせないが、自分で動きたい、動けるようになりたい。
「父さん、ロネが、頑張るところみて、泣いちゃいそうだ、グスン、偉いぞロネ。」
父は、僕が、ずりばい、しているのをみて、感動していた。
大袈裟だ。
さらに、8日後、5月5日、日曜日―
「ロネが、座っている、だと!!!凄いじゃ、ないかロネ!!!。」
父は、座っている僕をみて、驚いた様子で、目を丸くした。
座るのに成功したぞ。
もう、だいぶ、筋肉の方も鍛えられてきた。
ずりばいも、安定してきた。
「かわいい、かわいいロネ!!!、なんて愛らしいの、凄いわ、座るだなんて。」
母は、座る僕を褒めちぎり、撫で散らかした。
褒めすぎだよ、母さん、なんだか、照れるなあ。
嬉しくなって、にっこり笑った。
「まあ、なんて、愛らしい笑みなの。天使!!!もしかして、天使なの!?」
母は、僕を優しく抱きしめた。
「こいつは、かわいすぎる。」
父は、驚愕の表情で、顔を逸らした。
親バカだね、この人たち。
5月6日、月曜日
「ロネも、座れるようになったんだし、そろそろ、離乳食、食べさせてみようかしら。」
母は、父の方をみて、言った。
「いいね。栄養も摂れるし、やってみよう。」
父は、返事した。
どうやら、離乳食を食べさせられるようだ。
「あたしは、ロネを抱っこしておくから、あなたが、作ってくれないかしら。」
母は、提案した。
「わかったよ。」
父は、引き受けた。
テッテレー!!!
父は、ニ十分くらい、で十倍粥を作った。
「ほら、おたべ。」
母は、小匙一杯程度の、白いドロドロした擦りつぶされた十倍粥を僕の口に当てた。
まずそう。
だけど、食べないとな。
よし。
「あーん。」
母は、僕の口にスプーンを入れた。
「おえ。」
吐き出してしまった。
どうして?
食べたいのに、吐いてしまう。
本能的に、舌が拒絶してる。
赤ちゃんの中には、固形物を舌が拒絶する本能が残っている場合があると、本で読んだ事があった。
どうやら、僕には、本能が残っていたようだ。
「あれ、美味しくなかったかな?ごめんね。」
母は、しょんぼり、した。
「最初は食べてくれない場合も、結構あるみたいだよ。」
父は、言った。
「そっか、そうだったね。ま、めげずに、あげていくか。」
母は、気を取り戻した。
5月11日、土曜日。
「ロネが、美味しそうに、お粥を食べているぞ!!!。」
父は、興奮した様子で、叫んだ。
「ええ。とてもいい子ですわよ。」
母は、僕の口に十倍粥を乗せたスプーンを入れて、言った。
モグモグ。
5日ほど前まで、は、すぐに吐いてしまっていたが、どうやら、大丈夫になったようだ。
よかった。
食べられるようになって。
母も父も、喜びすぎだ、僕は、見世物じゃないぞ、まったく―、僕が当たり前の事をしただけで、飛び跳ねるようにして、喜ぶ両親をみて、おかしな、気持ちになった。
ただ、お粥を食べただけじゃないか。
6月29日、土曜日
「ロネが、ハイハイで、歩こうとしている!!!、凄い、頑張れ、ロネ。」
母は、僕のハイハイを応援した。
四つん這いで、歩くのは難しいな。
9日前、お尻で歩く、いざりばい、というのは、できるようになったのだけれど、四つん這いとなると、腕の筋肉も使うし、バランスを取るのも難しい。
どうにか、四つん這いになって、一歩一歩前に、進む。
よいしょ、よいしょ―、
「ロネ、いい調子だぞ。もう、ハイハイができるようになったのか。」
父は、僕のハイハイをみて、目を輝かせ、感心した様子で言った。
「ロネ、ついに、ハイハイが、できるようになったのね!!!」
母は、感動していた。
「こっちだよ、ロネ、母さんと父さんの所へ、おいで。」
母は、僕を呼びました。
よいしょ、よいしょ―、
夢中になって、ハイハイした。
よし、付いた。
「ロネねえ。」
母は、僕を抱き上げた。
「偉いぞお、ロネ。」
父は、僕の頭を撫でた。
8月11日、日曜日
ものに捕まって、歩けるようになった。
「おちゃあちゃん、おとおちゃん。」
ある程度、話せるようにもなっていた。
「おお、おちゃあちゃんだよお。かわいいねえ、よしよし。」
母は、僕の頭を撫でで、抱きしめた。
「おちゃあちゃん、好き。」
僕は、言った。
「おちゃあ、ちゃんも、好き。」
母は、返した。
「おとうちゃんも、好きだぞ。」
父は、恥ずかしそうに言った。
「おとうちゃん、好き。」
僕は、言った。
父は、顔を赤くして、顔を背けた。
11月15日
「よし、こっちだ、ロネ。」
母と父が呼ぶ声がきこえる。
ひとり歩きできる段階まで来ていた。
僕は、力強く、歩いていく。
母と父の元に向かって、行く。
ぎゅ。
「よく、出来ました。」
母は、僕を抱きしめた。
ついに、僕は、立って、歩けるようになったのだ。
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