10 2023年???ミーロ星???知らない星に、産まれ変わったみたい。

「退院おめでとうございます。」

 医者の男は、言った。




 「おめでとうございます。」

 助産師の女は、花を贈った。




 「ありがとうございます。」

 母は、笑った。




 僕は、母に抱っこされ、病院を出た。




 ブウン。




 車が、待っていた。




 「さあ、乗って。」

 父だ。




 母は、僕を後部座席のチャイルドシートに乗せて、隣に座った。




 車に揺られている。




 外の景色がみたいが、首が据わっておらず、チャイルドシートに固定された状態では、みれない。




 しばらくして、車が止まった。




 「付いたぞお。」

 父は、車から降りた。




 「ここが、私たちの家だよお。」

 母は、僕をチャイルドシートから降ろして、抱き上げた。




 車の外から、甘い果実に香りがした。




 いい匂いだ。




 母に抱っこされて、外をみると、果樹園が広がっていた。




 広い、広大な土地だ。




 林檎、蜜柑、葡萄、梨、檸檬、さくらんぼ、すもも。




 様々な果樹が、立ち並んでいた。




 ビニールハウスで育てられている場所もある。




 思っていたより、外は寒い、冬だろうか。




 しかし、変だ。




 旬の季節の異なる、果物がどうして、同じ時期に、実っているのか?




 わからない。




 青い林檎、黄色い林檎、紫の林檎???




 奇妙な色の林檎が実っている。




 もしかすると、この世界は、転生前の世界とは、違うのかも知れない。




 家は、豪邸だった。




白い洋館で、貴族が住むような城であった。

 



 左右対称で、バロック式建築のようであった。




 シュヴェル二ー城や、シャンボール城に外観は似ていた、大きさは十分の一程度で、三階建てだ。




 庭は、フランス庭園になっていて、外に果樹園が広がっている。




 金持ちなのか、僕の親は―。




 家の中に入ると、豪華で絢爛な装飾は殆どなかった。




 機能性に富んだ家だった。




 広い玄関があって、明りは、LEDの蛍光灯であった。




 壁の色はお洒落で、ライトグリーンや、ネオン、ブラウンであった。




 部屋の数は、どれくらいあるだろうか。






 行く、所どころに、服や、布が飾られていた。




 母に抱きかかえられた状態で、通路を通っていた。




 階段を上り、三階の通路に出た。




 母と父と僕は、お洒落な、水色の扉を開けると、広い寝室に入った。




 大きなベッド一台と、普通のサイズのベッドが二台ある。




 テレビとソファが置かれている。




 白い壁に、天井の部屋だ。




 パッ、シャァアア。




 「いい日差しね。」

 母は、窓のカーテンを開けて、日を浴びた。




 窓からは外の景色がみえて、ベランダにつながっている。




 「だね。そろそろ、僕は仕事に戻るよ。」

 父は、部屋を出て行った。




 「一緒に寝ましょうか。」

 母は、僕をベッドに寝かせた。




 「父さんは、この家の果樹園の経営者なのよ。」

 母は、言った。




 ききたい事が山ほどあるが、生憎、今の僕は、発音する事が出来なかった。




 赤ちゃんってのは、不便だなあ。




 しばらく、母と一緒にベッドで寝ていた。




 途中で、腹が痛くなった。




 トイレだ。




 赤ちゃんというのは、不便だ、オムツにするしかないのだ。




 ブチュ、ブリ。


 


 あ、出ちまったな。




 悪い母ちゃん。




 「くさ。やったな。」

 母は、顔を少し歪ませた後、笑った。




 「オムツ替えまちゅよお。」

 母は、僕のオムツを取って、新しいオムツに付け替えた。




 僕は、オムツを替えてもらうのに、抵抗もせず、じっと、していた。




 「ロネは、賢いわねえ。赤ちゃんにしては、物分かりが良すぎな気がするわ。」

 母は、僕の様子をみて感心した様子だ。




 ごめんね、かあさん。




 「できまちたよお。じっとできて偉いでちゅねえ。よちよちい。」

 母は、僕の頭を、撫で撫でしてくれました。




 オムツを替えてもらっただけで、撫でられる自分って―。




 でも、いいか、赤ちゃんなんだし、褒めてくれる母親でよかった。




 昼になると、母のおっぱいを吸った。




 おっぱいの味は美味しく感じられた。




 甘くて、まろやかだ。




 「よちよちい。」

 母は、僕が、おっぱいを吸うのを、じっとみて、身体を支えてくれた。




 ごめん、母さん、おっぱい、いただいてます。




 赤ちゃんになって気づいた事だが、やはり、母親というのは、偉大だ。




 夕方になると、父の声がきこえた。




 「ご飯できたぞお。」

 どうやら、夕飯を作っていたらしい。




 母は、僕を抱っこして、下の階に降りた。




 リビングとキッチンのある、部屋に入った。




 いい匂いがするが、もちろん、赤ちゃんの僕は食べられない。




 「さあ、座ってポーラ、もう出来てるよ。」

 父は言った。




 「いつもありがとう。」

 母は、父に感謝の言葉を述べると、椅子に座った。




 仕事を終えて、僕のお守りをする、母の為にご飯を作っていたのだろうか。




 なかなかに、できた男だと思った。




 両親がご飯を食べている間、僕は、母さんの服の中にいた。




 「しかし、全然泣かない子だな。」

 父は、不思議そうに言った。




 「ええ、でもとても元気よ。赤ちゃんの落ち着きだとは思えないけれど、不思議な子ねえ。」

 母は、僕を撫でで言った。




 「まあ、でも、こんなにかわいいんだ。かわいいし、利口だなんて、いい事だ。」

 父は、嬉しそうに誇らしそうに言った。




 「そうね。」

 母は、返した。




 あまり泣かないとは言っても、さすがに、身体が赤ん坊になっているだけはあって、ちょっとした事で、感情が制御できず、声を上げてしまうことはある。




 身体が小さく、脆い赤ちゃんの身体では、ちょっとした事でもコワいし、両親の助けなしには、生きていけないのだ。




 両親は食事を終えた。




 「ねえ、風呂、沸けてる?」

 母は、風呂場をみていった。




 「沸けてるよ。」

 父は言った。




 「あたし、先、入るわよ。ロネの面倒みててね。」

 母は、僕を父に手渡した。




 「ああ、勿論さ。」

 父は、僕を受け取った。




 「ロネえ、いい子だぞお。父さんが抱っこしてやるからなあ。」

 父は、僕を優しく抱っこして、揺らした。




 父さんは、僕を抱っこして、優しく撫でた。




 しばらくすると、母が風呂から上がり交代した。




 父さんも風呂を上がった。




 「ロネもお風呂入るか。」

 父は言った。




 「沐浴ってやつね。」

 母は、返した。




 ポチャン。




 赤ちゃん用のバスタブの中に、入れられた。




 気持ちい。




 優しく、身体を洗ってもらった。




 「大人しい子ねえ。」

 母は、言った。




 「いい子だ。」

 父は、にっこり笑った。




 風呂を上がると、パジャマに着替えた。




 寝室に入った。




 母は僕を大きなベッドの真ん中に降ろした。




 母と父もベッドに寝転んだ。




 母が右横で、父が左横で、僕が真ん中になっている。




 母と父に挟まれて、僕は、布団にくるまれた。




 「おやすみ、ロネちゃん。」

 母は、僕に優しく触れた。




僕は、眠りについていた。




 次の日の朝。



「いい天気ね。」

 母は、僕を抱いて、外に出た。




 外では、父が、仕事をしていた。




 果樹園をみていた。




 白く丸い球体の顔に、水やり如雨露と、草刈鎌、肥料遣り、土耕し、実を採れる形態に変化できる手が、ついた、車輪の足で動く、ロボットが、果樹園の仕事をしていた。




 凄い、ロボットだ。




 ネロ―星にいた時には、なかった―。




 愈々、生まれ変わった時代と、場所が、わけわからなく、なってきた。




 「いつ、みても凄いロボットねえ。父さんが開発したのよ。」

 母は、微笑んだ。




 どうやら、父さんはエンジニアらしい。




 「父さんは、いろいろ作るのが得意でねえ。バイオテクノロジーが専門らしいわ、まだ赤ちゃんの、あなたに言ってもわからないか―。ふふふ。」

 母は、言った。




 未だに僕は、寝返りを打つことはおろか、首が据わってないため、首を持ち上げる事さえできなかった。




 テレビで、放送されているコマーシャルも、街もニュースも、ききおぼえのないものばかりだった。




 「ミーロ星から打ち上げられた人工衛星 星夢 は、無事、大気圏を抜け、軌道に乗りました。」

 ニュース番組で、ミーロ星と、いう言葉が出て来た。




 ミーロ星?




 きいた事のない星だぞ。




 僕の住んでいた星と違う。




 愈々、違う星に転生した事に気が付いた。




 「2023年12月3日、日曜日のニュースをお届けします。」

 テレビから、声がきこえる。




 産まれた日から逆算すると、11月29日が僕の誕生日ならしい。




 2023年???




 僕が、生まれ変わる前は、2041年だったぞ?




 時代が巻き戻っているのか―。




 わからない、同じ暦を使っているとも、限らない。




 同じ言語を使っている事だけは確かだ。




 僕は生まれた瞬間、助産師さんや、両親が話す事を、理解できた。




 謎は、深まるばかりだ。



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