6 家族との再会と、父さんの死。
「で、家族と恋人の場所が知りたいんだってねえ?」
神通力者の女は、話を切り出した。
「はい。」
僕は、答えた。
「君の家族と恋人の居場所、確かめてやっても構わない。あたしは、世界中で起こっている事の、殆どがみえて、きこえているからね。」
神通力者の女は、人差し指と中指を額に当てると、目を閉じた。
妙な緊張感が漂っている。
「あ、あった。みつけた、君の家族と恋人。生きてはいるみたいだよ。」
神通力者の女は、額から人差し指と中指を、そっと、離し、目を開けた。
「ほ、ほんとですか。よかったあ。」
僕は、胸を撫でおろした。
まだ、自分の目で確認できていないが、神通力者によると、家族と恋人は無事であったらしい。
「どこにいますか?教えてください。」
僕は、きいた。
「ああ、教えてあげるよ。」
神通力者の女は、答えた。
「居場所がわかれば、僕の超能力で、君の家族と、恋人のところまで、送ってあげるよ。」
超能力者の男は、僕と神通力者の女を交互にみて、言った。
超能力者の男は、瞬間移動のような事もできるらしかった。
「いんですか?是非お願いしたいです。」
僕は、返し、お願いした。
「容易い願いだよ。」
超能力者の男は、黒い帽子を一指し指で、ちょっと、上げて、答えた。
「じゃあ、いくよ。えいっ。」
超能力者の男は、僕の肩に右手を、載せた。
魂が分離し、幽体離脱して、自分が自分を別の自分として認識しているかのような奇妙な感覚に襲われた。
「え、ここはいったい。」
目を見開いた。
広場とは全く違う、どこか、知らない地下通路の避難場に僕たちはいた。
超能力で移動してきたのは、僕と、超能力者の男と、神通力者の男と、魔術師の
男の4人だった。
「す、すごい、今のが、超能力。」
僕は、瞬間移動?を体験した。
「すごくはないよ。超能力者には容易い事さ。」
超能力者の男は言った。
「君の家族だけれど、実は―、」
神通力者の女は、話し出した。
「実は、どうしたのですか。」
僕は、きいた。
「あれは、もしかして、龍一じゃないかい。」
通路の左脇から声がきこえた。
きいた事のある声だ。
母さんなのか?
通路の左脇をみると、そこには、家族の姿があった。
「兄さん、生きてて良かった。」
弟の
「ああ、良かった、無事だったんだね。」
僕は、家族の方へ駆け寄って、言った。
「心配していたよ。」
母の
あれ、でも、父さんと、妹がいない―。
「父さんと妹は。」
僕は、きいた。
「父さんは死にかけだし、妹は、治療されてるが、目を覚まさない。」
母は、沈んだ声で言った。
「え。」
僕は、絶句した。
「龍一を、父さんと亜衣梨の所に連れていきましょ。」
姉の
「そうね。」
母は、僕をみて、歩き始めた。
母の後をついていくと、治療場に来た。
負傷した、怪我人で溢れかえっていた。
「あー、だる。あたしが、こいつら全員、診てやんなきゃなんねーのかよ。感謝しろよな。まったく。」
女の気怠い声がきこえた。
ピンク髪、後ろで、きっちりとお団子結びにして、ナース服ドレスを着た、身長160Cmほどの、女が患者をみていた。
看護師だろうか、医者だろうか。
「なんだい、あんたら、うちになんかようかい。」
看護師の女は、僕をみた。
「花央梨の容態は、どうでしょうか。」
母は、きいた。
「ああ、あの子かい、しばらくは、寝かせておく事だねえ。生きていたのが奇跡だよ。あたしの治癒魔法がなけりゃ、死んでただろうねえ。」
看護師の女は、答えた。
「あんたらの父親の朱ノ
看護師の女は、気の毒そうに、奥の、ベッドをみた。
ベッドでは、患者達が、寝込んでいた。
「花央梨。」
僕は、妹の寝込んでいるベッドに近づき、名前、呼んだ。
「お兄ちゃん。」
妹は、僕に気が付くと、にっこり、笑った。
だいぶ、状態はいいようだった。
「元気そうで良かった。」
僕は胸を撫でおろした。
「
姉の花央梨は、不思議そうに、ピンピンしている亜衣梨をみて、いった。
「父さんは。」
僕は、辺りを見渡した。
「こっちだよ。」
姉さんは、父さんの寝込んでいるベッドを指さした。
ハっと息を呑んだ。
ベッドの上には、みるも無惨な、黒焦げになって、痛ましい灰とならんとしている、父さんの姿があった。
「父さん。」
思わず、悲痛な声で、父さんを呼んだ。
「ああ、生きていたのか、龍一や。」
父さんは、今にも死にそうだ、最後の力をふり絞って、僕に声を掛けた。
「はい。」
僕は、行った。
「ちょっと、こっちに寄ってくれんか。」
父さんは、僕をみて、微笑んだ。
「いい子だ。よしよし。あとの事は、お前に任せたぞ、龍一、家族をお前が守るんだ。」
父さんは、僕の頭を、ボロボロの真っ黒な手で、優しく撫でた。
「グスん、父さん―、俺、」
僕は、父さんの右手を手を強く握った。
父さんの左手が、僕の頭から、だらりと落ちた。
生気が感じられない。
呼吸が止まった。
「父さん?」
僕は、父さんの死を感じ取り、きょとんと、うつろな目をした。
「お父さん!!!」
母さんは、泣き叫びそうな感情を抑え、唇を嚙み締めた。
「えーん、父さんが死んじゃったよおおお。」
妹は、涙を流し、泣いた。
「あーあ、逝っちゃったんだ。寂しくなるわね。」
姉さんは、寂しそうに落ち込んでいた。
「ごめん、父さん、僕たちを庇って、ああ。」
弟は、父さんの死にどこか、責任を感じているようだった。
「父さんは、家族の為に、死んだのか?」
僕は、弟をみた。
「ああ、僕たちの為に、身体を張って盾になったんだ。」
どうやら、父さんは、滅死壊から、家族を守る盾となって、大きな怪我をしていたらしい。
「父さん、俺、家族を守れるかな。」
僕は、泣き悲しみ、家族の声をききつつ、父さんの穏やかな死に顔をみていた。
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