3 ギガンテスを一蹴りで、仕留めた魔法少女と、化け物どもを、焼き切った勇者。

賃貸の今住んでいる二人暮らしの家に行くと、誰もいなかった。




いなかったというのか、家が破壊されていた。




郊外の町だというのに、建物の殆どは、破壊され、瓦礫になっていた。




住み始めて、半年ほど、だったし、別に、思うところはなかった。




杏桜衣が上手く避難できていればいいけれど―。




次に、実家に行った。




生まれてから、大学を卒業するまでの22年の間、ずっと住んでいた家だ。




大好きな家だ。




大好きで、大好きな、思い出の詰まった大切な、家族の一人だ―、




なのに、




 「酷すぎるよ。」

 僕は、小さな声で、叫んだ。




無惨にも、瓦礫と化していた、かつての、大好きだった姿は、死の灰色に染まり破壊されて死んでいた。




 住み慣れた街も灰と化し、美しかった情景は、変わり果ててしまった。




許せない




 悲しみで、涙が自然と流れて来た。




 せめて、家族が無事だといいけれど―。




「地下施設に行ってみようか。」

 魔術師の男は言った。




地下施設に向かおうとした時、背後で、凄い音がした。




「がああああ、ごああああああ。」

後ろを振り返ると、全長20mは超えているであろう、一つ目の青い巨人が唸り声を上げて、僕たちの後を追って来ていた。




「で、でかすぎる。」

僕は、巨人をみて、戦慄いた。




 バッシイイィンンッ。




 「え。」

 僕は、ポカンと、異様な光景をみていた。




 閃光が、巨人の心臓を貫通したのである。




ドスンッ。




 巨人は吹っ飛び、地面に倒れた。



 胸元にデカリボン


 三段フリルでピンク色ドレス


 ゴスロリファッションだ。


 金髪ツインテールで、美少女である。


 コスプレイヤーだろうか?


 

 美少女は、宙を舞い、巨人の上に飛び降りた。




 「やあ、やあ、君たち、魔法少女の見参だよ。ほらほら、拍手は?」

 青い巨人の上で、華麗にポーズを決め、キメ顔で、腰に左手を当て、右手を目元でピースして、にっこり笑った。



 

 アイドルか、何かのつもりだろうか、日曜の朝にやっている、魔法少女か、何かだろうか?



 パチパチパチ。




 「はいはい、流石は魔法少女だね。ギガンテスも一蹴りで、バラバラだ。」

 魔術師の男は、拍手して、魔法少女?に向かって、言葉を返した。




 「世界の平和は私たちが、守るのだ。」

 魔法少女は、ギガンテスから、三回宙返り、四回ひねりで、飛び降りた。




 体操選手か!?




 思わず心の中で呟いた。




 にしても、20mはあるであろう、巨人の怪物を、閃光のような速度で蹴り倒したのか、凄いな、本当に、魔法少女なのかもしれなかった。




 ギガンテスは、やがて、光の粒になっていき、粒は、バラバラに飛び散って、なくなってしまった。




 「浄化完了と。」

 魔法少女は、離散していく、色とりどりの光の粒を見送っていた。




 「で、彼は一体、誰。」

 魔法少女はたずねた。




 「道路で、滅死壊に襲われているところを助けたんだ。家まで送ったんだが、案の定、家は壊滅されてたみたいだ、今から地下施設まで送ってやろうとしてたんだ。」

 魔術師の男は答えた。




 「へえ。かわいい子だね。よしよし、私たちが来たからには、もう大丈夫だからねえ。」

 魔法少女の、お姉さんは僕の頭をポンと撫でた。




 子供扱いされてる?




 どうして。




 しばらく、歩いていると、道中で、滅死壊の化け物どもを相手に戦う、男がいた。




 龍の刺繍が胸と腕の当たりに施された、暗い青色のロングコートに明るい水色のロングシャツを着て、下は、灰色のGパンを履いている、若い男だ。




 右手に、剣を、左手には、盾を持っている。




 魔物や魔王と戦う、ゲームに出てきそうな勇者に似ていると、思った。




 しかし、魔術師や魔法少女と出会ってしまっている今、疑いようはなかった。




 多分、勇者だ。




 凄まじい斬撃で、辺りの獰猛な、巨大蛇のバジリスクや、巨人ギガンテス、様々な動物の顔をした獣人たちを、斬り倒し、吹っ飛ばした。




 ズシャーン!!!スパン!!!




 辺りにいた、100体はいたであろう、滅死壊の化け物どもを、1分ほどの、あっという間に片付けてしまった。


 


 「ふう、伝説の勇者に少しは近づけたかな。」

 勇者の男は、右腕で、額の汗を拭って、周囲を見渡した。




 「お、おーい。」

 勇者の男は、魔術師の男と、魔法少女のお姉さんに気が付くと、手を振った。




 「よう、流石だな。一瞬で片付けちまうとは。」

 魔術師の男は、勇者の男の肩を叩いた。




 「僕なんて、まだまだですよ。」

 勇者の男は謙遜した。




 「殊勝な人だなあ。」

 魔法少女のお姉さんは、感心した様子で、勇者の男をみた。




 「ところで、そちらの、精悍な青年は一体、どちら様で。」

 勇者の男は僕をみて、言った。




 「ああ、滅死壊に襲われていたのでな、地下施設まで、送っているところなんだ。」

 魔術師の男は答えた。




 「なるほど!!!。では、早速参りましょう、自分も地下施設に行くつもりだったので。」

 勇者の男は、手を鳴らすと、ウキウキとして、歩き出した。




 「はじめまして、勇者と言われてますが、まだまだ未熟ものなんです、どうぞよろしくお願いします、精悍な青年。」

 勇者の男は、歩きながら、僕をみて、言った。




 「―、どうも、よろしくお願いします。」

 なんと返してよいか分からなかったが、よろしくを、言っておいた。


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