戦争
蓬葉 yomoginoha
戦争
戦争が、突如目の前に現れた。
もちろん、実際にはそんなことはなく、知らないだけで色々な動きがあったのは間違いない。しかし、普通に生きている人々は、そう思ったのではないか、そう思う。
ロシアは誰でも知っている国。ウクライナは、場所まではわからずとも名前は知っている国。日本ではそういう認識だろうけれど、これを機に、日本人は両国ともに誰でも知っている国になった。
第三次世界大戦になるか。
きっと多くの人が考えていると思う。この問いについては、ほとんど多くの専門家や有識者が、可能性は低いが何とも言えないと答えるだろう。これは当然のことだと思う。不用意な発言は昨今のご時世許されないし、まだまだ俯瞰的に見ることができるほど状況がわかっていないから。
ただ、かつての世界大戦のとき、例えば第一次世界大戦が起こった当初、世界の人々が「私たちは世界大戦の最中にいる」と頭を抱えていたかと言うと、恐らくそうではない。第二次世界大戦も、あるいはそうだったのではないか。
また、戦争が始まったことが明らかとなっても、人々がまだ楽観的だったのは、第一次世界大戦のとき、「クリスマスまでには帰ってこれるだろう」と言った兵士がいたといわれることからも明らか。真偽は定かではないけれど、ただ、このあと何十年も続く戦争、冷戦がはじまったとしても、今の私たちにそれを知る術はない。
経済制裁が続く。「返り血」とメディアでは表現しているけれど、殴る拳が痛いように、制裁をする側にも相応の代償が起こる。戦争が利益をもたらしたのは、はるか遠い昔の話なのかもしれない。
また、外的な危機は内側の結束を強めてしまうかもしれない。嫁と姑が唯一する会話が近所の人の悪口だったりするように。だからといって経済制裁は意味がないとか、すべきでないとは思わないけれど、副作用は把握しておかなければ。
日本の話で言えば、これを機に中国が「ロシアが許されるのならば」と行動するのではないか、と考える人も多い。例えば台湾を占領したりしないか、と。台湾の人々の気持ちを考えずに、自国のことだけ考えて。さてはともあれ、中国の首脳部がそこまで短絡的でないことを祈るばかりだ。対して、北朝鮮はミサイルらしきものを数発発射している。彼らは短絡的だったらしい。
日本は憲法に平和主義を掲げている。それは悪いことではない。いいことだ。
たくさんの犠牲の上に政府が存続している以上、そこまでしなければ国民に、また外国に示しがつかなかったのかもしれない。幸いにも日本は平和のもとで70年以上続いてきた。
けれど、日本は、平和主義を掲げるあまり、戦争について沈黙した。沈黙ならまだいい。酷い場合には「無関心であれ」、「忌避せよ」とでもいうような風潮が舞い降りた。それはあたかも、「習っていない漢字は使うな」というのと同じだ。なにかおかしい。もちろん平和主義をひっ下げろとか、徴兵制を復活させよとか、そんなことを言うつもりはない(いざとなれば戦えるくらいの身体づくりとかはしておいた方がいいかもしれないけれど……)。でも、平和については学んだ。今度は戦争についても学んでいいんじゃないか、そう思う。
日本について言えば、コロナ禍に加えて地震災害も起こった。今後しばらく(この話は3月17日に投稿しています)は予断を許さない状態だ。そんな中にあって、私たちは何が出来るか、何をすべきか、政府は何をなすべきか、考える時が来ている。
私たち一般人にできることは酷く限られている。何もできないから、日々の仕事を頑張る、それでもいいと思う。ただ、例えば寄付をするとか、ちょっとニュースを気にかけてみるとか、歴史を見直してみるとか、それだけで世界は変わる。学生だったら、専門外だけれど入門書を読んでみるとか、語学を勉強するとか、もちろんそれでもいいはず。何もしないより、絶対にいい。
世界情勢は固定されたように見えた。しかし、その実、流動的だったことが今回の事で、だれの目にも明らかになった。
自分の生活を優先する、その間に少しだけでも外の世界のことを気にかけてもよいかもしれない、そう思った。
参考文献
黒川裕次 『物語 ウクライナの歴史 ヨーロッパ最後の大国』(中公新書、2002)
小泉悠『現代ロシアの軍事戦略』(ちくま新書、2021)
千々和泰明『戦争はいかに終結したか-二度の大戦からベトナム、イラクまで』(中公新書、2021)
多湖淳『戦争とは何か-国際政治学の挑戦 (中公新書)』(中公新書、2020)
※中公新書が多いですが、筆者自身はなんのかかわりもありません。親戚や知人が中央公論社で働いているとか、自分が働いているとか、実は宣伝を頼まれたとか、一切ないです。単純に、難しすぎず、でもきちんとした知識が得られると思っているのと、歴史分野の本が多いので、好きなだけです。
戦争 蓬葉 yomoginoha @houtamiyasina
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