第7話 第1波

 西方極楽浄土から最も近い惑星の名は惑星『メーテル』。


 機械人間が人間を支配し、人間狩りと称して平然と殺戮が行われている法的にも人道的にも最悪な星だ。地球と言われる星も同様に最悪らしい……。この星の消滅を願う者こそあれ、救うことなど考えられない者が多いであろう。だからといって阿弥陀仏の悪行を許すことも出来ない。ダメだから無くなれとの思想は危険であることはブッダにもなれば承知のはずである。悪人とて守るのが仏教の教えである。


 惑星メーテルの空にぽっかりと穴が開いた。機械人間達は非常時を感じ、穴を目指してミサイルを打ち込んだ。


 惑星メーテルを治めるブッダが先陣を切ってワ―プから飛びだした。


「やめ―い、馬鹿者達め!」

さすがの機械人間もブッダには一目置いていた。


「ブッダ。何事だ!」機械伯爵が叫んだ。


「惑星メーテルの存亡の危機だ」メーテルブッダは答えた。


「我々に何ができる?」機械伯爵


「無事を祈ることだけだ!」メーテルブッダ


「………」機械伯爵


 上空の時空の穴からは次々とブッダが飛んで出てきていた。それは見事な光景で人々は空を見上げて感嘆した。全宇宙の神様たちだが連なり神々し光を放っていた。



 惑星メーテルのブッダは100万人を納める広大な平地を用意し、陣形の鶴翼を指揮した。100万人が揃うまで2時間。光、到達まで3時間。予想に反し光がスピードを上げていた。


「ワープがなかったら間に合わなかった…」

ブッダ達は口々に囁き合った。


 涅槃ブッダがモグを連れて惑星メーテルにたどり着いた。


「ワープがなかったら間に合わなかった……如来たちの言うとおりであった……我が愚かさを恥じる……」


「恥じることはないですよ。ブッダ達はあと30分で揃います。光は60分後です。間に合ってるじゃないですか?あそこで自分の意見をゴリ押ししなかったのは立派なことだと思います」


「モグ……おまえはいつも僕の味方をしてくれるな?」


「いや、思うことを思いのままに言える関係だというだけのことです」


「ありがとう。今からが本番だ。頼りにしている!」


「はい」


 

 勝負は阿弥陀仏の光 vs 涅槃ブッダのパワー+100万人ブッダのパワーである。


力 対 力 という図式で単純ではあるが実はそれが一番難しい。強い者が必ず勝つなら勝負ではない。ただの茶番に過ぎない。


「残り30分で出来ること……」涅槃ブッダは考えた……。


「うむ。すべてのブッダで北半球の住民を南半球に移動していただけ!」


 陣形を整えつつあったブッダはざわめいた。


「もしもの場合、被害を最小限にとどめたい。皆様、お力をお貸しくださいませ!」


 涅槃ブッダは集合しつつあったブッダに土下座で額を地面につけお願いを乞うた。


 涅槃ブッダのその姿勢に、一人が飛び、一人が飛びしみんなが動き始めた。100万人のブッダがみんなで人口移動を行ったがさすが30分では全員とはいかなかった。……機械人間だけは残してしまった……


「ありがとうございます。さあ、時間です。陣形を取れ!」



 100万人のブッダが大きな陣形・鶴翼を形づくった。


 さあ、戦という名の遊びの始まりだ。





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