第6話 何度目かのチャンス
加藤さんはこっちを見て
「どうしたの?」
と言った。昔も今のその優しい顔は変わってないな。と思った。
「今までずっと言えなかったんだけど、」
声が震えているのを自分で感じた。でも今しか言えない。
「昔のこと、ごめんね。」
相手はなんのことか察しがついたようだ。
言わない方が良かったのかな。でももう遅い。私は返事を待つだけ。なのに、
私は少し泣きそうになった。一瞬雲が動いているように見えた。幻覚だろうか。こんな風に泣きそうになったのは久しぶりだ。加藤さんは困っている。泣きたくないのに。それから5分くらい経ってから落ち着いてきた。
ふと加藤さんの顔を見ると凄い優しい表情をして微笑んでいた。
「えっ?」
私がそう言うと、彼は
「いいよ」
と言った。
「えっ?」
もう一度聞き返すと
「だからもういいって!そんなに気にしてくれてたんだね」
とこっちを見た。
「なんか…変わった?」
昔より表情豊かになってるような気がする。
私がポカーンとしていると加藤さんは
「とにかく、仲直りしたことだし早く動いている人探そ!今頃誰か1人で泣いてるかもしれないじゃないか」
と明るく言った。
「…そうだね!」
時は止まっているのに私たちの周りだけ暖かい風が吹いているような感じがした。
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