17. 仲直り

「はぁ…はぁ…」

 志井しいさんの顔が見れなくて、思わず家を飛び出した。

『何、してんだろ…』

 どうせなら帰ろうかな…。

 夜空を見ながら、立ち止まる。

「いましたよぉー」

 アメの声が聞こえた。

 振り返ると、

「ゆーさんっ!」

 アメが笑顔でこちらに向かって来るので、反射で走り出した。

「まっ、待ってくださいよぉー」

 アメ、足だけは速いんだよな。昔から。

 徐々に近付く距離を感じつつ、前を見ると。

「し…ぃさんっ…?」

 何で…?

 勢い止まらず、そのまま志井さんに突っ込んでしまった。

 結果。

「大丈夫か…?」

 吹っ飛んだ筈のカラダが、志井さんによって直立できている。

「はい…」

 但し、

 志井さんとの密着度が、半端ない。

「大丈夫です…」

 反応してると思われたくないけど、反応しちゃってるから仕方ない。

 言わなきゃバレないと思ったけど。

「そうみたいだな…」

 志井さんは笑い交じりに言いながらボクの背中を叩いて、

「帰ろうか…?」

 耳元で囁く志井さんの声がいつもより優しくて、

「はい…」

 志井さんの背中をギュッと抱きしめたら、

須貝すかい、そろそろ離れようか…?」

 逃げようとするので、さらに抱きしめて「嫌です」って言いながら家路に着いた。

 志井さんが嫌がらずにいたのは、ボクが泣いていたから…?

 それとも…?

 いつもなら聞こえる志井さんの本音は、その時ばかりは聞こえなかった。

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