16. 天の言う通り

「ただいま…」

「おかえり」

 相変わらず、アメは異次元空間より訪れて、既にソファーで寛いでいる。

志井しいさんは…?」

 一緒じゃないのさ。

 見ての通り、ボクだけ帰って来た。

「常に、一緒にいるワケじゃない…」

 自分に言い聞かせるように言った。

「ゆーさんは、いいの…?」

 キッと睨み、

「いいんです」

 噛みしめながら答えると、アメは少し笑う。

「どれだけ好きなんですか…」

「うーん…」

 計り知れないほど好き。

 でも、今の志井さんは好きじゃない。

 好きだけど。

「でも、ゆーさんとのこと忘れてるんでしょ…?」

 はい。と完成した防具を渡される。

「うん…」

 志井さんからのプレゼント。

 ボクのことを想ってくれる気持ちは変わらないと思いたい。

「ゆーさん…」

 ツラい。

「ありがとう…」

 アメの言う通り、ボクのことはすっかり忘れてる志井さんをそれでも好きで。

 否定するように、志井さんが欲しがる言葉を言ってたけど。

 本当は、大好き。

 好き過ぎて、もう何が何だか…。

「ただいま…」

 ん…?

「おかえり」

 アメが代わりに返事をしたけど、志井さんがいる。

須貝すかい、どうした…?」

 志井さんはボクの泣き崩れている姿を見て、顔色が変わって近付く。

「な、何でもないです…」

 こんなに涙って出るものなのか。

 まだ止まらない涙を必死に堪えて、でも出て来るので止めようもなく笑いながら、

「本当に…何でもないんですよ…」

 何でもないことないけど。

 志井さんがそんな心配そうな顔してたら、そう言わざるを得ない。

 これ以上、迷惑かけたくない。

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