15. お疲れ様です。

「ただいま…」

 志井しいさんがぐったりと帰って来た。

 お店の出入り口から入っ…、そう言えば、魔方陣消しちゃったから自力で帰って来たのか。

「おかえりなさい」

 何事もなかったかのように無愛想に言うボクに、

須貝すかい、お前な…」

 志井さんは、半ば呆れ顔でその場に倒れ込むように寝転がる。

「あまりに腹が立ったので消しちゃいました」

 正直に言って、笑顔でかわす。

「そうか…」

 もう動く気もない志井さんは、怒る気力さえない。

 ボクの顔を見つめ続けてはいる。

 何か言いたげに。

「須貝…」

 ボクに向かって、手を伸ばす。

「何ですか…?」

 答えによっては、この手を拒否しますよ…?

「おなかすいた…」

 拒否。

 ボクは、志井さん専属のまかない屋ではありませんっ!

「痛っ…」

「隣の軽食屋で食べたらいいんじゃないですか…?」

 隣の軽食屋を指差して、再び閉店準備をする。

「叩かなくてもいいじゃないか…」

 ゴロゴロ転がりながら反動で起き上がる志井さんが、

「じゃあ、今日は食べて帰るからお先に…」

「志井さん、片付けてください」

 せめてゴロゴロしたところの床の掃除はしてください、ね。

「はい」

「はい…」

 志井さんに掃除機を強引に渡したら、素直に受け取った。

「アツ、呼ぼうかな…」

「呼ばないっ!」

 そんなことで召喚しないでくださいっ!

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