10. 武器屋のバイト

志井しいさんっ!」

 前よりタラシになってる気がする。

「セクハラですよっ!」

 そのうち訴えられるんじゃないかと思うくらいの距離感なので、無理矢理引き離す。

「いいじゃないか…」

 チッと舌打ちして、

須貝すかいって、どこがストライクなの…?」

 そもそも、ボクは。

「ゴメン…」

 言わなくてもわかっていただけて光栄です。

「志井さん、売り上げにもかかわることですから、ね」

「はい。はい…」

 不貞腐れて、床にゴロゴロしながら魔方陣を書く志井さんに向かって、

「最低ですね」

「はい…」

 否定しないのか。

「俺、最低だもん…」

 思いっきり、肯定するのもどうかと。

『だから、俺に構うな…』

 そんな言葉が聞こえたら、

「志井さん…」

 ツラくなる。

 ボクの居場所、なくなる気がして。

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