9. 漏れる声

「おはよう…」

 あれ以来、志井しいさんが挨拶以外というか業務連絡以外…雑談はあまりしてくれなくなった。

「おはようございます」

 だから、ボクも会話らしきものをしなくなった。

 元々、ココロの声が聞こえる特異体質だから、会話せずとも。

『あぁ、今日は可愛いコ来るかなぁ…』

 ダダ漏れなのである。

 志井さんの声を聴きたくなくても、聞こえる。

「はぁ…」

 また、言ってるよ。

 前以上に、女性を観る目がギラギラしているような気がしないでもない。

須貝すかい、どうした…?」

「どうもしません」

 でも、それなりに構ってくれる。

 構ってくれるだけ。だから。

「そう…?」

 でも、好き。

「はい」

 悔しいな。

 なんか負けた気がして。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る