7. 今のあなたに興味はない

「わざわざ来てくださったんですね…」

 すみません。と志井しいさんが言うので、

「志井さんが呼んだワケじゃないんですね…」

 ワザと言ってみたら、

「防具の注文はしたけど、配達は頼んでないぞ…」

 志井さんは耳元で囁く。

「試着をと思って、天之丞あめのじょうに渡そうとしたら既にいなくて…」

 水渡すいとさんは上目遣いで、

「追い掛けて来ちゃいました」

 我が父ながらムカつく。その笑顔。

「不具合あったら、天之丞に…」

「今回は、俺が作ったんだよっ!」

 アメも成長したんだな。

「スゴイな…」

 試作段階ではあるけど、志井さん好みのカッコイイ防具に見惚れる。

陽之ひろゆきさん」

 水渡さんが志井さんの名前を呼ぶ。

 しかも、真顔で。

雪之丞ゆきのじょうを悲しませるようなことをしてはいけませんよ…」

「は、はい…」

 圧倒された志井さんは、つい返事してしまったようで。

「いや、何もしてないよな?」

 ボクを見て、再確認する。

「うん。してないよ」

「そうか?」

 さっきスゴク泣いてたぞ。と言わなくていいことを言うアメに、

「泣いてない」

 キッパリ言うけど、志井さんの顔は青ざめる。

「だから、何もないですってばっ!」

 志井さんの両肩を掴んで、

「あるワケないでしょっ!」

 志井さんが欲しがる言葉を言う。

「あぁ…」

 そうだな。と言って、それでも落ち込んでる志井さんに、

「今の志井さんに興味ないですっ!」

 ボクは思ったことしか言わない。

「いつの俺なら興味あるんだよ…」

 少し呆れながら笑った志井さんが、

「ありがとう…」

 頭ナデナデしてくれた。

「仲がよろしいことで…」

「な、何するんだよっ!」

 微笑みながら帰って行く水渡さんが、アメを強引に連れて帰った。

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