「くそぉ…」

　これが、力の差なのか…？

「大好きな志井（しい）さんとやらが助かればいいですね…」

　冷めた目でボクを見る日方（ひがた）さん。

「助かりませんけど、ね」

　笑顔で、

「助ける方法は、ただひとつ」

　真顔で、

「私の元に戻ること」

「絶対、嫌だ」

　拒否する俺に、日方さんはガブッと。

「では、苦しみなさい…」

　志井さんと同じような歯型を付けた。

「ん…」

　ダメだ。

　眩暈がする。

「大好きな雪之丞（ゆきのじょう）、さようなら…」

　と言われて、そこから意識が途切れた。

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