第22話 アレス視点
【アレス視点】
カイルがどうしてるかと考えながら、憂鬱な執務を行っている。本当ならカイルと一緒に街に出たいのだが、俺は顔が知れてるから一緒に出ていくと騒がれてまずいことになる。それは避けたい。まあ、カイルが一緒に行きたいと言い出せば、どうなっても行くがな。
そんなことを考えていると、執事のセバスが「何を考えているのですか? あなたに自由はありません」みたいな目を向けてきた。
その時、玄関の方から騒がしい声が聞こえてきた。
――ん? この声はミゲルだろうか。あいつはカイルと一緒に街に出ているはずだが。
「アレス様! アレス様はおられますか?」
なんだか慌てた様子だ。
音が段々と近づいてくる。
コンコンッ
「ミゲルです! 至急お伝えしたことが!!!」
「入れっ!」
「失礼します!」
「どうした? カイルといるはずじゃなかったのか!?」
「それが…… 商業地区を回っていたところ、カイル様が路地裏で子供が追い詰められているのを助けたいと仰られて、私にはアレス様に報告するよう告げた後、路地裏の方に走って行かれました!」
「なっ!!! なぜ止めなかった!? お前はカイルの従者だろう!」
「カイル様は一人でも対処ができるから、心配はいらないと……」
「セバス、今日の執務は止めだ」
「ご当主様! なりません! むやみに街に行けば騒がれてしまいます!」
「そんなものを気にしていられるような状況か!? カイルはまだ小さい。実戦経験も皆無だ。アレクがいたとしても、万が一ということがあるかもしれない」
「…… 分かりました。お好きになさってください。その代わり、この分は別で補ってもらいますからね」
「おい、ミゲル! 俺を近くまで案内しろ」
「はっ!」
正直俺は気が気じゃなかった。カイルは同年代のやつよか格段に強い。うちの兵士と戦っても何人かには勝つだろう。しかし、ごろつき相手だと状況は違う。人も殺すような連中だ。俺も何人もそういう輩を見てきたが、カイルはそいつらと相対するには早すぎる。
今は、一刻も早くカイルのもとへ向かうことを優先しよう。
◆
商業地区についた。ミゲルの足に合わせていれば、間に合わなくなるかもしれないと思い、大体の場所だけ聞いてミゲルを置いていく決断をした。
そして、カイルの居る場所にたどり着いて目に入っていたのは、カイルが倒れる瞬間だった。近くにはアレクがいて、辺りには煙が立ち込めていた。
近くにはごろつきらしき者が2人横たわっている。カイルが倒したのだろうか。詳しい事はこのゴロツキ共から絞ればいい。
「アレクっ!! 現状はっ!?」
「アレス様! カイル様は無事です。初めての戦闘で心身ともに疲れたのかもしれません。傷一つ付けられていません。一人には逃げられましたが、2人はカイル様によって倒されました。ここでカイル様を一人にするのは危険かと思い、現場に留まっておりました」
「そうか...... カイルは疲れてるだけだったか。アレクはこのままごろつきの様子を見ていてくれ。俺はカイルを家まで運ぶ」
「分かりました......」
アレクにごろつきの見張りを頼み、俺はカイルを抱え家へと戻ることにした。
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